内燃機関超基礎講座 | メルセデス・ベンツ/AMGのV8ツインターボエンジン三兄弟[M176/177/178]
- 2020/11/29
- Motor Fan illustrated編集部

V8ツインターボ、しかもバンク内排気レイアウトを採るダイムラーの新世代V8ターボ。Sクラスに載せられるのはM176と称する型式である。同じ機械構成でAMG63シリーズが積むM177、そしてAMG GTが載せるM178エンジンがある。これらにはどのような由来と特徴があるのだろうか。

M176型は、メルセデス・ベンツSクラスの先代に当たるW222型が2017年のマイナーチェンジ時に搭載し始めたV8エンジン。560グレードに搭載されている。型式をもう少し詳しく言えば「M176DE40AL」。Mはオットーサイクル(ガソリンエンジン)、176が型番で、DEは直噴、40が排気量で(3982cc)、Aはターボチャージャ、最後のLはインタークーラ装備を示す。
このM176、ダイムラー社のメルセデス・ベンツ車に搭載されるのは2機種目で、最初はGクラスだった。そのときは「G500」のグレードとして用いられ(現在は「G550」に改称)、310kW/610Nmの性能を与えられている。今回の「S560」は345kW/700Nmとして、過給圧を上げた制御としている。


さらにこのM176はV8エンジン3兄弟のうちのひとつで、さらにM177とM178が用意される。ファミリーを通じて機械的寸法はすべて一緒、縦積みで吸排気方向は同じとし、圧縮比は出力に応じて使い分ける。
■ M176:メルセデス・ベンツの「G550」と「S560」に搭載。圧縮比は10.5。
■ M177:メルセデスAMGの「63」の名称を持つグレード各車に搭載。圧縮比は10.5/8.6
■ M178:メルセデスAMGの「GT」シリーズに搭載。圧縮比は10.5/9.5。
M176はベンツブランドに用いられるエンジン、M177がAMGロクサンとマイバッハGLS、M178はGT専用の型式という位置づけで定着しているようだ。


車両搭載性を追求するとクランクウェブを噛ませてバンク角60度とするのがいまのところ最善策なV6エンジンに対して、V8は「4気筒×2」という作り方ができるので全長を短縮できるのがメリット。当然、シリンダブロックの設計思想も共用できる。実際、M178が登場したときには、同じメルセデスAMGが仕立てる4気筒エンジンM133のブロックに由来すると発表され、ボア×ストロークはもちろんボアピッチの数字も共通としている(83.0×92.0:90mm)。
M176/177/178は排気量もM133の1991ccのちょうど2倍、3982cc。したがって、アルミブロック+ダイムラー称するところの「NANOSLIDE」ボア壁面溶射構造も共通、わずか0.1〜0.15mm厚のコーティングを施すことで軽量化と熱伝達性の向上を図っている。


M176/177/178型は、近年のエンジンらしく気筒休止システムを装備。カムロブをスライドさせてゼロリフトとする「CAMTRONIC」によって、2番3番5番8番シリンダの吸排気バルブを停止させる。つまり、右シリンダの内側ふたつ/左シリンダの外側ふたつを止める格好。作動条件はM176が900-3250rpm、M177とM178は1000-3250rpmとしている。
同じV8の気筒休止で思い出すGM・LT4は止めるシリンダが正反対で、1番4番6番7番を休止。こちらはOHVだから、プッシュロッドの動作を止めるラッシュアジャスタのような部品を用いる。参考までに、直4では2番3番を止めるのが一般的、V6ではホンダの気筒休止システムVCMが非常にユニークな止め方をしていた。


■ M176/177/178:共通諸元
気筒配列 V型8気筒
排気量 3982cc
内径×行程 83.0mm×92.0mm
給気方式 ターボチャージャー
カム配置 DOHC
吸気弁/排気弁数 2/2
バルブ駆動方式 ロッカーアーム
燃料噴射方式 DI
VVT/VVL In-Ex/○
■ M176
圧縮比 10.5
最高出力 310kW/5250-5500rpm
最大トルク 610Nm/2000-4750rpm
(G550)
■ M177
圧縮比 8.6
最高出力 450kW/5750-6500rpm
最大トルク 850Nm/2500-4500rpm
(E63 S 4MATIC)
■ M178
圧縮比 9.5
最高出力 430kW/6250rpm
最大トルク 700Nm/2100-5500rpm
(AMG GT R)
|
|

自動車業界の最新情報をお届けします!
Follow @MotorFanwebおすすめのバックナンバー
水平対向と星型とロータリーエンジン特集

スバル新型レヴォーグの新1.8ℓ水平対向4気筒ターボCB18 vs マツダ...
スバルの1.8ℓリーンバーンターボ「CB18型」とはどんなエンジンか...

1.8ℓ直噴リーンバーンターボ! 次期スバル・レヴォーグから始まる...

内燃機関超基礎講座 | 星型エンジン、その複雑で精緻な構造

内燃機関超基礎講座 | 直噴技術がロータリーエンジンを救う? DIS...

いま再びマツダの水素ロータリーエンジンへの期待「REは水素燃料...
ホンダエンジンの技術力は凄い|内燃機関超基礎講座特集

内燃機関超基礎講座 | V型5気筒という奇妙なエンジンの理由[ホン...

内燃機関超基礎講座 | ホンダが作った「本当のアトキンソンサイク...

内燃機関超基礎講座 | NA時代のタイプRが搭載していた2.0ℓエンジ...

内燃機関超基礎講座 | ホンダ F1 エンジンのコンロッド 高い燃焼...

内燃機関超基礎講座 | ホンダ初代NSXのエンジン[C30A/C32B]虎...

内燃機関超基礎講座 | ホンダのユニークな気筒休止システム[VCM...
会員必読記事|MotorFan Tech 厳選コンテンツ

フェアレディZ432の真実 名車再考 日産フェアレディZ432 Chapter2...

マツダ ロータリーエンジン 13B-RENESISに至る技術課題と改善手法...

マツダSKYACTIV-X:常識破りのブレークスルー。ガソリンエンジン...

ターボエンジンに過給ラグが生じるわけ——普段は自然吸気状態

林義正先生、「トルクと馬力」って何が違うんですか、教えてくだ...

マツダ×トヨタのSKYACTIV-HYBRIDとはどのようなパワートレインだ...
3分でわかる! クルマとバイクのテクノロジー超簡単解説

3分でわかる! スーパーカブのエンジンが壊れない理由……のひとつ...

3分でわかる! マツダのSKYACTIV-X(スカイアクティブ-X)ってな...

スーパーカブとクロスカブの運転が楽しいのは自動遠心クラッチ付...

ホンダCB1100の並列4気筒にはなぜV8のようなドロドロ感があるのか...

ホンダ・シビック タイプRの謎、4気筒なのになぜマフラーが3本?

3分でわかる!アシスト&スリッパークラッチって何? 250ccからリ...
Motor-Fanオリジナル自動車カタログ
自動車カタログTOPへMotor-Fan厳選中古車物件情報

メルセデス・ベンツ Sクラス
S550ロング後期ロリンザーPKG 黒革20AW HDDナビ
中古価格 122万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S320 ホワイト サンルーフ 革シート パワーシート
中古価格 51万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S400hエクスクルーシブ AMGライン 右H禁煙ベージュ革
中古価格 418万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S400 AMGライン
中古価格 701.2万円

メルセデスAMG GT 4ドアクーペ
63 S 4マチック+
中古価格 2038万円

メルセデス・ベンツ Sクラス
S400d AMGラインプラス
中古価格 877万円