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パナソニック:ペロブスカイト太陽電池大面積モジュールで世界最高変換効率16.09%を達成

  • 2020/01/20
  • Motor Fan illustrated編集部
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世界最大面積と世界最高変換効率を達成したペロブスカイト太陽電池モジュール

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、太陽光発電の導入促進を目的に「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発」に取り組んでおり、今般、同事業でパナソニックは、ガラスを基板とする軽量化技術や、インクジェットを用いた大面積塗布法を開発し、これらの技術を用いて作製したペロブスカイト太陽電池モジュール(開口面積802平方センチメートル:縦30cm × 横30cm × 厚さ2mm)で世界最高のエネルギー変換効率16.09%を達成した。

 世界で最も普及している結晶シリコン太陽電池は、日本国内では、メガソーラー、住宅、工場、公共施設などで一定の市場を確保している。これらの用途でさらなる普及拡大と新規市場獲得を図るには、太陽電池モジュールの軽量化、大面積化技術が課題だ。
 ペロブスカイト太陽電池(※1)は、構造上、発電層を含む厚みが結晶シリコン太陽電池の1/100程度と非常に薄いため、結晶シリコン太陽電池より軽量化できる。これにより、ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)(※2)への普及につながる建物壁面への設置や、透明電極を用いて窓への適用など、多様な設置形態が可能になる。さらに、太陽電池モジュールの基板へ直接、層材料を塗布することができるため、従来の作製技術に比べて、より安価に形成できることから、次世代太陽電池として注目されている。一方、小面積セルのエネルギー変換効率は25.2%(※3)と結晶シリコンに匹敵する高効率が達成されているものの、従来技術では大面積を均一に製膜することが困難であったため、変換効率が大きく低下する傾向があった。

 このような背景のもと、NEDOは、太陽光発電の導入促進を目的に「高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発(※4)」に取り組んでおり、今般、同事業でパナソニックは、ガラスを基板とする軽量化技術や、保有するインクジェットを用いた塗布技術をベースにペロブスカイト太陽電池モジュールの基板への塗布用インクの作製・調製技術などを含めた大面積塗布法を開発し、これらの技術を用いて作製したペロブスカイト太陽電池モジュール(開口面積802cm2:縦30cm × 横30cm × 厚さ2mm)で世界最高のエネルギー変換効率16.09%(※5)を達成した。さらに本モジュールの製造工程にインクジェットを用いた大面積塗布を採用したことにより、製造コストを低減できるほか、本モジュールの大面積、軽量、高変換効率の特性を利用することで、ビル壁面など、従来は設置が困難だった場所での高効率な太陽光発電が可能となる。

 今後、パナソニックは、ペロブスカイト層材料改善により結晶シリコン太陽電池並みの高効率達成を推進し、新規市場での実用化に向けた技術確立を目指す。

今回の成果

 パナソニックは、大面積に精細で均一な層材料の塗布が可能なインクジェット法に着目し、ガラス基板上へのペロブスカイト膜を含む各層塗布への応用展開を図り、大面積モジュールでの高変換効率化を実現した。技術開発のポイントは以下のとおり。

(1)インクジェット塗布に適合した塗布液組成改善
 ペロブスカイト結晶を構成する原子団のうち、モジュール作製の加熱工程において熱安定性に課題のある(加熱により結晶から脱離することにより、結晶構造の一部が崩壊する)メチルアミンの一部を、分子あるいは原子が適度に大きく、加熱脱離抑制効果のあるホルムアミジニウム、セシウム、ルビジウムに置き換えすることで、結晶の安定化を図り、高変換効率化に寄与することを見出した。

ペロブスカイト結晶

(2)塗布液濃度の調製、塗布量・速度などの制御
 インクジェット塗布法を用いた薄膜作製工程では、塗布パターンを自由に変更できる反面、材料をドット状に塗布・製膜後、塗布面内で均一に結晶化させる必要がある。それら要求用件を満たすため、塗布液濃度を一定範囲で調製した上、塗布工程における塗布量・速度を精密に制御することにより、大面積モジュールの高変換効率化を実現した。

インクジェット塗布法の模式図

 これらの技術を各塗布プロセスで最適化することで、ペロブスカイト膜の結晶成長促進、モジュール面内膜厚と結晶膜質均質化の向上に成功した。その結果、30cm角サイズで変換効率16.09%を達成し、実用化に一歩近づいた。

 今後、NEDOとパナソニックは、大面積ペロブスカイト太陽電池モジュールのさらなる低コスト化、軽量化により、これまで設置、適用されていなかった新市場の創出を図る。ペロブスカイト層の材料開発により、結晶シリコン太陽電池モジュールに匹敵する高効率化を目指し、プロジェクトの最終目標であるモジュール生産コスト15円/Wを推進する。

 なお、本成果については、2020年1月20日から22日まで、つくば国際会議場で開催されるIPEROP20(Asia-Pacific International Conference on Perovskite, Organic Photovoltaics and Optoelectronics)でパナソニックより発表される。

※1 ペロブスカイト太陽電池
光吸収層が、ペロブスカイト結晶で構成されている太陽電池。
※2 ネット・ゼロ・エネルギービル(ZEB)
ZEB(Net Zero Energy Building)は、非住宅系の建物が対象で、建物全体でのエネルギー負荷制御と高効率システムの設置などにより、室内環境の質を維持しつつ大幅な省エネルギー化を実現した上で再生可能エネルギーを導入し、年間の1次エネルギー消費量の収支をゼロとすることを目指した建築物のこと。
※3 エネルギー変換効率は25.2%
KRICT(韓国化学技術研究所)とMIT(米国 マサチューセッツ工科大学)により共同発表されているペロブスカイト太陽電池小面積セルの世界最高効率。 Best Research-Cell Efficiency(Rev.11-05-2019)-NREL
※4 高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発
【事業名】高性能・高信頼性太陽光発電の発電コスト低減技術開発/革新的新構造太陽電池の研究開発/革新的低製造コスト太陽電池の研究開発
【事業期間】2015年度~2019年度
参考:NEDOニュースリリース 2018年6月18日「面積世界最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池モジュールを開発」https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_100976.html
※5 エネルギー変換効率16.09%
産業技術総合研究所のMPPT法(Maximum Power Point Tracking法:実使用時の変換効率により近い測定法)による測定値。

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