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内燃機関超基礎講座 | 現代エンジンに必須のEGRクーラー。小型化の鍵は「縦渦」

  • 2020/09/28
  • Motor Fan illustrated編集部
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燃費改善や排ガス浄化の技術として注目を浴びるEGR。そのキーデバイスがEGRクーラーだ。カルソニックカンセイ(現・マレリ)と東京ラヂエーター製造が開発したEGRクーラーは、世界最小クラス。ポイントは、縦渦だ。

EGR(Exhaust Gas Recirculation=排出ガス再循環)とは、エンジンの排出ガスの一部を燃焼室に戻す技術だ。EGRを用いて燃焼室内の新気の割合を下げることで、燃焼室内の温度を下げ、NOxの発生を抑えることができる。現代では、その効果に加えてポンピングロスを軽減し、燃費を改善するためのデバイスとして重要視されている。

水冷式EGRクーラー。左右にあるパイプが排出ガスの入口と出口。入口では約500°Cにも達する排ガス温度は、出口では90°C程度まで冷やされ、エンジン燃焼室内に還流される。上に備わるパイプは冷却水の入口と出口である。高温のガスが相手ということで、クーラーコアの素材はほぼステンレスに限られているが、熱伝導率が低いという熱交換器として不利な要素がある。そこで注目したのが、ガスの流し方だった。

なかでも最近は、クールドEGRが注目されている。クールドと言うだけに、還流させる排出ガスを冷却するEGRクーラーがポイントだ。高温のガス(クーラー入口で約500~900°C)を水冷式クーラーコアに通し、約120~130°Cまで温度を下げるのがEGRクーラーの役目である。当然だがガスの入口から出口までの距離を長くとり、コア内部の展開を広くすれば冷却性能は上がる。しかし、場所の取り合いが厳しいエンジンルームではサイズの制約は厳しい。そこでカルソニックカンセイと東京ラヂエーターの開発チームが注目したのが、排出ガスの流し方である。

ガスの流れにはカルマン渦(流れの中に障害物を置いたとき、あるいは流体中で固体を動かした時にその後方に交互にできる渦の列)に代表される横渦と翼端渦(翼の上下面の圧力差でその背後に発生する気流の渦)などの縦渦がある。横渦は流れの上流側への戻りがあるため抵抗になってしまう。縦渦はスクリューのような流れなので、渦の減衰が小さい。そこでカルソニックカンセイは縦渦に注目したが、縦渦の場合は発生させるのが難しいという問題点があった。
カルソニックカンセイは、縦渦発生のメカニズムを世界で初めて発見した。横渦は邪魔板を使えば比較的容易に発生させられる。今回は台形のVG-フィン(Vortex Generator FIN)を使い、2つの流れの干渉で縦渦を発生させることに成功した。台形の上辺を乗り越えることで横渦を生成し、それを斜辺で縦渦に変換するというアイデアだ。

ガスが流れる際の抵抗を最小化する渦発生のメカニズムを解析した結果、理想的な「縦渦」を発生させるフィンの形状を新たに台形にしたVGフィン(Vortex Generator FIN)を開発した。粘性を持つガスが壁面近くを流れると発生し抵抗となってしまう境界層について、VGフィンで縦渦を発生させ、境界層を撹拌・破壊することで効率を上げるという考えだ。これにより、同一性能では21~29%もの軽量化と12%(長手方向)の小型化が実現できた。

燃費向上で需要が高まることが予想されるEGRクーラーだが、性能アップ&小型化でエンジンルームに余裕のない小型車への搭載も広がりそうだ。

縦渦を発生させるフィン自体は過去にも研究されてきた。四角や三角のフィンを八の字形状に配置することで縦渦を発生させる考えだったが、今回カルソニックカンセイが開発した台形は今まで研究されてこなかった。台形フィンを使うと三角フィンよりも強い縦渦が得られるというメリットがある。
熱交換を効率的に行なう縦渦を活用することで、同一ガス抵抗時の比較で12~36%の性能向上を実現した。また同一性能時の比較では21~29%の軽量化を実現している。サイズでは長手方向で12%の小型化ができた。衝突安全性の確保などで場所の取り合いになっているエンジンルームで、EGRクーラーが小型軽量化できるメリットは大きい。小型車への適用も広がるはずだ。

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