日産のシリーズハイブリッド・e-POWER用のエンジンはHR12DE型からスタートし、ミニバンであるセレナにe-POWERが適用された際も同型が適用されてきたが、2022年11月のセレナフルモデルチェンジにあたり、日産は発電専用エンジンとして本機・HR14DDeを新たに開発、e-POWERの発電専用として初のエンジンとなった。なお、発電専用としている条件のひとつとして、セルモーターブラケットを備えていないことをエンジニアは説明。これにより、トランスアクスルとの締結剛性の向上に寄与しているという。
基本的な構造はHRの型式を冠することからボアピッチおよびHR12DEとボア径を共通とした設計、ストロークを伸張させることで排気量を1.4Lまで拡大した。この排気量は、セレナe-POWERの車重を過不足なく動かすための電気エネルギーを得られる100馬力発揮を目標とした。2022年11月末現在では行程値が発表されていないが、お話をうかがったエンジニアは「100ストローク」と口にしていて、そうなると排気量は1434cc。S/B比は1.28と、かなりのロングストローク傾向のエンジンである。
(11月28日にスペックを発表:ストロークは100mm/排気量は1434cc)
腰下については、ラダーやビームの類は用いていないものの、ロワーブロックを強固な構造とすることでクランクシャフトを強力に抑え込む構造。また、100馬力への対応を含めクランクのジャーナル径も拡大している。バランサーを備えていることも大きな特徴で、これはe-POWER専用エンジンが最高出力発揮回転数付近で使われることが多く、ドライバーのペダル操作と連動しないエンジンの運転状況がキャビンへの振動騒音として目立ってしまうことを避けることを目的とした。このバランサーをはじめフレキシブルフライホイールやプーリーへのバランスウェイトなどの対策を施すことで、3気筒特有の偶力振動を大幅に低減している。日本の3気筒エンジンの多くがアフォーダブル機として扱われているところ、コストをかけたエンジンと言えるだろう。
このほか、吸排気双方にVVTを装備することで、ミラーサイクルによる高効率運転と、ドライバーの瞬間トルク要求に対応するパワープロファイルとを切り替える。圧縮比は13.0で、レギュラーガス仕様。
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