すべての点において、DIREZZA β06から正常進化したタイヤ

9月6〜7日、静岡県・富士スピードウェイで開催されたGR86/BRZ Cupプロフェッショナルシリーズ第5大会。土曜日の公式予選で、ダンロップの雄でゼッケン1をつける菅波冬悟が、見事ポールポジションを獲得した。タイヤは、今回が最後となるDUNLOP DIREZZA β06である。
昨年のシリーズチャンピオンである菅波は「気候的にダンロップに合っていたのだと思う」と語っており、天候は薄曇りで、気温が30℃を下回っていたことが功を奏してのトップタイム奪取である。次の鈴鹿ラウンドでは、従来品β06から進化した新パターンを採用したβ07が投入される。ドライ路面での操縦安定性とグリップ性能をより向上したダンロップの自信作である。
開発ドライバーを務めるひとりである菅波に、間もなく実戦投入されるDUNLOP DIREZZA β07について聞いた。
「β07はすべての点において正常進化したタイヤ。グリップが上がり、一発のタイムが出せて決勝のロングディスタンスでもタイムが安定している。β06は、ブリヂストンに対してロングランのペースが少し足りなかったので、その部分を開発した。具体的には、菅生の最終コーナー、岡山のアトウッドコーナーの立ち上がりでも力強いグリップを発揮してくれるタイヤに仕上がった」
タイヤ開発は、菅波とともに、服部尚貴、小河諒の3人で手分けして、役割分担しながらやってきた。
「例えば、服部さんが1番、ボクが2番、そして小河くんが3番のタイヤをテストして、路面温度の状況などが違っていても評価できるようなローテーションを行って評価してきた。基本的には服部尚貴さんが先導して、ボクと小河くんのコメントをダンロップに要約して伝えて進める流れだった」と菅波は説明してくれた。
トップカテゴリーで培った、最先端の技術を盛り込んだ
DIREZZA β07の開発責任者を務めたのは、住友ゴム工業 モータースポーツ部 モータースポーツ開発グループの堀口俊樹氏。堀口氏は、昨年からGR86/BRZ Cupを担当し、クラブマンとプロフェッショナルのタイヤを開発しており、開発者の視点で新作のβ07について聞いた。
「2024年の第4戦からクラブマン用DIREZZA ZⅢ CUPの仕様変更を行いました。どちらも量産の市販タイヤではありますが、開発のアプローチはまったく異なります。クラブマン用は市販のスポーツラジアルに近いものになっていますが、プロフェッショナル用は、スリックタイヤの性能や内部構造などスーパーGTなどのトップカテゴリーで培った最先端の技術を盛り込んだタイヤになっています。GR86/BRZ Cupのタイヤ開発は、市販タイヤとトップカテゴリーのレースの技術を結ぶ、タイヤメーカーにとっては重要なカテゴリーなのです」

「タイヤの開発は、まず試作を作り、社内でマシンに取り付けて台上テストを経てから実走試験となります。そして実走テストはOTG(大阪トヨペットグループ)との契約で、3人のドライバーからフィードバックしてもらいます。コンディションやサーキットの特性によって評価が分かれることもありますが、β06を基準にした評価をしてもらい、全員からOKが出たら前へ進める開発を進めていきました」
そして、満を持してGR86/BRZ Cupシリーズ第6戦の鈴鹿ラウンドに投入されるDIREZZA β07は、β06と同様に左右非対称、非方向性の左右供用パターンが採用されている。
「β06とβ07は似たパターンなので、バッと見ると気づかないかも知れませんが、2本のタテ溝の幅を微調整しています。昨年のβ06投入から1年半ほど経ち、一年強の開発期間を経てβ07のデビュー戦を迎えます。ロングランで有利になるように、なるべく内部が疲労しないような構造にチューニングしており、パターン形状の最適化については、偏摩耗の抑制とウェット走行時の排水性を改善しています。手応えを感じており、第6戦の鈴鹿がとても楽しみです」
「シリーズチャンピオン獲得へ向けて大きな一手」

もうひとりの開発ドライバーである小河諒は、予選終了後「β06を履く最後のレースで1-2-3を獲りたい」と語っていた。
「現行のβ06は、とても良いコンセプトでデキの良いタイヤ。1年以上実戦で活躍してきたなかで、ブリヂストンは2〜3回のマイナーチェンジをしてきた。第5戦の富士でポールポジションが獲れたのが、その証拠で、本当に優秀だと思う。β07の開発テーマはβ06を超えること。予選の速さはそのままで、決勝のロングでのペースを落とさないこと。結果、正常進化してとても良いタイヤに仕上がった」

さらに、タイヤ開発のまとめ役を務める服部尚貴に聞いた。
「β07を開発するなかで、すべてがβ06を上回るように心がけてきた。ダンロップの開発陣も本気で、みんなで完璧なものを求めてきた。つまり、すべてのドライバーにとってタイムが出せる確実に進化したタイヤとなっているので、みんなにオススメできる。鈴鹿は新作のデビューレースなので、やっぱり勝ちたい。自分が開発に携わってきたので、デビューウィンを決めてほしい。それまで少しお待ちください!」
さて、第5大会・富士スピードウェイの決勝レースの結果は、ダンロップ開発ドライバーのなかで最上位を獲得したのは、小河の5位だった。ポールポジションからスタートした菅波は、序盤のトップ争い中のレーシングアクシデントにより、無念のリタイアに終わった。
ダンロップタイヤ装着車は、優勝こそ逃したものの、2、4、5位(青木孝行、清水英志郎、小河)を獲得し、トップ5を3人のダンロップユーザーが占めた。
最後に、菅波の力強いコメントを紹介してレポートを締めくくりたい。
「次戦の鈴鹿では“一発が速いダンロップ”が維持されたまま決勝でも強くなって、ダンロップユーザー全体が上がってくれれば、シリーズチャンピオン獲得へ向けて大きな一手になると思います」
とにもかくにも、DUNLOP DIREZZA β07のデビュー戦に期待したいところだ。



