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内燃機関超基礎講座 | なぜ「電車」なのに発電機を積むのか——鉄道のハイブリッド事情

  • 2021/03/20
  • Motor Fan illustrated編集部
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鉄道=電車と言っても差し支えないくらいに、電気+モーターに馴染みのある鉄道。そこをあえて、蓄電池を積んだり発電機を積んだりといった車両が現れ始めた。その意図とは。
TEXT&PHOTO:松沼猛(MATSUNUMA Takeru)

日本の鉄道車両では様々な方式のハイブリッドシステムが試験されたが、現時点で実用化されているのはシリーズハイブリッド方式だけだ。システムはディーゼル発電ユニットと、リチウムイオン電池、駆動用モーターで構成される。必要に応じて発電電力と回生ブレーキの電力を充電し、リチウムイオン電池の電力と発電電力でモーターを駆動する。

このディーゼル発電ユニットの代わりにパンタグラフを搭載したのが蓄電池電車。電化区間ではパンタグラフで集電した電力で走行し、リチウムイオン電池に充電も行なう。非電化区間ではリチウムイオン電池の電力で走行する。また非電化区間の駅に設けられた急速充電設備で、短時間に充電することができる。

ある意味パンタグラフがプラグ的役割を果たしているが、エンジンを搭載していないのでPHEVというよりは純粋なEVに近い。EVと違うのは走りながら充電ができるという点で、これは架線集電設備を持つ鉄道ならではと言えるだろう。なお蓄電池電車についてはJR九州も実用化を予定している。

キハE200(シリーズHEV)。ハイブリッド車は環境アピールをしやすい観光地を中心に運用されている。また電化方式に関係なく走れるので、交流電化の東北本線と直流電化の仙石線を非電化の連絡線でつなぎ、ハイブリッド車で直通させている。

シリーズハイブリッド方式や蓄電池電車の狙いは、燃費改善や排出ガス低減、騒音低減に加えて、電車と駆動部品を共通化してイニシャルコストとランニングコストの低減、さらにディーゼルカーに搭載される液体変速機などの油脂使用部品を廃止してメインテナンスコストを低減させることだ。つまり基本思想は「自前で電力供給ができる電車」だ。

なお、現時点では実用化されていないがパラレルハイブリッドやマイルドハイブリッドの試験も行なわれている。また燃料電池ハイブリッド車の研究もしており、これらのシステムを搭載した車両が近い将来登場するかもしれない。

EV-E301(バッテリーEV)。蓄電池電車は電化区間から非電化区間に電車を直通させる手段として実用化された。烏山線の「ACCUM」は直流電化対応車だが、交流電化対応車も秋田地区や九州地区で導入される予定になっている。
EV-E301(バッテリーEV)。烏山駅の充電設備で急速充電中の蓄電池電車「ACCUM」。大電流で急速充電するため、充電設備は鋼体架線を張っている。また「ACCUM」には大電流対応のパンタグラフを搭載している。

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