目次
UDトラックスと神戸製鋼所は、本実証実験を通じ「超スマート社会」に不可欠となるスマート物流サービス(※1)と製造・物流現場のデジタルトランスフォーメーション(DX)の促進を目指す。
取り組みの背景と目的 ードライバー不足は製造現場でも課題 ー
我が国では少子高齢化を背景に労働力不足が深刻な社会問題となるなかで、労働力の確保が急務の課題となっている。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計(出生中位(死亡中位)推計)によると、生産年齢人口は2030年には6773万人、2060年には4418万人(2010年比45.9%減)にまで減少すると見込まれている。
デジタル化により消費行動が大きく変化するなかで、物流を含む流通・サービス業は労働力不足が顕著となり、従来のサービスレベルを維持しきれない状況になっている。またドライバー不足は物流だけでなく、製造現場の持続可能性にも影響を与えている。特に製鉄所の高炉操業は、輸送など関連する業務を含め24時間365日の稼働を前提としているため、ドライバー不足が深刻化すると操業への影響も懸念される。
こうした課題に対応するため、政府や業界団体、企業では高齢者や女性、外国人の受け入れなど、多種多様な人材の活用を積極的に推進するほか、AI(人工知能)やIoT(Internet of Things)など、デジタルテクノロジーを活用した業務効率化の取り組みを加速させている。
UDトラックスは2018年、深刻化する社会や物流業界の課題解決に貢献するため、次世代技術の要である自動化と電動化分野に主眼を置き、大型トラックの特定用途での自動運転や電動駆動における様々なソリューションを提供する2030年までの取り組みを示した次世代技術ロードマップ「Fujin & Raijin(風神雷神)―― ビジョン2030」を発表し、早期の社会実装に向けた取り組みを推進している。上記ロードマップに基づき、2019年には自動運転トラックの実用化を通じたドライバー不足問題の解消を目的として、日本通運、ホクレン農業協同組合連合会と共同で、5段階の運転自動化レベルにおけるレベル4(特定条件下における完全自動運転)技術を活用した自動運転トラックの実証実験(※2)北海道で行った。また本実験では、実際の運搬に近い環境を再現するため、国内初となる公道を一部含むルートでの試験走行を行った。
一方、神戸製鋼所は2021年5月に「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」(※3)を策定した。顧客起点でバリューチェーンをデジタル技術によって変革し新たな価値を創造することで、社会課題を解決することを基本方針としたDX戦略を推進している。特に各製造拠点では最新のデジタル技術を活用し、物流を含むプロセス制御自動化・効率化によるものづくり力向上を推進している。
こうした背景を踏まえ、ドライバー不足への一つのソリューションを創出することを目的として、両社は神戸製鋼所の加古川製鉄所内において、UDトラックスが開発したレベル4自動運転技術を搭載したトラックを使用した本実証実験を行うことにした。UDトラックスが2019年に実施した実証実験では、製造現場の限定領域における反復作業の自動化の有用性が確認されており、本実証実験を通じ早期の社会実装に向けた取り組みを促進する。
本実証実験の概要
両社は2022年下半期を目処に、 加古川製鉄所内の水砕スラグ(※4)運搬コースの一部分のルートにて、UDトラックスが製造する大型トラック「クオン」をベースとしたレベル4限定領域自動運転対応車両(※5)1台を使用し、 自動運転の走行実験を行う。
※1 スマート物流サービスについて https://www.pari.go.jp/sip/
※2 2019年に実施された自動運転トラックの実証実験について https://www.udtrucks.com/japan/news-and-stories/press-releases/20190829-fujin-demo-hokkaido-event
※3 神戸製鋼所の中期経営計画について https://www.kobelco.co.jp/releases/1209072_15541.html
※4 高炉から生成する溶融スラグに圧力水を噴射することで急冷した砂状のスラグ。主にセメント用原料として国内および海外に販売。
※5 「レベル4限定領域自動運転対応車両」とは、特定の走行環境・条件(ODD)の中で認知、 判断、操作の運転操作をシステムが完全に実施する車両で、SAE J3016「運転自動化レベル」の国際標準に準拠。安全対策を万全とするため、実証実験中は実験ルート内の人流を遮断・封鎖する。また実験は車両に安全監視ドライバーが搭乗し、不測の事態に対する有人緊急操縦態勢を確保した上で実施し、万が一のリスクに備える。