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君は本当のコンパクトハッチを知っているか
当時の関係者が語る、黒いフェスティバGT-Aの正体!
1.3L・DOHCのBJ型エンジンを載せた初代フェスティバのスポーティグレード、GT/GT-X。装備充実のGT-Xをベースにドイツ・スカラデザイン社が外装に手を加えたモデルが、1991年3月に300台限定で発売されたGT-Aだ。
最大の特徴は角型2灯から丸型2灯ヘッドライトに改められたフロントマスク。FRP製ボンネット/フェンダー/バンパーはGT-A専用デザインとされ、ボディ色ブレイズレッド(オプションでノーズのみホワイトも選択できた)と相まって、アバルト風テイストを醸し出していた。
GT-Aのボディ架装を行なっていたのはマツダ産業で、GT-Xではオプション設定のエアコンを標準装備した上で持ち込み登録。何かと手間暇が掛かったことから納車半年待ちという状況が続き、相当数のオーダーキャンセルを受けた結果、GT-Aの生産は200数十台でストップしてしまった。まだ80数台分の専用パーツが残っているのに、だ。そこでボディ色をブレイズレッドからブリリアントブラックに換えたモデルを発売。それが今回取材した車両になる。
初代フェスティバには2種類の1.3Lエンジンが用意された。1つはSOHC16バルブのB3型、もう1つがGT/GT-X/GT-Aに搭載されたDOHC16バルブのBJ型だ。BJ型はB5型のショートストローク版(78.4→67.5mm、ボア径は共に78.0mm)で高回転志向のスポーツユニットとして開発。常用7500rpmを許容する。また、低速トルクを補うため可変吸気システム(VICS)も装備される。
内装はベースとなったGT-Xに準じるが、GT-AにはMOMO製のステアリングホイール(画像のステアリングは前オーナーによって交換されたもの)とシフトノブが標準装備された。メーターパネルは、スピードメーターの下に水温計、タコメーターの下に燃料計を配したシンプルなデザイン。7500rpmから始まるタコメーターのレッドゾーンが高回転型エンジンの証だ。
メーターパネル右側のスイッチで、減衰力をノーマルとハードの2段階に切り替えられるアジャスタブルショックアブソーバー(ASA)を標準装備。ダンパー上部にはカプラーも確認できる。これはベースのGT-Xにも備わるものだ。
シートはGT-Xと共通。全長は3575mmとほぼ軽自動車サイズだが、ラゲッジスペースもしっかり確保されている。
後席は50:50の分割可倒式で、荷物の大きさや乗車人数に合わせてアレンジが可能。
黒いフェスティバGT-A誕生の経緯を話してくれたのは、当時オートラマでGT-Aの開発に深く携わっていた中島秀之氏。いわく、「ボディ色が赤、もしくは赤+白のモデルがGT-Aであって、黒ボディの最後の80数台は別の車名(グレード名)を付けたはず。ただ、そこは私がオートラマを退社した後のことなので、直接的に関わっていないのですが」とのことだが、ボディ色が違うだけで見た目は同じだから、GT-Aと呼んでも問題ないだろう。
ベースとなったGT-X同様、GT-Aの走りも軽快だ。BJ型エンジンのスペックは88ps&10.0kgmと数値的にはだいぶ控え目に思えるけど、わずか800kgの車重に対しては十分な動力性能を与えてくれる。何より最高出力を7000rpmで発揮する高回転型のエンジン特性だけに、絶対的な速さは知れてても、それを遥かに上回る楽しさに溢れている。
ハンドリングも小気味よく、軽量ボディと2295mmという短いホイールベースによってヒラリと舞うようにコーナーを抜けていく。この軽い身のこなしこそが、1990年前後に全盛期を迎えたコンパクトハッチの真骨頂だと思うのだ。
●取材協力:オートプロデュースアクセス 群馬県伊勢崎市五目牛町318-2 TEL:0270-75-3400