エンジンは限定車の激レアRB26をスワップ!

前期テール+ワイドボディが醸すレア感

純白のワイドボディが美しいこのZ31は、かつて奈良県で営業していた「オートファクトリー ガレージB」のデモカー的な存在だった。ワゴンRなど軽自動車のカスタムを得意としたショップだったが、社長が若い頃から憧れていたZ31を理想の姿に仕上げるため、7年前の製作時点でも入手困難だった当時モノのパーツをかき集めて完成させた1台だ。

自宅に揃えた機材でオールペンからエンジンの載せ替えまで「自分でできる所は自力で!」が信条の菅原さん(左)。その自力が及ばない範囲をサポートしてくれる「鈴木オート」社長の鈴木さんもZ31乗りであり、かつて菅原さんのお兄さんと同じVIPセダンのチームメイトだった。お揃いのアイローネゲートの裏の“フェアベティZ”は、鈴木さんがエアブラシで描いている。

現在このZを託されたのは弟の菅原葉月さん。兄の影響でZ31への思い入れも強く、兄から車両を譲り受けた際には、ガレージBで2台目のZ31を製作する計画も進んでいた。ゆくゆくは兄弟揃って完成度の高いZ31を並べるはずだったが、その夢は兄の突然の死によって途絶えてしまう。

「兄の想いを継ぎ、完成するはずだったもう1台のイメージも背負う」。そんな気持ちを胸に、葉月さんは少しずつ自分の理想を盛り込みながら、このZ31を進化させてきた。

大きな変更点は、移動時の不便を解消するためのフロントリップ短縮加工と、社外アイローネゲートへの換装。かつて試したエアロボンネットは歪みが酷く純正に戻したというが、昭和末期の外装パーツが絶版&劣化だらけという現状を考えれば無理もない判断だ。

ベース車両は後期型2シーターワイドボディのTバールーフだが、リヤビューは前期型そのもの。「前期のワイドボディは86年式の北米仕様だけ。このカタチが好きなので!」と、バックパネルごとテール周りを前期型から移植したミックススタイルなのだ。そのテール中央には“260ZR”という見慣れないロゴがある。これはRB26載せ替えを意味するオーナーの遊び心だった。

心臓部は、189台しか生産されなかったR32スカイラインの4ドア「オーテックバージョン」専用のRB26DEを移植。Z31本来の200ZRグレードがRB20DETを搭載していたこともあり、この換装はZ31らしい正統なエンジンスワップと言える。

冷却系は、VG用のサイドタンクと組み合わせたワンオフラジエターと30プリウス純正の電動ファン、さらにフロント側に押し込み用の電動ファンを1基追加して強化済みだ。

ミッションはRB20用5速MTを採用。オイルパンは取り付け位置がスカイラインと異なるため、Z31にRB26を流用する際にはJHKプロジェクトの大容量オイルパンを使うのが定番とのこと。フロントパイプはワンオフしている。

内雄は、MOMOステアリングや当時モノのトラストシフトノブ、特注したフロアマットなどでシンプルに構成。「これでイベ車と呼ぶには内装が純正すぎる」と謙遜するが、昭和車とは思えない極上コンディションを見事に維持している。

シートはレカロSP-Gで、ガレージBオリジナルの本革張り替えメニューを実施。シートベルトやボディ同色塗装のロールバーなど、内装とエンジンルームはテーマカラーのホワイト×レッドにコーディネートしている。

ホイールはOZ・ペガソのリバレル(F10J&R11J)。フロントブレーキはR32オーテックバージョンから流用したものだ。車高調はシルクロードベースのガレージBオリジナル仕様。リヤのロワアームは後期型より短い前期型純正を使って、ハブを内側にオフセットする事で、純正フェンダーのまま11Jホイールを収めている。

「Z31そのものが珍しいので、“オジさんホイホイ”なんです」とオーナーは笑う。街に停めているだけでも、当時を知る年配の走り屋たちが懐かしそうに声を掛けてくるという。

細部にまでこだわったこの1台は、兄弟の思い出だけでなく、80年代を駆け抜けたZ31世代の記憶までも呼び覚ます存在なのだ。

⚫︎取材協力:鈴木オート 岩手県紫波郡矢巾町南矢幅煙山11-10 TEL:019-618-0987

「懐かしさと最新が交差する!」ネオクラZ31の極限ストリート仕様だ!!