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ダブルウィッシュボーンの「ウィッシュボーン」とは何か——安藤眞の『テクノロジーのすべて』第56弾

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「なんでこの名称?」という部品は少なくない。名前に由来するものも多く存在する。そのなかでも馴染みの深い「ダブルウィッシュボーン」。願い骨とは何のことだろうか。
TEXT;安藤 眞(ANDO Makoto)

 クルマのメカニズムの名称は、人名に由来するものが少なくない。オットーサイクルやマクファーソン・ストラット、アッカーマンジャントやパナールロッドなど、例を挙げれば切りがないほどある。
 そうした中で残念なのは、日本人の名前の付いた技術がほとんど見当たらないことだ。かつて「ニシボリック・サスペンション」というのがあったが、基本はパラレルリンク式のストラットであり、固有名詞として定着することはなかった。

 日本人の名前の付いた技術が少ない理由については、国民性に由来するのではないかという考えかたが有力だ。最初の発想は個人でも、たいていの場合、完成にこぎ着けるまでには組織の力を必要とするため、手柄を独り占めにするのは忍びないという謙虚さと、組織の和を重んじる国民性が相まって、個人名を付けることを避けるのではないかという考えかただ(嫉妬で和が乱れるのを嫌うという説もある)。

鳥の叉骨(さこつ:wishbone)とその位置。(ILLUST:Wikipedia)

 一方で、人名とは無関係だが、興味深い由来を持つ名称もある。代表例は、「ダブルウィッシュボーン式サスペンション」だ。これは構造を表したもので、ウィッシュボーン形状のリンクが上下に2本あるという、非常に簡潔なネーミングなのだが、疑問になるのは「ウィッシュボーンて何?」ということだ。

 英語で書けば、Wish Bone。和訳すれば「願い骨」。多くの日本人にとっては「なんじゃらほい?」ではないかと思う(語彙が昭和だ)。

 実はこれ、鶏の胸骨に由来する。鳥の丸焼きを食べた後、λ型をした胸骨を外し、ふたりで両端を持って引っ張り合う。胸骨の頂点は丈夫だから、真ん中では割れず、どちらかの破片に頂点が付いてくる。その頂点を取った者の願いが叶う、という言い伝えから、鳥の胸骨を「ウィッシュボーン」と呼ぶようになったらしい。

ダブルウィッシュボーン式フロントサスペンションの構造。(ILLUST:熊谷敏直)

 最初にダブルウィッシュボーンが適用されたのは、フロントサスペンションだった。フロントサスは操舵が必要であるため、ホイール側にキングピン軸を形成する必要がある。一方で、ボディ側では前後入力を支持しなければならないから、ふたつの結節点が必要になるり、支持構造は必然的に三角形になる。さらに、転舵した際のタイヤの “逃げ” を付けなければならないから、上下アームの形状は、ウィッシュボーンにそっくりなλ型になった、というわけだ。

 リヤに採用された例も無いわけではないが、後輪は操舵方向に動いては困るため、ロワまたは上下アームは台形をしており、ウィッシュボーンの形はしていなかった。だからもし、リヤサスに先に適用されていたら、「ダブルウィッシュボーン」という名前は生まれなかったはずなのだが、操舵の必要ないリヤサスは、長らくリジッドアクスル式で間に合っていたため、そういう形式が先に生まれる可能性は、ほぼ0だったのではないか。

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