「強烈な個性で仕上げられた脱定番NSX!」日本の改造文化に魅了された男の愛機

いつか日本の公道で走れる日を夢見て・・・

ロケバニ&スーパーチャージャーの無敵コンテンツで武装

指定された住所に辿り着くと、そこは閑静な住宅街に建つ一軒家だった。ガレージにはお目当てのNSXと並んで、ポルシェ911も置かれている。

「次のプロジェクトカーさ。完成したらまた撮影に来てくれよ! ハハハハハ」。オーナーのロバート・チュウは体も大きいが、笑い声も同じくらい豪快なカーガイだ。口癖は「クレイジー!」。日本語の「ヤバい」と同じように、肯定するにしろ否定するにしろ、ともかく連発する。

ハイスクールの時からクルマいじりにハマり、日本語は読めなくてもOPTION誌を愛読していたロバート。シビックやインテグラが大好きなホンダガイで、当時新車として販売されていたNSXは憧れの的だった。また、OPTION誌に載っていた日本製のアフターパーツやJGTCのレーシングカーも自然と興味の対象になっていった。

「こんなハイクオリティなパーツがすぐ手に入ってポン付けできるなんて、やっぱり日本はクレイジーだ!」といった感じで。そうして培ってきた知識とJDM愛が、今、大いに役立っている。

NSXを手に入れた当初は、ピュアでクリーンなNSX-Rルックへの変身を夢想していたロバートだったが、ロケットバニーのボディキットの登場で方向性がシフト。唯一無二のチューニングカーを目指すことになったのだ。

ちなみに、ロケットバニーと言えばリベット留めのオーバーフェンダーが有名だが、NSX用のボディキットはボンネットとバンパーとフェンダーを一体化し、前ヒンジで開くクラムシェルカウルが特徴だ。

リヤは得意のバンパーレス風デザインで、大きなGTウイングやディフューザーも装備。当初はブルークロームのラッピングだった車体はホワイトでリペイントされた。

ホイールはボルクレーシングTE37(F9.5×18 R10.5×18)をチョイス。車高はAirREXのエアサスペンションで調整が可能だ。エアサスはショー映えするのはもちろんだが、乗り味や性能もひと昔前とは雲泥の差ということで、アメリカではかなりユーザーの幅を広めている。

リヤコンパートメントに収まるエアタンクは、遊び心でブランデーのヘネシーにインスパイアされたデザインを採り入れた。

当然ながらエンジンにも手が入る。ミッドシップに収まるC30Aにマウントされるのは、グループMのスーパーチャージャー。イートン製のルーツ式ブロワーをベースに独自の設計が施されており、インテークにはもちろん高品質なエアフィルターが採用されている。

鍛造ピストンやガスケットなどの内部パーツ、クラッチやフライホイールなどはアリゾナ州にあるサイエンス・オブ・スピード製を採用。VTECのセンターロッカーの振動を抑制するLMAキットというパーツも使用されている。AEMシリーズ2で制御され、パワーはタイプRを超える316hp(約320ps)をマーク。

一方のインテリアは、年式(1992年モデル)からは考えにくいほど美しいコンディションを保つ。

パーソナルのステアリングホイールやブリッドのバケットシートを備え、シフトノブとシフトブーツはNSX-R用を装着している。

AirREXのモニターを車内に備え、車高のコントローラーはキーホルダーとして常備。言わずもがな、ストリートを走る上でも車高調整機能は実に重宝する。

こうして完成したNSXは、SEMAショーの大舞台でも話題をさらった。周囲からのリアクションの大きさはロバートの想像を遥かに超え、SNSを通じた交流の幅も爆発的に広がったという。ショーの前と後で起きた違いに少し戸惑いつつも、人生の良き変化も楽しんでいる。

「このNSXで日本の道を走ることが夢。17歳の時から日本のクルマやカーカルチャーに影響を受けてきたんだからね。SEMAが終わった後に知り合いとストリートを走っていたら、まるでJGTCのマシンが公道を走っているみたいだと言われたんだ。それと同じことを日本のストリートでもやってみたくてね。どう、クレイジーだろ? ハハハハハ!」。

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Photo:Akio HIRANO TEXT:Hideo KOBAYASHI

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