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内燃機関超基礎講座 | ディーゼルの基本⑤:後処理装置の種類と仕組み[DPF/LNT/SCR/EGR]

  • 2020/10/10
  • Motor Fan illustrated編集部
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(PHOTO:BOSCH)

燃焼させたあとにあの手この手で排ガス成分をコントロールしなければならないのがディーゼルエンジンの面倒なところ。各種の方策について考えてみた。
TEXT:松田勇治(MATSUDA Yuji)

日本国内でディーゼルエンジン(DE)乗用車がフェードアウトしていった理由として、大きかった事柄は何か。まず、1989年の税制改正で、自動車税がガソリン車と同体系になったこと。1994年の軽油引取税増税、1996年の特石法廃止などにより、ガソリンと軽油の価格差が小さくなったこと。そしてトドメが、1999年8月から東京都が始めた「ディーゼル車NO作戦」や、2001年のNOx・PM法などの規制強化だ。特に、当時の東京都知事がペットボトルに入れた煤を振りかざしたパフォーマンスが世論に与えた悪印象は大きかった。しかし実際、当時は悪質な不正軽油が横行していた影響もあり、「DE車は黒煙を撒き散らす、環境破壊・健康被害発生車」といった印象が定着してしまった。

燃焼室内で燃料液滴に部分的な着火が始まり、ガス温度と圧力がさらに高まっていく段階に至っても、ノズルからはまだ燃料が噴射されている。この状態の液滴は空気と混合しにくく、局部的に非常にリッチな(酸素が不足した)状態で燃焼し、液滴の中心部が未燃焼な、いわば「蒸し焼き」状態となって煤が発生する。これがPM(Particulate Matter:粒子状物質)の正体だ。

燃焼温度が充分に高ければ煤=PMは燃えてしまうが、リッチな状態では酸素不足で燃焼温度がそこまで高くならない。かといって当量比(シリンダー内の空気量に対して、理論空燃比の何倍の燃料が存在するかを示す値)を1もしくはそれ以下にすると、燃焼温度が高まってNOxが生成されてしまう。すなわちDEにおいては、着火前に空気と燃料の混合が不十分なら当量比2以上の領域が増えてPMが発生し、十分に混合すると当量比1近傍の領域が増えてNOxが発生するという、トレードオフの関係にある。

PM対策:DPF(ディーゼル・パーティキュレート・フィルタ)

(ILLUST:AUDI)

上のイラストは代表的なDPFユニットの構成と、その機能を表わしている。この例は、セラミック担体による「ウォールフロー型」だ。モノリス型触媒担体の穴を交互に片側ずつ閉じ、さらに反対側の端部では、開/閉の関係を逆転させておく。一端だけを閉じた角管を、向きが反対になる同士で順に並べていったような構造だ。こうすることで生じる圧力差を利用し、隣の穴同士のポーラス上の壁の微細な連通路に排気を流す。その細い連通路部分で粒子状の煤を捕集する。

PMの捕集効率は高いが、連通路が詰まる前に付着したPMを燃やして除去する再生を行う。一般的には排気温度を高めて再生を行うが、加減を誤ると、セラミックといえども溶損を起こしかねない。それを防ぐためには、再生のタイミング、温度制御など、きめ細かな条件設定に沿って実行する必要がある。電子制御技術の進歩にともなって実用化された技術のひとつである。

(ILLUST:RENAULT)

DPFはその名の通り、物理的な「濾過」を行う装置なので、PMを捕集し続けていくうちに、いつか「目詰まり」を起こしてしまう。目詰まりが部分的なうちは圧力差によって他の部分を流れて行くが、全体が完全に目詰まりしてしまうと、排気流路そのものをふさいでしまう。そのような事態を防ぐため、DPFはなんらかの手段で捕集したPMを除去しなければならない。これを再生(Regeneration)と呼ぶ。

大別して連続再生、強制再生があり、前者は酸化方式、酸化触媒方式などによって、フィルター部のPMを比較的低温で連続的に酸化除去する。後者はなんらかの手段でフィルター部の温度を高め、PMを燃焼させることで再生を行う必要がある。DEは排気温度が低く、連続再生で用いる化学反応のために必要な温度を保つことが困難なことから、現状のDEの多くは強制再生を採用している。具体的には、燃料をリッチにして排気温度を高めることなどで実現している。

NOx対策①:LNT(リーン・NOx・トラップ)

ホンダ「ディーゼルエンジン用NOx触媒」の作動概念図。担体上に第1層と第2層が積層され、第1層が最上層となる。第2層は、酸化ジルコニウム系材料、アルミナ系材料、ゼオライト系材料、シリカ系材料などが使われる見込みだ。固体酸触媒である第1層に移動したNH3とNOXを選択的接触還元法によって窒素と水に変換後、大気中へ放出する。

NOxを選択的に引き寄せ、さらに溜めこんでおき、特定の条件になったら化学反応によって還元させて浄化するシステムも実用化されている。下はホンダが発表している「DE用NOx触媒」の概念図だ。

通常運転のリーン燃焼状態で生成されたNOxは、触媒の第1層を通過して第2層に酸化・吸着される。所定の条件になったら燃料の噴射量を増量し、リッチ燃焼状態にしてH2(水素)とCO(一酸化炭素)を生成。これを第2層に吸着されているNOxと反応させ、還元反応によってNH3(アンモニア)を生成する。このNH3は第1層に移動して吸着され、NOxと反応してN2(窒素)とH2O(水)に変換される。触媒の第1層は、鉄元素やセリウム元素を含むβゼオライト、第2層は貴金属と酸化セリウム系材料を用いているようだ。

日産エクストレイル20GTが搭載するM9R型DEが採用した「リーンNOxトラップ触媒」も、ほぼ同様の仕組みによってNOxを還元している。

NOx対策②:尿素SCR(セレクティブ・キャタリスティック・リダクション)

(ILLUST:BOSCH)

NOx抑制のための選択的還元反応プロセスは、LNTのようにアンモニアを用いた選択的還元法によって窒素に変換する。もともと火力発電所などのNOx処理に使われて来た仕組みで、運用実績は高い。クルマの場合は、万一の事態を考慮してアンモニアそのものではなく、化粧品などにも用いられている安全性の高い「尿素」を水に混ぜた「尿素水」を使ってアンモニアを生成、そこにNOxを反応させる仕組みが実用化されている。

酸化触媒の後で尿素水を噴射し、分散板によって尿素水と排ガスをよく接触させながらアンモニアに変換する。NOxと反応しきれずに残ってしまったアンモニアの処理が課題。そのため、SCRの後ろに酸化触媒を備えるといった対策法がある。また、分散板を用いた方式では、尿素水をアンモニアに変換するための時間が十分に稼げないとする考えから、代わりに酸化チタン系の「加水分解触媒」を置くことによって、より積極的な変換を行なうSCRシステムも発表されている。

尿素SCRシステムの概要。当然、走行距離に応じて尿素水の補充が必要となるが、乗用車向けシステムの場合、オイル交換と同等のサイクルとすることで、ユーザー自ら補充する手間と、尿素切れによる機能不全を解消する方向で開発が進んでいる。(ILLUST:BOSCH)

NOx対策③:EGR(エキゾースト・ガス・リサーキュレーション)

(ILLUST:熊谷敏直)

NOx生成を抑制するため、新気の代わりに燃焼ガスを吸入、酸素濃度を低下させて着火までの時間を遅延させ、燃料と空気を混合する時間を稼ぐ仕組みがEGR(ExhaustGasRecirculation)だ。軽油中の硫黄分の燃焼で発生するSOxによる硫酸によるエンジンの腐食が問題だったが、燃料のサルファフリー化と材質の改良によって冷却大量EGRが可能になった。

高温EGRによって新気の吸入量が減少するとPMが発生しやすくなり、一方では混合気質量(熱容量)の低下によって燃焼温度が高まりNOxも増加してしまう。対策として、エンジン冷却水を使ってEGR冷却することが一般的。さらに、専用のラジエターを設けて温度を低下させるものも現われている。ターボチャージャーの効率が高いと、「吸気圧力>排気圧力」となってそのままではEGRを導入できない。DEにVGターボ採用例が多いのは、VGで排気圧力を制御するためでもある。

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