「モビリティ社会のTier1」への移行を目指し3つのテーマに取り組むデンソー【ジャパンモビリティショー2023】

メガサプライヤーであるデンソーは、これまでの「自動車業界のTier1」から、社会全体を下支えする「モビリティ社会のTier1」へ進化し、より多様な価値創造に貢献する企業を目指すことをアピールした。今回のショーは「クルマ」という枠を越え、「モビリティ社会」という視点で広く課題を捉え、さまざまな産業の人と技術が「つながる」ことで、新しい価値を創っていく時代に突入していることを表しており、デンソーには大きなチャレンジが求められているという認識のもとの意思表示だ。

プレスカンファレンスに登壇した林 新之助デンソー社長は、電動化とソフトウェア領域への人材増強の方針を発表。社員採用と成熟領域からの人財シフトなどを推進し2022年から2025年までの4年間で計4000名の人財を増やすという、同社の取り組みをまず述べた。そして3つのテーマを定めた、その内容を解説した。

まず従来のメインマーケットであったモビリティ部門だが、同社はこれまでインバーター・モータージェネレーター・電池監視システムなどのデバイスの技術革新に努め、HEV・PHEV・BEV・FCEVのすべてに搭載できる形で、水平方向の品揃えを強化してきたスタンスで事業を進めてきた。しかし今後は電動化製品とエネルギーマネジメントを連携させた大規模システム、パワーモジュールといった部品まで、垂直方向での品揃えも拡充すると発表。BEV普及期における多様なニーズに対応しカーボンニュートラルの実現に貢献するべく開発を行なう。

「環境」「安心」領域における価値最大化に向けた戦略を発表するデンソー代表取締役社長の林 新之助氏。

2つ目としては「新価値創造」への挑戦を掲げ、エネルギー、食農、サーキュラーエコノミー領域など、モビリティ以外の領域にも数多くの技術開発や事業化の検討を実施。水素ビジネスでは「水素を作る」「水素を燃料電池の燃料として使う」という両面からのエネルギーシステム製品を2024年以降、市場投入するとしている。

モーターショーからモビリティショーへの移行に際し、出展内容のイメージチェンジを図ったサプライヤーは多いがデンソーもそのひとつ。体感インタラクションを大型スクリーンに投影するコンテンツがメインとなる。

3つ目の取り組みとして、冒頭でも述べた「半導体とソフトウェアの強化」を掲げ、その内容として半導体では2030年までに約5000億円という積極的な投資を実施。2035年には同社のこの部門での事業規模を現在の3倍へと拡大する目標を設定している。この生産拡大には材料の安定調達のための多くの企業との戦略的パートナーシップの構築も重要なポイントとした。

ソフトウェアでもコンセプトだけではなく、製品化につなげる実装フェーズを重視。こちらでもパートナーシップを強化し、企業の垣根を越えた一体開発を進めユーザーニーズを起点とした電子プラットフォーム企画やOTA技術開発等を加速する構えだ。

未来を舞台にしたインタラクションを実現化するために使われるデンソーのデバイス群が各エリアに展示され、エンジニアの解説を訊くことができる。

体制面ではデンソーグループの半導体IP開発会社「株式会社エヌエスアイテクス(NSITEXE)」、車載ベーシックソフトウェア開発会社「株式会社オーバス(AUBASS)」をデンソーに合併して意思決定などを迅速化、より付加価値の高い統合システムの開発を強化する。さらに車載ソフトウェアで培った知見、経験を織り込んだ特化型AIを開発に導入してソフトウェアの開発スピード2倍の実現も目標として挙げた。

キーワードで検索する

著者プロフィール

Motor Fan illustrated編集部 近影

Motor Fan illustrated編集部