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補助金なしで電気自動車(BEV)は売れるのか? 欧州で、中国では売れているのか【牧野茂雄の自動業界車鳥瞰図】

  • 2020/03/14
  • Motor Fan illustrated編集部
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筆者が訪れたアイントホーフェンでのスナップ。自動車メーカーDAFのあるこの街で、中心街からやや離れた橋の上から運河と街並みを撮った。この橋は水平を保ったまま、整備工場でクルマをリフトアップするようにまっすぐ上に10mほどせり上がって船を通す。ちょうど朝のラッシュ時間だったが、道路渋滞はなく自転車もそれほど多くない。運河と路面電車と自転車通行帯は、もちろん都市計画の巧さもあるが、人口密度が日本の都市ほど高くないから成立するのだろうと感じた。

ACEA(欧州自動車工業会)によると、昨年でのBEV(バッテリー電気自動車)販売台数は約36.5万台、前年比81%増だった。乗用車全体のなかでの比率は2.3%。いっぽう、昨年7月に補助金を大幅削減した中国でのBEV販売台数は97.2万台、同1.2%減だった。乗用車全体に占める比率は3.8%。BEV普及制度を作り恩典と罰則を見受けた国でもBEVは売りにくい。

ジャーナリスト牧野茂雄がレポートする。
TEXT◎牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

 2019年の12月20日、オランダの環境保護団体が政府を訴えていた裁判について、オランダ最高裁が下した判決は驚くべきものだった。「気候変動は市民の生命や幸福を脅かす。科学者や国際社会の間には、先進国のCO2(二酸化炭素)排出は少なくとも2020年末までに25~40%削減する必要があるという意見の一致があり、オランダ政府が掲げる20%削減の目標は市民保護の点で充分な対応とは言えない」と、政府に敗訴を言い渡したのである。

 裁判所の判断は時代とともに変わるものだ。判決には社会通念も深く関わる。オランダでは司法が人為的CO2排出を気候変動の原因として認めた。もはやCO2問題は「疑わしきは罰せず」の範疇ではない、ということだ。EU(欧州連合)加盟国での判例として、他国での同様の訴訟にも大きな影響を与えるだろう。

 筆者は人為的なCO2排出が地球温暖化の原因であるという説には半分疑問を抱いている。だから新聞記者として環境庁記者クラブ詰めだった1988年に初めてこの問題に接して以降、ずっと取材と資料集めを続けている。CO2糾弾派に取材し、見解を伺い、同時にこれに異を唱える方々にも会ってきた。そのなかで印象的だった取材はオランダだった。

アイントホーフェンの運河にかかる橋(ページトップと同じ橋)。このようにやぐらが組まれており、道路部分は水平のまま上に持ち上げられ、その下を船が通る。

 欧州での仕事をいくつか作り、オランダに寄る用事を見つけ、アムステルダムからクルマでハーグ、デルフト、ロッテルダムをまわり、最後はフィリップス本社のあるアイントホーフェンまで出かけた。その前年には某エネルギー業界が取材のスポンサーになってくれたが、執筆の制約が嫌だったのでこの年は自腹で訪れ、ひとり資料集めの旅をした。政府が出資しながらも完全中立という立場を貫く研究機関、TNOも訪ねた。ここでたくさんの資料をもらい、ほかの研究機関や政府機関も紹介してもらった。

 このときの資料に、いまでは有名なIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が発行した世界の年平均気温推移というグラフや英国気象協会発表のデータなどがある。十数年前の資料であり、研究速度の速い現在では資料的価値など薄いはずなのだが、ネットや書物で書かれている「IPCCは過去の気象データを加工している」ということの真偽を探るには格好だった。

 たしかに、近年のIPCC報告に掲載されているグラフと筆者がオランダで入手した十数年前の英国気象協会のグラフは同じものではなかった。やましいことがないのならデータの加工などしなければいい。「裏になにかあるな」と思われても仕方ない。データ加工を知って筆者は、さらに人為的CO2排出が地球温暖化の原因であるという説への疑問が大きくなり、手当たり次第に出版物や論文を読んだ。

 面白い点は、気候変動というテーマは科学であり、古気候学や天文学まで関係してくるのだが、CO2主犯説を唱える方々と、それに異を唱える方々がそれぞれ書いていらっしゃることは、相手の誤りを指摘し自分に都合の悪いことは深く明記しないという点で共通している。双方の陣営に「あからさまに個人名を挙げる批判」もある。名指しされている方々について調べると、また新しい知見を得られる。

 しかし、現在の温暖化を非常にニュートラルに見ている方々もいる。気温が上昇していることは確かだ。論点はその原因であり、ここにさまざまな観測データと研究成果と政治的思惑が絡む。それを超えた極めて中立的な立場の方が「地軸の傾きや惑星運動、太陽の黒点運動まで勘案して、いま現在の気象が果たして異常なのか、長いサイクルのなかで繰り返されてきた変動の一部分なのかを解明するのはほとんど不可能だ」と仰れば説得力があり、筆者も賛同する。

 オランダ最高裁の判決も半分は納得できる。彼の国をクルマで走ってみれば、堤防と運河と橋がいかに多いかを実感する。ネーデルラント=低い土地なのだ。ちなみに筆者の生まれは東京都墨田区であり、江東ゼロメートル地帯のすぐ隣だった。川の水位は道路よりつねに高く、台風で床上浸水したこともあった。「大地震がきたら焼け野原になる」とも言われ、隅田川添いに「都心への火事の延焼を食い止める防火壁」という目的の「防災団地」なる壁のような建築物が次々と建つのを見ながら育った。「ワシらは丸焼けでも、川の向こうが助かればいいんだよ」

 近所のおっさんがそう言っていた。当時の墨田区民の気持ちをいまのオランダに置き換えれば「私たちの国土が水没してもフランスとドイツが残ればいいんだね」になる。「氷期と間氷期の間の正常な気候変動かもしれない」と言われても納得できない。CO2がクロに近いなら退治してくれ、と。おそらくこのまま人為的CO2悪玉論が地球を支配するのだろう。

運河の支流は市街地へと流れる。水面と生活圏の高低差はこれくらいしかない。観光客にとっては風光明媚だが、現地のひとびとの生活はつねに水没の危機と隣り合わせである。

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