ジムニーシエラと比べても納得できる価格設定
ジムニーノマドのグレードはFCのみ。LEDヘッドランプやアルミホイールが標準装着されるジムニーシエラのJCに準じる。ジムニーノマドもジムニーシエラと同じく5速MTと4速ATを用意する。選ぶ時の注意点は、ジムニーノマドでは、4速ATの装備が5速MTよりも充実すること。ジムニーノマドの4速ATのみに備わる装備として、クルーズコントロール作動時に先行車との車間距離を自動制御できるアダプティブ機能、後退時ブレーキサポート、後方誤発進抑制機能が加わる。これらの装備を価格に換算すると約10万円だ。
そして4速ATの価格は5速MTよりも9万9000円高いが、ジムニーノマドでは前述の装備が加わるため、ATとMTの価格は実質的に同額だ。選択に迷った時は4速ATを選びたい。特に高速道路を使った長距離移動では、アダプティブクルーズコントロールが疲労を軽減する。安全運転にも結び付くから4速ATの推奨度が高い。
またジムニーノマドの価格は、ジムニーシエラJCよりも56万65000円高いが、AT同士で比べると、前述の装備の違いで実質価格は約46万円に縮まる。さらにジムニーノマドでは、衝突被害軽減ブレーキもデュアルカメラブレーキサポートに上級化され、荷室のランプなども加わるため、ジムニーノマドがボディを拡大した正味価格は40万円前後だ。人気車だから、ブラックの外装色を選ぶと、売却時も一層有利になる。

4速AT仕様の価格は5速MTに比べて9万9000円高い。この価格差はジムニーシエラと同じだが、ジムニーノマドの4速AT仕様には、5速MTには搭載されないクルーズコントロールのアダプティブ機能なども加わる。つまりジムニーノマドの場合、機能や装備と価格のバランスでは、4速ATが買い得なのだ。
見積もりシミュレーション
【FC_4速AT】
車両本体価格 2,750,000円
自動車税種別割(7月登録) 20,300円
環境性能割 67,500円
自動車重量税 36,900円
自賠責保険料 24,190円
リサイクル料金 9,070円
登録諸費用(概算) 50,815円
支払い総額 2,958,775円
【FC_5速MT】
車両本体価格 2,651,000円
自動車税種別割(7月登録) 20,300円
環境性能割 65,000円
自動車重量税 36,900円
自賠責保険料 24,190円
リサイクル料金 9,070円
登録諸費用(概算) 50,815円
支払い総額 2,857,275円
※登録緒費用は販売店によって異なります。 ※オプションや付属品は含まれておりません。
日本の自動車史上で最速の大量受注になり販売活動を停止
ジムニーノマドは25年1月30日に発売され、4日後の2月3日には、「約5万台のご注文をいただいた」という理由で受注を停止させた。ほかの乗用車は、発売日の前に販売店が予約受注を行って受注台数を増やすことが多いが、ジムニーノマドはそれを実施していない。つまり正味4日間で約5万台の注文を受けており、日本の自動車史上で最速の大量受注となった。ジムニーノマドはインド製の輸入車で、1か月の目標販売台数は1200台だ。5万台の納車を終えるまでに3年半を要する。販売活動を続けると、納期が4年、5年と長引くため、慌てて受注を停止させた。
なぜジムニーノマドは、従来型からの乗り替え需要もないのに、正味4日間で約5万台の大量受注を獲得したのか。その理由はジムニーノマドの商品力が高いためだ。今はSUVに人気が集まり、日本で新車として販売される小型/普通乗用車の30〜40%を占める。その多くは北米市場を視野に入れて開発された3ナンバー車で、乗用車のプラットフォームを使っているから、デザインや車両の性格は都会的だ。
都会的なSUVが膨大に増えた結果、最近は数少ない悪路向けの車種が人気を急上昇させた。トヨタランドクルーザーシリーズも、需要に生産が追い付かず、定額制カーリースのKINTOを除くと受注を停止させた。輸入車では、ジープラングラーやメルセデスベンツGクラスが輸入車販売ランキングの上位に入る。これも15年以降の新しい傾向だ。都会的なSUVの車種数と売れ行きが増えるのに従って、悪路向けの車種も注目されるようになった。
しかもジムニーノマドは、悪路向けSUVなのにボディがコンパクトで、Lサイズにありがちな過剰な存在感や威圧感がない。運転のしやすさや価格の割安度も含めて、日本のユーザーに適する。ジムニーノマドが人気を高めるのは当然であった。
ちなみにスズキは、近年の悪路向けSUVが人気を高める市場傾向を把握していた。18年に発売された3ドアボディのジムニーとジムニーシエラも、納期を遅延させたからだ。発売時点におけるジムニーの目標販売台数は、1年間で1万5000台(1か月当たり1250台)、ジムニーシエラは1200台(1か月当たり100台)と少なく、発売直後の納期は1年から1年半に延びた。そこでスズキは増産に踏み切ることで、24年の1か月平均販売台数は、ジムニーが3451台、ジムニーシエラは2154台だ。発売時点の目標販売台数に比べると、ジムニーは2.8倍、ジムニーシエラは22倍に増えた。増産の効果もあり、ジムニーとジムニーシエラの納期は以前に比べて縮まった。販売店では「今なら約6か月で納車できる」という。

ジムニーが納期を延ばした背景には、スズキの目標販売台数の設定方法がある。他社は目標販売台数を多く見積り、実際の売れ行きが目標を下まわることも多いがスズキは逆だ。遠慮深く目標を低く設定している。ジムニーシリーズではそれが裏目に出て納期が遅延してしまった。
ジムニーノマドに話を戻すと、スズキは25年7月から1か月の輸入台数を3300台に増やすと公表した。もっとも、増産は以前から徐々に実施され、6月には国内で約2800台のジムニーノマドが登録されている。既に目標販売台数の2倍以上だ。25年7月中旬に販売店に問い合わせると「ジムニーノマドの受注は今でも停止しており、再開する時期は不明」というが、7月以降の本格的な増産も視野に入れると、26年5月頃には発売直後の受注分をすべて納車できるだろう。そうなると受注の再開は、納車完了のメドが立った26年2月頃だと思われる。
注意したいのはジムニーノマドの受注再開を待つユーザーが多いことだ。その中には販売店と付き合いの長い人もいる。「受注が再開したら、真っ先に注文を入れてくれ」と頼んでいる。販売店では、既に受注再開を待つ行列ができているわけだ。そうなると受注が再開したら、短期間で再び停止する可能性もある。購入を希望するなら、早めに販売店に出向き、受注が再開したら注文を入れてもらえるように頼んでおきたい。その時にはボディカラーも、第一希望から第三希望くらいまで挙げておく。ジムニーノマドの場合、グレードは1種類で、生産ラインで装着するメーカーオプションはないため、注文内容はシンプルで対処しやすい。

自動車誌MOOK『ジムニー ノマド購入ガイド』より




