DMSは、ドライバの頭の動きなどを継続的にモニタリングし、居眠りやわき見運転の兆候を認識することで、車載システムで警告を発生させて乗客の安全を守る。交通事故の約95%は人為的なミスが原因で、DMSのようなシステムを活用することで、その多くを回避できると推定されている。2020年(1) のヨーロッパにおける交通事故死亡者数は約19,000人にのぼり、近年制定された法律により、2024年にはヨーロッパのすべての新しい自動車プラットフォームに、2026年には既存のプラットフォームにおいてDMSの搭載が必須となる。また、米国では、交通事故死亡者数がヨーロッパの2倍に達していることから(2)、国家運輸安全委員会(NTSB)がすべての半自動運転車にDMSの搭載を推奨している。
STマイクロエレクトロニクスのエグゼクティブ・バイスプレジデント 兼 イメージング・サブグループ ジェネラル・マネージャであるEric Aussedat氏は、次のようにコメントした。
「ドライバーは、疲れや注意散漫によって安全な運転ができないことを自覚できない場合があります。DMSは、問題を自動的に検出してリスクを排除し、自動車の乗客だけでなく、道路を利用するすべての人々の保護に貢献します。小型で優れた感度を備えたSTの最新のグローバル・シャッター機能搭載イメージ・センサは、DMSのハードウェアを簡略化し、システム全体のコスト削減に貢献します。これにより、お客様やパートナーは、法規制に対応できる高性能かつ信頼性に優れたDMSシステムを構築できます」
VB56G4Aには、先進的な3Dスタック裏面照射(BSI-3D)イメージ・センサ製造におけるSTの内部投資が活用されている。第1世代のDMSで一般的に使用されている従来の表面照射(FSI)センサと比べて高感度かつ小型で、優れた信頼性を実現している。
STは現在、主要顧客向けにVB56G4Aのサンプルを出荷中。2024年モデルの車両に採用できるよう、2023年初めに量産が開始される予定。
技術情報
グローバル・シャッター・センサは、ローリング・シャッター・センサと比べて大きなメリットを提供する。全ピクセルを同時に露光することで、近赤外(NIR)照明との同期が簡略化され、照明部の消費電力削減に貢献する。VB56G4Aは、940nmの近赤外波長において24%という高い量子効率(QE)を実現するとともに、最大60dBの線形ダイナミック・レンジを備えている。これにより、シンプルかつ低消費電力の不可視光LEDエミッタで、十分な照明をセンサに提供可能である。不可視光で動作させることで、昼夜および天候にかかわらず、安定した応答性を実現する。
VB56G4Aは、高いQEとわずか2.6µmのピクセル・サイズにより、システム全体の消費電力およびカメラ・サイズの最適化に貢献する。また、自動露光制御機能を搭載しているため、センサ / システム間の相互制御を最小限に抑えつつ、使いやすさの向上やアプリケーション・ソフトウェア設計の簡略化が可能。
VB56G4Aには、システムの機能および性能の最適化に貢献する柔軟性の高い動作モードが搭載されている。4フレーム・コンテキストのプログラムが可能なシーケンス、センサの積分時間と同期される照明制御出力、外部フレーム起動信号用の入力、自動黒レベル補正、動的ピクセル欠陥修正、画像クロップ、ミラー / フリップ画像読み出しなどが含まれている。
また、外部接続として、8本のプログラム可能な汎用I/O(GPIO)ピンや、1レーンあたり最大1.5Gbpsで動作するデュアル・レーンMIPI CSI-2トランスミッタ・インタフェースなどが搭載されている。最大88フレーム / 秒(fps)の解像度で動作可能で、消費電力は60fps時に145mW(Typ.)。
(1) 欧州運輸安全評議会のプレスリリース(2021年6月16日)
(2) 米国運輸省道路交通安全局のプレスリリース(2022年3月2日)