Ferrari 849 Testarossa

イタリア語で「赤いヘッド」

フェラーリ・ジャパン 代表取締役社長ドナート・ロマニエッロ氏(右)とイタリア・マラネッロより来日したプロダクト マーケティング マネージャーであるマルコ・スペッソット氏。

7月の「アマルフィ」ジャパンプレミアに続き、フェラーリラインナップの頂点に立つ新型フラッグシップモデル「フェラーリ 849 テスタロッサ」が、早くも日本で発表された。「SF90 ストラダーレ」の後継モデルにあたるプラグインハイブリッドスーパースポーツに、今回フェラーリは「テスタロッサ(Testa Rossa)」という車名を与えた。

日本では1984年のパリサロンでデビューしたV12ミドシップロードカー「テスタロッサ」が有名だが、初めて車名に使用されたのは、1956年の「500TR」に遡る。イタリア語で「赤いヘッド」を意味し、赤はフェラーリ屈指の高性能レース用エンジンのカムカバーの色を表する。

プラグインハイブリッドシステムは、4.0リッターV型8気筒ツインターボをリヤミッドに搭載し、3基の電気モーターを組み合わせるのはSF90同様だが、エンジンで830PS、3モーターで220PSの出力が与えられ、最高出力は50PSアップの1050PSに達する。サーキット志向の「SF90 XX ストラダーレ」では1030PS(エンジン797PSとモーター233PS)だったがそれを20PS上回る。モーターはフロントに2基、リヤに1基配置され、駆動方式はAWDとなる。

モータースポーツから受け継がれた技術

F154FC型4.0リッターV8ツインターボ。
F154FC型4.0リッターV8ツインターボ。

インターナショナル・エンジン・オブ・ザ・イヤー受賞経験を持つエンジンファミリーに属するF154FC型4.0リッターV8ツインターボは、全面的にリファインされ、エンジン単体で50PSアップの最高出力830PSを発揮する。排気量は変わらないが、シリンダーヘッド、エンジンブロック、エキゾーストマニホールド、吸気プレナム、チタン製ポルト、バルブトレインシステム、燃料レールを刷新したという。

昨年発表されたスペチアーレ「F80」から大型ターボチャージャーを、レーシングカーの「296 GT3」から熱管理などの技術が受け継がれている。コンプレッサーホイールとタービンは素材と空力の面で最適化され、ターボラグは最小化されており、エンジンのレスポンスはシャープさを維持しているという。

ABS Evo コントローラーを導入

V8エンジンと3基の電気モーターが組み合わせられたハイブリッドシステムは、SF90のPHEVアーキテクチャーを採用。モーター2基はフロントアクスルに搭載され、「RAC-e(電子制御コーナリング・セットアップ・レギュレーター)」システムを構成。コーナー出口で最大のトラクションと効率性を発揮する。こうしたフロントモーターを駆使したトルクベクタリングによって、あらゆる路面状況で最大のパフォーマンスを確保していることはSF90で証明済みだ。

限界域におけるドライバーへのフィードバック、優れたドライビングダイナミクスを強化するため、最新世代のブレーキバイワイヤーシステムに加えて「ABS Evo コントローラー」が導入された。これによりあらゆる路面状況においてブレーキングの精度と安定性が向上したという。

重量配分最適化を求めてシャシー中央に配置されたリチウムイオンバッテリーの電力量はSF90と同様の7.45kWhで、EV走行可能距離もSF90と同じく25kmとなっている。近年、PHEVスーパースポーツのバッテリー性能はまちまちだが、電力量と重量そしてEV走行可能距離との兼ね合いでフェラーリは先代同様の仕様を選んだ。なおブレーキング時の回生制御も改善され、ベダルフィールが向上し、スムーズで効果的なべダルストロークを実現したという。

航空機と1970年代のスポーツプロトタイプに由来

デザインを担当したのは、もちろんフラヴィオ・マンゾーニ率いるフェラーリ・スタイリング・センター。エクステリアは12チリンドリ以来の最新デザイン言語を感じさせ、垂直方向と水平方向のラインが作り出すフォルムは、航空機と1970年代のスポーツプロトタイプに由来するという。

フロントセクションは、1980年代のフェラーリを思わせるフォルム。パンパー下部はボディカラーのフリックとブラックのスプリッターで引き締められ、テクノロジーとエアロダイナミクスを重視した849 テスタロッサの個性を強調する。

ツインテールと可動式リヤウィングが組み込まれたリヤセクションは、512Sをオマージュ。センター部にはアイコニックな丸型テールバイプを配置する。

デジタルとアナログが融合した室内

インテリアは、アマルフィと同じくディアルコクピットデザインで、水平なダッシュボードを備えるベルリネッタレイアウト。これはシングルシーターコクピットの要素も含んでいるという。ダッシュボード上面は浮遊している印象を与え、アルミニウム製フレームにコの字形エアベントがレイアウトされる。

ダッシュボード上面と下面の間にはメイン操作系とパッセンジャー用スクリーンが組み込まれた。ダッシュボード下部は船舶の帆をモチーフにしたデザインが施され、F80同様のシフトゲートが浮遊するように配置されている。

ステアリングホイールは、デジタルとアナログ機能が融合。アイコニックなエンジンスタートボタンを含め、F80から物理スイッチ類を引き継ぐ一方、新採用のデジタルクラスターを介して、Eマネッティーノと呼ばれるハイブリッドモードを素早く変更できるという。

アセット フィオラーノながらフロントリフターを装備

今回もサーキット志向のオプションであるアセット フィオラノ(Assetto Fiorano)が用意される。フロントセクションは、大型化されたフリックを装着。フロントアンダーボディにはボルテックス・ジェネレーターが1組追加され、特にサーキット走行時に完璧な空力バランスが確保されるという。

リヤセクションにはツインテールが、ツインウィングに置き換わる。仰角の大きなスポイラーは、左右に垂直のエンドプレートを装備。ツインウイングによりドラッグが増加することなく、垂直方向のダウンフォースがツインテールの3倍に増加するという。

足まわりはより硬めのシングルレート・マルチマティック・ショックアブゾーバーを採用することで、スプリングは35%軽量化、ロール率は10%も低くなった。また、フロントリフターの装備も可能で、アセット フィオラノ仕様としては初採用となる。

デリバリーはベルリネッタが2026年第2四半期から、スパイダーが2026年第3四半期から行われ、日本市場にはそれぞれ半年ほど遅れて届くという。

車両本体価格

849 テスタロッサ 6465万円
849 テスタロッサ スパイダー 7027万円
+アセット フィオラノ 602万7000円(予価)

Specifications

フェラーリ 849 テスタロッサ

ボディサイズ=全長4718 全幅2304 全高1225mm
ホイールベース=2650mm
車両重量=1570kg(Dry)
タイヤサイズ=265/35R20(前)、325/30R20(後)
エンジン形式=V型8気筒ツインターボ
排気量=3990cc
エンジン最高出力=830PS/7500rpm
エンジン最大トルク=842Nm/6500rpm
モーター最高出力=220PS
システム最高出力=1050PS
EV走行可能距離=25km
トランスミッション=8速DCT
駆動方式=AWD
最高速度=330km/h
0-100km/h加速=2.3秒
0-200km/h加速=6.35秒
100-0km/h=28.5m
200-0km/h=108.0m
フィオラノ ラップタイム=1分17秒500

新型プラグインハイブリッドスーパースポーツ「フェラーリ 849 テスタロッサ」のエクステリア。

最高出力1050馬力のV8ハイブリッドを搭載「フェラーリ849テスタロッサ」がワールドプレミア【動画】

2025年9月9日、フェラーリは、新型フラッグシップ・プラグインハイブリッドスーパースポーツ「849 テスタロッサ」とオープントップ仕様「849 テスタロッサ スパイダー」をワールドプレミアした。4.0リッターV型8気筒ツインターボに電気モーターを組み合わせたハイブリッドパワートレインは、最高出力1050PSを発揮する。