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内燃機関超基礎講座 | エンジンルーム——性能とコストのバランス、そして新機構のための場所の確保

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自動車全体に占めるエンジンルームの容積比は、90年代以降どんどん小さくなっている。効率的なパッケージングが求められているとは言え、そろそろ限界にきているような気がする。
TEXT:牧野茂雄(MAKINO Shigeo)

エンジンと変速機のために与えられるスペースはどんどん小さくなっている。かつては長いエンジンルームのなかにスッキリとシンプルなエンジンが収まり、ボンネットフードを開けて覗き込めば隙間から地面が見えた。しかし、現在の乗用車は、エンジンルームに手を入れる隙間さえなくなった。

現在、自動車全体のプロポーションを決めるうえでの要素は、乗車定員(シート)数やカテゴリーだけでなく、衝突安全性要件(法規)や他モデルとの部品および骨格設計の共通化といった部分が絡んでくる。それと、ある程度の整備性だ。昔に比べると、現在の国産エンジンはメンテナンスフリー化がどんどん進み、整備性の要件は二の次、三の次になった。プラグ交換頻度はめっきり減り、ATオイルの交換はほぼ不要なのだから、当たり前と言えば当たり前なのだが。

オイルフィルターも、だんだんと取り付け位置の確保が厳しくなってきた。上の写真は、クルマをリフトアップした状態で交換するオイルフィルターである。90年代までの乗用車なら、オーナーがDIY(ドゥ・イット・ユアセルフ)で「クルマをいじる」という、ある種の楽しみの部分が存在したが、現在は事情がまったく違う。

もっとも、オーナー自身が自己責任(場合によっては自己無責任)で自動車の機能に影響する部分に「手を入れる」ことの是非も、本来なら議論されなければならない。また、オイル交換のように廃棄物を伴うDIYに責任を負わせる保証もない。自動車の設計において、ユーザー自身が「手を入れられる」余地はどんどん狭くなってきたが、自動車そのものの容積効率追求や軽量化要求を考えると致し方のない部分でもある。

エンジン補機の設計も、現在はほとんど自由度がない。車両パッケージングからの要求で「このスペースに入れてほしい」ということが決定され、それにぴたりと合わせた設計が行なわれるケースが増えた。クランク軸にベルトをかけ、そこから動力をわけてもらって駆動されるオルタネーター(発電機)やエアコン用のコンプレッサー、オイルポンプなどは、だんだんとエンジンからハイドアウェイ(遠ざかる)されるようになるだろう。

エンジンマウントも同様である。日本の自動車メーカーは欧米の自動車メーカーに比べてエンジンマウントを軽視しているように感じる。ただ単にエンジンの「揺れ」を規制したり振動を遮断したりする役割だけを負っているのではなく、実際には車両挙動にも大きな影響を与えるのがエンジンマウントである。今後、エンジンが過給ダウンサイジングと気筒数減少に向かうことは明らかであり、その分、エンジンマウントに期待される機能・性能は高くなる。エンジン/トランスミッションというパワーパッケージをどう車体と結合するか。この分野を考察し、その役割を再確認することが必要だと思われる。

車両挙動で言えば、フロントのサスペンションとコイルスプリングもスペースの制約を受けている。00年以降で言うと、超扁平タイヤの装着例が増え、車両重量だけでなくタイヤ/ホイールの重量も増加しているのだが、サスペンションに与えられる空間も制限されている。そのため、伸び側と縮み側とで軌跡が異なるコイルスプリングを採用することが当たり前になった。辻褄が合っているうちは良いが、行き過ぎは禁物である。

より精密なエンジンおよび走行機能の制御を行なうためのセンサー類や、演算を受け持つCPUも、だんだん場所の確保が難しくなってきた。電気信号をあつかうから、必ず電線が必要であり、その「這わせ方」にも気を使わなければならない。コックピットモジュールの中に押し込む場合にも、デジタル輻射ノイズの影響を受けない場所を探さなければならない。しかも、開発期間が短縮されるなかでこの作業を行なう。

だからこそ、エンジンはもっと小さくなるべきだ──こういう声が聞こえてくるのも当然である。

さて、日本の自動車メーカーはどうするか。

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