ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト……345万1800円~(2025年7月3日発売)

レギュラーモデルは2014年に「FXSBブレイクアウト」(234万円~)として初登場。搭載されていたツインカム96B(1584cc)は、2016年に103B(1689cc)へと拡大。最新モデルのシート高は665mmで、これはホンダ・レブル250より25mm低いのだ。
フロント:130/60B21、リヤ:240/40R18というワイドなタイヤサイズは初代から最新モデルまで共通。標準装着タイヤはミシュラン・スコーチャー11だ。
2018年にソフテイルファミリーとダイナファミリーが統合されて以降も、新型フレーム+ミルウォーキーエイト107(1745cc)の組み合わせで継続されたブレイクアウト。2020年に114ci(1868cc)、2023年には117ci(1923cc)と、段階的に排気量を増やしてきた。2025年モデルの車体色は5種類で、写真のミッドナイト・ファイアーストームは+28万6000円となる。仕上げは各色ともクロームトリムのみ。

怒濤の加速フィールに存在意義があり、そこには質感も漂う

ハーレーダビッドソンのラインナップにおいて、唯一のオールドスクールなチョッパースタイルで人気を博しているのが“ブレイクアウト”だ。ガッツリと寝かされたフロントフォークの先には21インチの大径ホイールが付き、リヤにはトヨタ・アルファードも顔負けの240mm幅というワイドなタイヤを装着。シート高はホンダ・レブル250よりも低く、ハンドルは一文字のドラッグバーだ。

このブレイクアウトが属するクルーザーファミリーは、全車がミルウォーキーエイト117(1,923cc)を搭載する。仕様については、最高出力92.3PSのクラシック、104.4PSのカスタム、そして115.6PSのハイアウトプットという3つのバリエーションがあり、ブレイクアウトは中間にあたる“カスタム”を搭載する。同日に試乗したローライダーSTは“ハイアウトプット”であり、それとの違いも気になるところだ。

エンジンはミルウォーキーエイト117カスタム(1923cc空油冷4ストロークOHV4バルブ45°V型2気筒エンジン)で、最高出力は104.4PSを発生。2025年モデルはライディングモードのセレクターが新設され、スポーツ/ロード/レインのそれぞれでエンジン特性とともにABSやトラコンの介入度も変化する。エアクリーナーは、ローライダーSTと同形状のヘビーブリーザーインテークから、新型のツーリングインテークに変更。

まずはエンジンを始動する。およそ2Lもの空油冷45°Vツインのサウンドは、アイドリング時からエネルギー感にあふれており、ライダーのテンションが自然と高揚する。その一方で、歯切れの良いVツインの排気音とは裏腹に、体が揺さぶられるようなバイブレーションがほとんどない。なるほど、これがデュアルカウンターバランサーの効果なのかと感心しきりだ。

クラッチレバーを握り、左足でローにシフトする。ギヤがガチャンと噛み合う感触がシューズのソール越しに伝わり、そこから精度良く切削加工されたトランスミッションの様子が想像できる。国産車と比べると変速操作自体は重々しいが、個人的にはこれもハーレーの味わいだと思っている。

ライディングモードを中間レベルの“ロード”にセットし、いよいよ発進する。ほぼアイドリングの回転域で半クラをつないでも、一切のギクシャク感はなし。燃調が極めて優れている証拠だ。そして、そこから3000rpm付近までの加速感は、ローライダーSTをわずかに上回る。もちろん、ブレイクアウトはカウリングがないので、ダイレクトに風圧を受ける分だけ速度を誤認しやすいという要素もある。だが、燃焼一発ごとの蹴り出し感が明瞭というか、駆け足の歩幅がローライダーSTよりも広いイメージなのだ。

周囲の安全を十分に確認したうえで、スロットルの開け閉めを繰り返す。ズダダダダッという内臓に響く図太いエキゾーストノートと、凄まじいほどの突進力。そこにはある種の快楽が伴い、いつしか頭の中が空っぽになっていた。およそ12年の間にブレイクアウトが排気量を段階的に上げてきた(1584cc→1689cc→1745cc→1868cc→1923cc)背景には、この加速のプレジャーに麻痺してしまったユーザーからの「モアパワー!」の声があったはずだ。

そして、そんな馬力至上主義者たちをさらに満足させるのが、新設されたライディングモードだ。最もパワフルな“スポーツ”モードにしてスロットルを瞬間的に大きく開けると、ハンドルにしがみつくのがやっとというほどの加速力を見せる。それはもうワープと表現できるほどであり、ハマる人が少なくないというのもうなづける。

ローライダーSTですらとてつもなくパワフルだと感じたが、ブレイクアウトに搭載されているミルウォーキーエイト117カスタムは、より低~中回転域での力強さに全振りしている印象だ。同じエンジンであっても、マシンのコンセプトに寄り添うようにキャラクターを作り分けるハーレーの手腕にはただただ脱帽だ

直線番長のイメージを払拭、チョッパースタイルなのによく曲がる

ハンドリングについては、過去の経験から少なからず危惧していた。というのも、筆者にとってハーレーのリヤ240タイヤに良い印象がなかったからだ。初体験は、おそらく2007年に登場したVRSCDXナイトロッドスペシャルだったと思う。低速域ではフロントが強く切れ込む一方で、速度を上げるほど直進性が高まりすぎて曲がらなくなる。それはもう自分のライディングがヘタになったのかと落ち込むほどで、ハーレーに対するネガティブなイメージがやや強まってしまったのだ。

ところがである。最新のブレイクアウトは、最初の交差点を曲がろうとした瞬間に「あっ、コイツは乗りやすいぞ」と思えるほどにハンドリングが扱いやすいのだ。フルバンクに至るまでの反応や手応えは、想像していたよりもはるかにスムーズかつ一定であり、フロント21インチホイールによる操舵の重さは、押し引きしやすいハンドル形状でうまく相殺している。二次旋回中はバンク角をしっかり保とうという力が働き、サスペンションの路面追従性も良好。ホイールベースが長いのと、そもそもバンク角が少なめなので、Uターンのような小回りは苦手である。しかし、“直線番長”などと揶揄されたかつての面影は皆無であり、これなら国産クルーザーから乗り換えても戸惑うことはないはずだ。

油圧プリロード調整機構を持つリヤショックユニットをシート下に配置。ショック自体のストローク量は43mmで、ローライダーSTの56mmよりは短い。

ブレーキは、リヤを主体に使うのが昔ながらのハーレー流であり、ブレイクアウトもその乗り方でまったく問題ない。フロントはシングルディスクだが、レバーを強く握ればかなりのストッピングパワーを発揮してくれるし、コントロール性も高い。最新モデルはコーナリングABSをはじめ、バンク角を考慮したトラクションコントロールやエンジンブレーキマネージメントを採用しており、安心感は非常に高い。

キャスター角は34°とだいぶ寝ており、これがチョッパースタイルの源となっている。ちなみに2013年のCVOと2014年のレギュラーモデルは37°、2015年~2017年は35°だった。ホイールは片面13本ずつ、計26本のスポークで構成されている。フロントブレーキはシングルディスクで、ディスク径はφ300mmだ。

夜遅く、ふと気分転換のために、1~2時間ほどガラ空きの首都高をトリップしたくなるようなライダーにとって、ブレイクアウトは最高の相棒となるはずだ。スタイリングから乗り味まですべてがド直球であり、この見た目に惚れたら買って損はないだろう。

ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)

ステップの位置はフォワードコントロール。2023年モデルでライザーが高くなり、ハンドルバーがコントロールしやすい高さとなった。
シート高は665mm。当然ながら足着き性は優秀であり、ここまで低いと特に旋回中はアスファルトがとても近くに感じられるほどだ。

ディテール解説

マフラーは2in2のオフセットショットガンタイプで、2024年モデルからデザイン的な変更はなし。
ドラッグバーの内部にハーネスを通しているので、コックピットは非常にすっきりとした印象だ。燃料タンクは2023年モデルで13.2Lから現行の18.9Lへと拡大された。
ハンドルクランプに埋め込まれるように存在した液晶メーターは、2025年モデルでロードスターSTと同じ4インチ径のアナログタイプへ。内部の液晶ディスプレイは実に多機能で、数字によるタコメーター表示機能もある。
2025年モデルで一新されたスイッチボックス。クルーズコントロールは2023年から採用している。
座面中央にメタルエンブレムを持つシート。座面が広いうえにウレタンがしっかりしているため、長時間のロングツーリングでもお尻が痛くなりにくそうだ。
リヤウインカーはテール&ブレーキランプ一体型だ。リヤタイヤが240mmと幅広なので、それに伴いボブテールリヤフェンダーも非常にワイドだ。
ステアリングヘッドの左側下方にはUSB-Cポートが設けられている。

ハーレーダビッドソン・ブレイクアウト 主要諸元

【ディメンション】
全長 2,375 mm
幅 940 mm
シート高、非積載時 665 mm
最低地上高 115 mm
レイク 34
トレール 145 mm
ホイールベース 1,695 mm
タイヤ、タイプ Michelin™ Scorcher 11、フロントおよびリヤ
タイヤ、フロント仕様 130/60B21 63H BW
タイヤ、リア仕様 240/40R18 79V BW
燃料容量 18.9 l
オイル容量(フィルターあり) 4.7 l
車両重量 309 kg
ラゲッジ積載容量(容積) 0.056 m3

【エンジン】
エンジン Milwaukee-Eight™ 117カスタム
ボア 103.5 mm
ストローク 114.3 mm
排気量 1,923 cc
圧縮比 10.3:1
フューエルシステム 電子シーケンシャルポートフュエルインジェクション(ESPFI)
エキゾースト 2-2配列、キャタライザー(マフラー)

【パフォーマンス】
エンジントルクテスト方法 EC 134/2014
エンジントルク 168 Nm
エンジントルク(rpm) 3000
馬力 103 HP / 77 kW @ 5020 rpm
リーンアングル、右(度) 26.8
リーンアングル、左(度) 26.8
燃費テスト方法 EU 134/2014
燃費 5.6 l/100 km

【ドライブトレイン】
プライマリードライブ チェーン、ギア比: 34/46
ギア比(全体)1st 9.311
ギア比(全体)2nd 6.454
ギア比(全体)3rd 4.793
ギア比(全体)4th 3.882
ギア比(全体)5th 3.307
ギア比(全体)6th 2.79

【シャシー】
フロントフォーク デュアルベントバルブ49mmテレスコピック式、アルミフォークトリプルクランプ、デュアルレートスプリング
リアショック 隠しフリーピストン式、コイルオーバーモノショック、43 mmストローク、油圧式プレロード調整
ホイール、フロントタイプ グロスブラック、26スポークアルミキャスト
ホイール、リアタイプ グロスブラック、26スポークアルミキャスト
ブレーキ、キャリパータイプ フロント: 4ピストン固定、リア: フローティング2ピストン
ブレーキ、ロータータイプ ブラック、スプリット7スポークフローティングローター(フロント&リア)

【電装】
ライト(各国の規制に準じる)、ヘッドランプ、テール/ストップ/フロントシグナルライト ヘッドランプ: 全てLED、ロービーム、ハイビームとシグネチャーポジションランプ、テール/ストップ: ブレットスタイル、LEDストップ/テール/ターンシグナル、フロントシグナルライト: LEDブレットターンシグナル
ゲージ 102mm(4インチ)アナログスピードメーター。ギア、オドメーター、燃料計、ライドモード、ヒートギア、トラクションコントロール、ABS、TPMS、クルーズコントロール、時計、区間走行距離、航続可能距離、タコメーターをデジタル表示