「ほのかに漂うオフロード臭がたまらない!」スクエアなフォルムが魅力のレオーネ3ドアクーペRXIIを試す

国産車初の称号は惜しくもマツダに・・・

スバル初のターボ+MT+フルタイム4WDの競技ベースモデル!

今やスバルはレヴォーグ&フォレスターを主軸にBRZまで扱うメーカーになったが、30年以上前までは“いまいち垢抜けない4WDメーカー”という認識が世間一般で大半を占めていた。その頃の主力車種が3代目レオーネ。クーペとセダンに用意されたRXIIはスバル初のターボ+MT+フルタイム4WDモデルで、スポーティグレードかつ競技ベース車両の役割も担っていたのだ。

80年代に入ってアウディがオンロード志向のフルタイム式4WD、クワトロを市販化。それまでの国産4WD車は軒並み悪路走破性の向上を目的としていたため、スバルを含めてパートタイム式が主流だったが、次第にフルタイム式へとシフトしていくことになる。

そんな流れの中、3代目レオーネに3ドアクーペが追加されたのは1985年。これにはグロス135ps(後ネット120psに表記変更)を発揮する1.8Lフラット4ターボ搭載のスポーティモデル、RXがラインナップされたが、悲しいかな、4WDシステムは依然パートタイム式だった。

大方の予想では、すでに4WDメーカーとしての地位を確立してたスバルが国産初のフルタイム4WDを発売する…と思われていたが、実はこの年、すでにマツダが1.6L直4ターボ搭載のBF系ファミリアでそれを実現していて、スバルはまさかの後塵を排することに…。

その汚名挽回(?)とばかりに1986年、ようやく発売されたスバル初のMT+フルタイム4WDモデルが今回取材したレオーネRXII。車両型式はRXのAG5に対してRXIIはAG6。エンジンはRXと同じ1.8Lフラット4ターボが搭載された。

肝心のフルタイム式4WDシステムは、ベベルギヤ式センターデフを持つもの。負圧を利用してロック/フリーの切り替えが可能で、LSD機能やトルク配分機構を持たないシンプルなシステムだった。

また、駆動系では5速MTに加えてHi/Lo2段切り替え式の副変速機を持っていたのも特徴。後ろに倒してHiモード、前に倒すとLoモードになる。Loモードの変速比は1.196で、Hiモードに対して2割ほどローギヤードになる。その右側にあるのがセンターデフのロック/フリーを切り替えるダイヤル式スイッチだ。

80年代はホンダや三菱も用意した、ある意味“流行り”のメカニズムだったが、スバルのそれは悪路走破性を高めるためであり、長くパートタイム式4WDを作り続けてきた名残であると思いたい。

ノッチがあるのに2ドアでなく、大きなリヤゲートを持つ3ドアハッチバック(スバルではクーペと呼んでいる)の直線バッキバキなスタイリングが実に良い眺め。

本来、オンロード志向であるはずのフルタイム4WDを採用してるのに最低地上高が180mmと高いのは、当時スバルの実走テストのひとつと噂された“利根川の土手越え”をクリアするために設定された車高だからだろうか? 一言でいうなら、クーペボディでこの車高は絶対に変だ。

開口部が大きいリヤゲート。巻き取り式の純正トノカバーも装着される。ラゲッジスペースは縦、横、深さともに余裕があって実用的な容量が確保されている。

ホイールは8本スポークのパナスポーツ製。PCDは140と独自のサイズだ。標準タイヤは185/60-14だが、取材車両には185/65-14が装着されていた。

さて、気を取り直して室内をチェック。ダッシュボードは80年代らしく直線基調のデザイン。しかも、メータークラスター両脇に設けられたエアコンやら各種操作スイッチの数々。FC3SやZ32もこんな感じだったと思うが、色気よりも機能性重視みたいな雰囲気を漂わせているところが、いかにもスバルらしい。

メータークラスター右側にはリヤデフォッガー、フォグランプ、ハザードの各スイッチが、左側にはエアコン操作スイッチが設けられる。エアコン温度調整用レバーは動きが渋く、非常に操作しにくい。

メーターはスピード&エンジン回転の他、油圧、水温、電圧、燃料計が並ぶ。中央にはセンターデフの、タコメーター下にはターボ過給の状態を示すインジケーターが。アクセルペダルをグイッと踏み込むと、2500rpm付近からタコメーター下にあるグリーンのターボインジケーターが点灯し、過給の開始をアピールする。

純正オプションと思しきAM/FMチューナー付きカセットデッキ。サイズは2DINっぽいが、幅がDIN規格よりも狭く、80年代のクルマに多く見られた独自のサイズだと思われる。

エアコン吹き出し口からの送風を止めるシャッター操作部。運転席側は上下方向に操作するレバー式。

助手席側は左右に動かすダイヤル式と全く異なる設計。今時のクルマでは見られない凝った作りだ。

センター部がモケット仕上げとなるが、簡素な作りのドアトリム。手巻式ウインドウレギュレーターが懐かしい。

サイドサポートの張り出しが大きめでスポーティな印象の前席。

後席は頭上、足元ともスペースに余裕があって、身長176cmの筆者でも窮屈な思いをせずに座れる。また、背もたれは分割可倒式でラゲッジスペースの拡大が可能。

基本設計は1960年代半ばまで遡るEA82型エンジン。ボアφ92.0×ストローク67.0mmという超ショートストローク型で、バルブ駆動方式に初めてSOHCが採用されたEAシリーズとなる(それまではOHV)。タービンはIHI製RHB5。最大ブースト圧は0.5キロだ。本来、バルクヘッド側にスペアタイヤが搭載されているが、取材車両はリヤラゲッジに移設されていた。

エアフロは時代を感じさせるフラップ式。インテークパイプに設けられた樹脂製の突起は、吸気音の低減などを狙ったレゾネーターだ。

車高だけでなくシートポジションも高い運転席に収まって試乗スタート。車重は1100kg弱だから、まずはタイヤの転がり始めが軽快だ。SOHCで低中速トルク型のエンジン特性だけに、上は5500rpmも回すとパワーの頭打ち感が出てくるが、それでも振動バランスに優れるフラット4エンジンは、レブリミットの6500rpmまでスムーズに吹け上がる。

面白いのは副変速機。Hi固定で通常モード、Loを選んで加速重視…とギヤリングの味付けを変えられるし、あるいは3速のままHi→Loとチェンジすれば、微妙にエンジンブレーキを効かせられたりもする。2本のレバーを駆使して全10速を操る楽しさは、街乗りでも十分に味わえるものだ。

ちなみに、4ドアセダンにもラインナップされたRXIIは3ドアより車重が20kg軽く(1090kg)、ボディ剛性も高く、一説にはピストン&コンロッドのバランス取りが行われECUも進化してた…と言われている。つまり、競技ベース色をより強めたモデルだったわけだ。

■SPECIFICATION
車両型式:AG6
全長×全幅×全高:4370×1660×1405mm
ホイールベース:2465mm
トレッド(F/R):1415/1425mm
車両重量:1110kg
エンジン型式:EA82
エンジン形式:フラット4SOHC+ターボ
ボア×ストローク:φ92.0×67.0mm
排気量:1781cc 圧縮比:7.7:1
最高出力:120ps/5200rpm
最大トルク:18.2kgm/2400rpm
トランスミッション:5速MT
サスペンション形式(F/R):ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ(F/R):ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤサイズ(FR):185/60-14

TEXT&PHOTO:廣嶋健太郎(Kentaro HIROSHIMA)

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