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内燃機関超基礎講座 | 三菱のダカール用レーシングディーゼル[6G7-DID]ガソリンエンジンがベース

  • 2021/05/06
  • Motor Fan illustrated編集部
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道なき道を行くクロスカントリーラリー競技の最高峰ダカールラリーで計12回もの総合優勝を勝ち取ってきた三菱自動車は、勝ち続けるための選択としてディーゼルターボ・エンジンを作り上げ、2009年1月のダカールラリーに投入した。日本の自動車メーカーが初めて開発した純レーシング・ディーゼル、それは量産ガソリン・エンジン生まれの異端児だった。
TEXT:今井清和(IMAI Kiyokazu) PHOTO:MITSUBISHI MOTORS/住吉道仁

日本初の純レーシング・ディーゼルである三菱自動車の6G7-DID。とは言っても、外観はガソリン・エンジンである三菱6G7系そのまま。カム間隔までそのままであることがわかる。スパークプラグが配されていたシリンダーヘッド中央には新たにディーゼル用のインジェクターが備わり、ヘッドカバー上のコモンレールからデリバリーパイプが伸びているが、注意して見ないと、これがディーゼルとは普通は思わないだろう。オイルシステムはドライサンプで、低重心化が図られている。

【参考】ガソリンエンジンの6G75型。3.8ℓの排気量を持つ仕様。
上のグラフは、従来のダカールラリーにおけるNAガソリン・エンジンと今回のレーシング・ディーゼルのエンジン性能曲線で、上側の2本のカーブが出力、下側がトルクを示す。公称値に基づいてピーク性能を比較すると、ディーゼルは出力で約10%、トルクに至っては約60%もの向上を実現。ただし、レブリミット手前の高回転域ではNAガソリン以上の落ち込みが見られ、ボア×ストロークの変更を含めた対策が検討されていた。

6G7系のシリンダー挟み角はV6としては標準的な60°で等間隔点火。このレーシング・ディーゼルでは両バンクの脇に2ステージターボユニットを備えるため、エンジンコンポーネントとしての横幅がかなりある。重量もインテークマニホールドを除いた状態で230kg前後と、NAガソリン時代より60kg以上の増加となった。

容量と応答性の両立を狙い、市販車でも採用例が増えている2ステージターボシステムを採用。低回転域は高圧(小型)、高回転域は低圧(大型)のターボが主に担当するというのが基本的な考え方で、三菱レーシング・ディーゼルの場合、3000rpmを超えたあたりで両ターボがフル稼働に近い状態となる。

エアクリーナーを通過した新気はリストリクターで絞り込まれた後に低圧ターボのコンプレッサーに入り、低圧ターボ用インタークーラーを通過。その後、高回転域ではコンプレッサーバイパスバルブが開いて空気の多くは高圧ターボ用インタークーラーに直接入って再度冷却された後にエンジンに導かれるが、低・中回転域では高圧ターボのコンプレッサーでさらに加圧される。排気も同様の考え方。まず高圧ターボに向かうが、中・高回転域では低圧ターボをフルに使うためにエキゾーストコントロールバルブが開き、逆にエンジン回転が低くなるほど高圧ターボの作動率を高める。

これらの制御は、燃料噴射制御とともに競技用ECUが統括。この三菱のレーシング・ディーゼル開発における実走テストの大半は増岡浩選手の手によって行なわれたが、「2ステージターボを生かすも殺すも制御次第」と語っていた。

片バンク分の2ステージターボユニットの全容。上側が低圧ターボで、常時作動させるためウェイストゲートもこちら側に備わり、リストリクターを介して新気を導入する。規定のリストリクター径はφ38mmだが、それが両バンクに備わるので、√2で割ったφ26.8mmが各々の実寸。下側が高圧ターボで、低圧ターボのタービンに排気を流すエキゾーストマニホールドアダプターの中間にエキゾーストコントロールバルブが備わる。
2ステージターボシステムの複雑な配管が分かるテストベンチでの写真と見比べると、よくこれがクルマに収まっているものだと思えてくるエンジンベイ。いわゆるフロントミッドシップであり、エンジン主機はバルクヘッドに食い込む位置に。前方で吸気管が上下に走るところに円錐形のデバイスが見えるが、これがコンプレッサーバイパスバルブのユニット。

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