現在、カーボンニュートラル実現に向けた新エネルギーの活用として、水素の利用拡大が注目されており、将来の水素需要量の急増に対する省エネ・高効率な水素精製技術の確立が不可欠である。水素精製技術の一つである膜分離法は、水素製造・利用時に不純物を除き、純度の高い水素を得るために、圧力差を利用して分離する技術であり、省エネ・省スペース化を実現するプロセスとして期待されている。分離膜のうち高分子分離膜モジュールは、水蒸気による性能低下が小さく、軽量性に優れている一方、透過水素純度や水素透過量に課題があった。
今回、逆浸透(RO)膜で培った技術を駆使して、水素親和性材料を導入することにより、細孔構造を高度に制御した分離膜を新たに開発、これを用いた水素精製において、世界最高レベルの透過水素純度98%を実現した。これにより、これまで透過水素純度を高めるために複数回のろ過が必要だったところを、1回の分離で純度を高めることができ、従来の分離膜モジュールと比べ、初期投資が削減できるだけでなく、省エネルギー化が可能となり、CO2排出量を50%以上削減することが期待できる(図1)。
さらに、モジュール化に際し、主要構成部材の流路材を最適設計にし、流動抵抗を低減することで、無機分離膜モジュールと比べ、2倍以上の高膜面積化を実現した。これにより、モジュール1本あたりの水素透過性が向上し(図2)、水素精製プロセスに必要なモジュール本数を50%以下に削減できる。さらに、開発した分離膜を組み合わせることで、モジュール本数を75%以上削減でき、大幅な省スペース化が期待できる。
今後、国内外の各エンジニアリング会社との協力関係を構築しながら、水処理で培ったプロセス技術を用いて量産技術を確立していく。