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内燃機関超基礎講座 | タイミングベルトは果たして切れないのか。採用が進む理由とは。

  • 2020/07/19
  • Motor Fan illustrated編集部
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エンジンの性格を決めるのはカムプロファイル。それを正確に作動させるベルトとチェーンのカムトレーン2種は、 常に攻防を繰り返してきた。ここ最近はチェーンに軍配が上がっていたが、近年ベルト勢が盛り返しを見せている。
PHOTO:水川尚由(MIZUKAWA Masayoshi)

 ベルトか、チェーンか。カムトレーンの駆動方式でしばしば議論となる両者には、それぞれ
の言い分がある。チェーン側の主張は、なんと言っても切れないこと(もちろん絶対ではない
が)。そこに絶大な信頼を寄せる陣営は自社のエンジンにタイミングチェーンを採用する。いっぽうのタイミングベルトは、軽く、静かで、コストも安い。さらに長期間にわたって高精度を保てる。両者にはそれぞれに長所があるのだが、見比べてみるとタイミングベルトには多くの特長がある。

 タイミングチェーンに対して静粛かつ低抵抗軽量なのがベルト式の利点。チェーンのように初期伸びへの対応も不要、かつ歯部のバックラッシュが小さいことから、高精度であることもメリットである。潤滑を要するチェーン式に対して乾式環境で使えば給脂の手間から開放され、チェーンでは不可避の摩耗起因のオイル劣化、飛沫による汚れの問題もない。

 そもそもタイミングベルトが登場したのはOHV全盛期で、SOHCが現れ始めた時期。そこからDOHCが登場して高回転高出力化、熱効率の追求による燃焼室のコンパクト化などが次々と課題になると、カムプーリーの小径化が強く求められるようになった。ご存じ、カムシャフトはメインシャフトの半分の回転数で回るから、径は単純に倍となる。メインプーリーとカムプーリーを小さくできればエンジンはさらに小型化できる。タイミングベルトはピッチ(歯間寸法)9.525mmがスタンダードだったが、8.000mmのタイプが登場。これにより最少曲げ寸法を小さくでき、カムプーリーの小径化を実現した。

 順風満帆かと思われたベルト勢に暗雲がたれ込め始めたのは80年代の半ば。高回転化高出力化に加えて長寿命化までが求められると、当時のベルトの性能では限界が見え始める。たとえば縦置きV6エンジンであれば搭載要件にも余裕があり、拡幅によるキャパシティ増大で性能を担保できたが、ジアコーサ式パワートレーンではその限りではない。エンジンルームが過密化し、条件がどんどん厳しくなるなかで、追い打ちとしてライバルのタイミングチェーンが新たな手を打ってくる。サイレントチェーンの登場である。静かということは磨耗しにくいことにもつながり、さらに小型化も実現してきた同チェーンによって、今度はベルトからチェーンへのシフトが進む。90年代のことであった。

予成形式ベルトの例。歯形を形成する帆布をあらかじめ型に追従させておくことで、無理に伸ばすことによる疎密の不均一、強度の不正確さを回避することができる。さらに歯面ゴムを帆布の上に敷き、これを背面ゴムとは異なる性質にすることで、歯側ゴムの強度要件と背側ゴムの追従要件を両立させ、高機能なベルトとしている。

 しかし、それに対して黙っているベルト勢ではない。熱に厳しいなら材料の開発を、強度に劣るなら構造の工夫を凝らすことでタイミングチェーンへのキャッチアップを図る。事例のひとつが、予成形と称する製法だ。タイミングベルトは帆布と心線とゴムで成り立っていて、名称のとおりにタイミングを決める歯の形状と硬さが重要である。いっぽうで背側のゴムは緊張と弛緩を繰り返すだけにしなやかさと柔らかさが求められ、歯側と背側には相反する性質が必要である。予成形式ベルトはそれらを満足させる手段として開発された。

油中式ベルトの例。従来の乾式に対して、メインプーリー側がエンジンオイル中にあり、ベルトも油中に浸かる湿式が現れ始めた。乾式ベルトではシリンダーヘッド側とオイルパン側が完全に分断されていることから、とくにヘッド側のオイルがパンに落ちにくく、オイル溜めや油路を積極的に設ける必要がある。勢い、ブロック設計も大きくなりがちである。油中ベルトによって、チェーン式の設計を大きく変えることなくカムトレーンの代替を期待できる。膨潤への対策は、オイルを吸っても変質しないというポリマーの改良による。

 将来への課題は、さらなる高強度・長寿命化。材料を高機能化できれば耐熱性にも期待が集まる。テンショナーを含めた低抵抗化も、低燃費値実現に大きく寄与する。さらに油中に浸かっても膨潤しないベルトの登場は、タイミングベルト勢にとって大きな福音だ。CO2排出量95g規制を間近に控える欧州では、ベルト置き換えの動きも見え始めた。今後の動向に注目である。

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