「対アメリカ用の切り札として生まれたモンスターGTO」ピットロードM渾身のオーバー900馬力仕様!

920馬力の咆哮!

販売面ではイマイチだったものの、国産離れしたスタイルとそれに負けない走りで、いまだコアなファンを虜にしつづけているミツビシGTO。その魅力に取り憑かれたチューナー森下さんが、長い年月をかけ産み出したGTO改ドラッグモンスター。その全貌に迫る。(OPTION誌2006年11月より抜粋)

3.1L+T88-38GKがもたらす戦闘能力

アメリカの知人から森下さんのもとへとビデオレターが送られてきたのは、今から半年前のこと。そこに収められていたのは、とある北米のドラッグコースで0-400mを9秒台で走りきるチューンドGTOの姿だった。

「衝撃を受けましたよ。ストックボディのチューンドGTOで10秒の壁を超えてしまったんですから。だってウチのベストタイムは10秒7ですもん。何度も巻き戻して見直しましたよ。スタートからゴールまでをストップウォッチで測ったりもしました」。

軽量化されているもののチューニング内容はストリートの延長線上、しかも、装着されているパーツの大半はピットロードM製。そんなマシンがアッサリと10秒の壁を超えてみせた。森田代表は大きなショックを受けたのと同時に、1人のチューナーとして心に火を付けたことは言うまでもない。

ゼロヨン9秒台を目指した森田代表の新たな挑戦がスタートしたのは、それから間もなくのこと。

かつてセントラルサーキットで10秒7を記録した時のパワーユニット、鍛造ピストンを組んだ6G72に、TD06L2タービンを2機掛けした600ps仕様をアッサリ捨て、イチからエンジン製作に取り組んだのだ。

まず腰下から。ハイブースト前提に、1mmオーバーサイズとなるオリジナルの92φ鍛造ピストンとH断面コンロッドを組み3100ccまでスケールアップ。クランクに関しては「無理に高回転化しなければ純正でも問題ない」という森田代表の判断により、バランス取りした純正品を使用。

次にヘッド周り。オリジナル強化バルブスプリングを組んだ上、IN&EXともに272度のハイカムを合わせているのだが、「6G72はトルク型のエンジンです。無理して8500rpm以上回そうとするとロッカーアームが飛ぶし、コンロッドメタルも根を上げる」とのことから、無理なレブアップは試みず常用8000rpmに設定。燃焼室形状や吸排気ポートにも拘り、中低速トルク型の強靭なエンジンを作り上げた。

そしてタービン。高回転域でのパンチ力とブーストの安定性を求めた結果、ツイン仕様からビッグシングル仕様へとシフトさせることを決意。そこでインマニを逆転させてエンジンルームにタービンスペースを確保し、複雑なEXマニを介してトラスト最大級の風量を誇るT88-38GKをドッキング。EXハウジングには、ブーストの立ち上がりを優先して18cm2を採用している。

インタークーラーはオリジナルの3層ツインタイプ。パイピングは100φだ。さらに3層アルミラジエターや16段オイルクーラー、キャビテーション防止のウォーターポンププーリーなども装着され、大馬力を安定して出力させるように冷却系は徹底強化されている。

そんな珠玉のパッケージをF-CON VプロでDジェトロ化し綿密にマネージメントを行うことで、最大出力は7500rpm時になんと920ps。トルクに至っては93kgmを発生するモンスターユニットが完成した。

トラクション重視のセッティングが施されたダンパーはアラゴスタベースのオリジナルドラッグモデル。スプリングはメルヴェでレートはフロント16kg/mm、リヤ8kg/mmをセットしている。また、リヤにはオリジナルのキャンバーアームが取り付けられ、サスセッティングの幅を拡大しているのもポイントだ。

重量級ボディを受け止めるブレーキ系は大幅に強化され、フロント&リヤともにMFRグレッディブレーキキットを装着している。詳細は、フロントが355mmローターに6ポットキャリパー、リヤは330mmローターに4ポットキャリパーという組み合わせだ。パッドもオリジナルのメタルとなる。

シートは左右ともレカロSP-Gの本革仕様に交換。ダッシュボード中央部にはトラストのブースト/水温/油温/油圧/排気温度/燃圧計が整然と並び、その上に東名のA/F計をセット。また、ダッシュボード右側にはオートメーターが配置されている。

リヤシートは軽量化のためにはずされているが、それ以外の内装トリムはノーマルのままだ。ロールケージはオリジナルのクロモリ5点式。その他のボディ補強としては、フロント&リヤにオリジナルのタワーバーをセットしている程度だ。

エクステリアは中期ベースの後期仕様で、エアロはオリジナルの『M-SPLファルコン』キットをフルで武装。ヘッドライトはエアを導入するためのダクトが設けられている。軽量化にも余念がなくウインドウ類はアクリルに交換され、ドア&リヤゲート&ボンネットはカーボン製を使用している。車重は1500kgまでシェイプされている。

「意地でも9秒台に入れますよ。アメリカに負けたままでは悔しいですからね」。

アタックは今冬から来春を予定している。GTOチューン第一人者としての意地とプライドをかけた戦いが間もなく幕を開けるのだ。

終わりに

ピットロードMの超大作は、取材後もアップデートを続け、最終的にはドラッグレースで9秒8の大記録をマーク。さらに、非公式ながらOPTION誌の企画で320km/hの最高速を叩き出すなど、文字通り世界最高峰のチューンドGTOとして君臨したのである。

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