核融合は太陽が輝き続けられるエネルギー源であり、地上での核融合の実現を目指して、重水素や三重水素などの軽い原子核がプラズマ状態で融合し、ヘリウムなどのより重い原子核になる核融合反応を利用する。燃料となる重水素、三重水素の原料であるリチウム資源は海水中に無尽蔵にあり、核融合エネルギーはCO2を発生しない。そのため、エネルギーおよび環境問題を根本的に解決すると期待されている。
ITER計画は、核融合エネルギーの実現に向け、科学的・技術的な実証を行うことを目的とした大型国際プロジェクト。日本・欧州・米国・ロシア・韓国・中国・インドの7極が参加し、2035年の核融合燃焼による本格運転開始を目標に、ITERの建設をフランスのサン・ポール・レ・デュランス市で進めている。日本はダイバータやTFコイルをはじめ、ITERにおける主要機器の開発・製作などの重要な役割を担っており、量研がITER計画の日本国内機関として機器などの調達活動を推進している。
ダイバータは、核融合反応で生成される炉心プラズマ中のヘリウム(He)や燃え残った燃料、不純物を排出し、高熱負荷・粒子負荷を除去してプラズマを安定的に閉じ込めるために必要な、トカマク型装置を採用する核融合炉における最重要機器の一つ。日本が調達する外側垂直ターゲットのほか、欧州が製作を担うカセットボディや内側垂直ターゲット、ならびにロシアで製作されるドームの4要素で構成される。
ダイバータの熱負荷は最大で20MW/m2に達する。これは、小惑星探査機が大気圏突入の際に受ける表面熱負荷に匹敵し、スペースシャトルが受ける表面熱負荷の約30倍に当たる。構造上プラズマに直面する外側垂直ターゲットは、プラズマからの熱負荷や粒子負荷などに晒される厳しい環境で使用されることから、その構造体は非常に複雑な形状を有しており、高精度の製作・加工技術が要求される。
三菱重工は、同じくITER向けの主要機器であるトロイダル磁場コイル(TFコイル)についても、全19基中5基の製作を受注。これまでに4基を出荷済みで、現地にてITER機構による本体への組み込み作業を進めている。