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驚異の9000回転。レクサスLFAのV10エンジンの設計とは。

  • 2019/12/22
  • Motor Fan illustrated編集部
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1LR-GUE。レクサスLFAのタコメーターは9000rpmからレッドゾーンに入る。しかし、エンジンの燃料カットは9500rpmで行なわれる。時速250km近辺でのフル制動(もちろんサーキットで)~シフトダウンというドライバーの意思をコンピューターに拒否させないためだという。また、LFAフル加速時のエンジン音をニュルブルクリンクで聞くと「これが9000rpmの周波数か」と感じる。ほかのクルマとは明らかに違うのだ。その音もねらった設計である。

過給エンジンには真似のできない高回転域までのスムーズな伸び、スロットル・レスポンス、官能的な音を与えたい──。東海大学工学部の岡本高光教授は元トヨタ自動車のエンジニアであり、レクサスLFA用のエンジンを開発した。4.8ℓV10のNA設計という一世一代の仕事で、教授は何をめざしたのだろうか。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo) FIGURE:牧野茂雄/ヤマハ発動機/LEXUS INTERNATIONAL

* 本記事は2013年5月に執筆したものです。現在とは異なる場合があります。

「あれは2003年のことでした」

 岡本教授は話し始めた。

「スポーツカー用のV10エンジンを設計する機会に恵まれたのですが、私が描いた構想に対して役員から『いいエンジンだが、これは最後まで行けるとは思えない』と言われました。最大トルクの90%を発生する回転域が、3900rpmから9000rpmまででしたから」

 おそらく、いろいろな幸運が重なったのだろう。2003年という時期が味方したということもあるだろう。5100rpmの幅にわたって432Nmのトルクを発揮するというのだから、前代未聞である。「高回転域ではこの上なく気持ちいい」というNAエンジンは少なくない。「アイドリング回転数のすぐ上から実用トルクが立ち上がる」という過給エンジンも出現した。しかし、2003年当時の常識では、いまのような過給ダウンサイジングエンジンは想定外だったはずだ。その時代に、エンジン運転領域の半分にわたって最大トルクの90%を確保するという構想を岡本教授は描いた。

岡本高光(Prof. Takamitsu OKAMOTO)東海大学 工学部 動力機械工学科 教授(取材当時)
「過給ダウンサイジングエンジンはたしかに素晴らしいと思います。しかし、高回転域ではパワーが出ません。レクサスLFAの商品企画が立ち上がったとき、私が思ったことは、最高速度200マイルというのは目標ではなく出発点に過ぎないということでした。スポーツカーとしての官能性能が備わっていなければいけない。それは高回転域でのパワーであり、ドライバーのスロットルコントロールに対するレスポンスであり、エンジン音である。とくにレスポンスと音は、過給エンジンとは決定的に違います」

 最終的にLFAは、3速からの加速でポルシェ・カレラGT並みになった。その武器は「高回転ローギヤード」である。

「考えたのはトルクではなく馬力です。高回転ローギヤードなら、燃費面では裏目ですがエンジン回転を上げていく過程がすばらしい。回転を上げると音も良くなります。高回転域に達するまでに時間がかかったのでは元も子もない。ただし、市販車ですから市街地で乗用される回転域でも一定のトルクが必要です。それと機関としての効率です。燃料リッチ(濃い)にして馬力を得るのではなく、ストイキ(理論空燃比)で走らせたい。市販車の場合、三元触媒の耐熱温度限界がありますから、高回転域でもストイキにしたい。モード燃費の領域を多少犠牲にしても高速高回転ではリッチにしない。LFAは時速240kmまでストイキで、λ=1で走れます」

コスワースDFXのポート設計。コスワースDFVは中心点火+狭角設計の4バルブ構造、お手本のようなペントルーフ型燃焼室、スロート部を活用した吸気タンブル流などを備え、無敵のユニットとして名を馳せた。DFXは、DFVのショートストローク+ターボ過給仕様。

 そう。排ガス試験モード域は加速一定だからローギヤードでパワーのあるエンジンだとほとんどスロットルを開けない。ポンピングロスばかりが増えてしまう。ここは目をつむっても、身上である高速高回転域できれいなストイキ燃焼にしたいと、当時の岡本氏は考えた。
「高回転エンジンには、広い回転域で吸排気効率を維持し、吸い込んだ空気と燃料を短時間で素早く燃焼させるという素性が求められます」

 ところが、短時間に燃焼を終わらせることはなかなか難しい。1気筒当たりの吸気量は筒内容積で決まっているが、きっちり空気を吸い込み、燃料と混ぜてしっかり燃やすという作業が高回転域ではだんだん難しくなる。

「古い話ですが、1967年に登場したコスワースFVAという直4エンジンは、バルブ挟み角を広げて空気の吸入抵抗を減らすという発想でした。そのため、燃焼室は深く、ピストン冠面が山のように盛り上がっていました。当時はこれがレーシングエンジンだったのです。ただし、スキッシュエリアを持っていたのは立派です。シリンダー壁面付近にある混合気を、最後にピストン上死点でギュッと押し出してプラグ付近に集める機能です。しかし、このエンジンは最高回転を上げてもパワーがなかなか上昇しなかったのです。バルブ挟み角を小さくしてコンパクトな燃焼室にするという考え方は、このあとに登場しました」

 岡本教授は、このFVAと、FVAを2基合体させてV8に仕立てたDFVが「高回転エンジンのバイブル」だと語った。

「混合気がダラッと燃えたのではパワーになりません。パッと火が着き、火炎が素早く伝播して短時間に終わる燃焼なら急峻に圧力が立ち上がる。こうするためには吸気に縦方向の乱流、タンブルが必要です。DFVの時代からタンブルと、スキッシュエリアと、コンパクトな燃焼室の3点セットです。21世紀に私が設計した1LR型V10も同じです」

 モータースポーツ用のエンジンを手がけて来た岡本教授は、レーシングエンジンの歴史もよくご存知だ。いろいろなエンジン名がつぎつぎと出て来る。

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