V7 Sport……1,595,000円

モトグッツイのV7 スポーツが新しくなった。エンジンのパワーが少しアップして細部が改良を加えられたのである。変更点は多くないけれど実際に乗ってみたらビックリ。力強くなったエンジンによって走りの楽しさが数段上がっていたのだ。

古くからの伝統を大事にしたマシン


V7スポーツはファンの多いバイクである。レトロモダンなスタイルと伝統を受け継いだ縦置きツインエンジンを搭載。取り立ててスポーティというわけではないけれど実用域での走りが気持ち良い。


今回の変更で目立つのは新たに倒立フォークが採用されたこと。しかし変更は多岐にわたっている。空冷縦置きV型ツインエンジンはエアボックスの容量をアップしてバルブタイミングを変更。ピストンのクーリングシステムの改良などによってパワーを4%向上させたうえでEuro 5+ 規制に対応した。


スロットルにマルチマップ・ライド・バイ・ワイヤを採用するとともにクルーズコントロールも標準装備された。パワーモードではレイン、ロードに加えてv7スポーツのみスポーツモードを追加。6 軸慣性IMUによる高精度なトラクション コントロールとコーナリング ABS を備えている。

数値以上に元気になったエンジン


最初にV7スポーツが新しくなったと聞いて期待したのはV85TTと同じ可変バルブ機構のエンジンを積んだのではないかということだった。V85TTは低中速から力強くて高回転の回りかたも元気。ストリートで使うには理想的な特性とVツインの鼓動感を併せ持っていた。あのエンジンが搭載されたら相当面白くなるだろうと思っていたのである。

ところが今回のエンジンは可変バルブなし。スペックでは馬力が4%上がっただけだ。これだとあまり変化はないのではないかと思ったのだが、実際に走らせてみたら予想を遥かに上回る元気さだった。

以前はパワーに対してフライホイールマスが重めでマッタリとした感じだったが、パワーが上がったことでバランスが取れた感じだ。加速でもどかしく感じることはなく、高回転の回りかたもずいぶん気持ちよくなった。キビキビ加速するから乗っていてとても面白い。そして縦置きVツインの

メチャクチャにパワーがあるわけではないのだが、ストリートだとこの特性とパワーがちょうどいいのではないかと思う。スロットルを開ければドコドコとVツインのビートを響かせて力強く加速するのだけれど、速度の上がり方が激しくないから、スピード違反など気にすることなくVツインの鼓動感を楽しむことができる。なんのストレスもなくピックツインの楽しさを堪能することができるのだ。可変バルブ機構がなくても十分に楽しいエンジン特性になっていたことに感動したのだった。

3500rpmで 最大トルクの95%を発揮するエンジンは、低回転のトルクも明らかに太くなった。アイドリングからスロットルを開けず、クラッチをゆっくり離すと回転が落ちるものの、エンジンは止まらずに車体を震わせながら走り出すくらいの粘り強さもある。そこから2000rpmまでを使って加速していくとツインの鼓動感がとても良い感じで伝わってくる。爆発力が強くなったために縦置きVツインの鼓動感も強く感じるのである。

モードセレクターにスポーツモードが追加されたので走行中に変えてみたけれど、ストリートで普通に走ってる限りはあまり大きな変化は感じなかった。スポーツモードにすると若干レスポンスが元気になるというレベルだった。

スポーツライディングが楽しい


ワインディングを走ってみるとハンドリングが素晴らしく良くなっていた。安定感があるけれど素直で不安なくバンクさせていくことができる。フロントフォークの変更が一番の要因だろう。更にパワーが増えたことでリアタイヤにトラクションを与えられるようになったことも大きいはずだ。
以前のモデルでは車体の挙動変化が大きく、ペースを上げて走ることが難しかったが、新型はまったく暴れることがない。撮影終了後もずっと走り続けてしまったほど楽しかったのである。

ワインディングで気がついたのはスロットルの開けはじめで若干ドンつき気味(突然パワーが出る)にレスポンスすること。若干荒っぽさを感じる味付けなのだけれど、大きなフライホイールマスが細かなショックを吸収してしまうので、逆にリニアにレスポンスしてくれる印象さえある。

新しいV7スポーツで素晴らしいのは、伝統的な縦置きVツインの楽しさを一つも失わずに進化していることである。スポーツの名に恥じないモデルになっていると思う。

ポジション&足つき(身長178cm 体重76kg)

ステップが前気味でハンドルが低いからテスターの体格だと窮屈な感じがする。ストリートやツーリングメインならハンドルを上げたいし、スポーティーな感じを大事にするならステップを後にしたいところだ。


シートが柔らかくてお尻が沈み込むので、足つきは悪くない。ただ足をついた時にステップがふくらはぎに当たるのが気になる。

ディテール解説

フロントブレーキはブレンボ製 4 ピストン モノブロックキャリパーとΦ320mm フローティングディスクをダブルで装着する。

 

フロントフォークは倒立になった。インナーチューブ径はφ41mm。

 

エンジンは90度Vツイン縦置きOHVのスモールブロック。モトグッツイ伝統のエンジンレイアウトである。カムチェーンなどが必要ないので駆動ロスが少なく、ヘッド周辺を軽量コンパクトにすることができる。

 

853㏄の2気筒エンジンは最高出力 67.3 HP/ 6900 rpm、最大トルク 79 Nm/ 4400 rpm を発揮。3,500 rpm で 95% のトルクを発生させる。

 

Euro 5+の環境規制をクリア。Vツインの心地よい鼓動感と排気音は失われていない。

 

リアサスペンションはツインショック。プリロードのみ調整が可能。

 

座り心地の良いシート。スウェード調のレザーが使用されている。

 

シートはワンタッチで取り外しが可能。バッテリーなどの電装品が収められている。

 

丸型のテールランプと小型のウインカーはLEDが採用されている。

 

ヘッドライトはLED.DLR(デイタイムランニングライト)にするとモトグッチイーグルのシルエットが浮かび上がる。

 

ハンドルは低めのコンチハン。ミラーはバーエンドタイプで後方の視認性が高い。

 

LCDデジタルメーターパネルには、速度、回転数、距離、燃料、ギアポジション、ライディング モードなどの主要なデータが表示される。

 

左スイッチボックスはウインカーとライトの切り替え、ホーン、モード切り替えボタンを配置。ボタンを長押しするとクルーズコントロールが起動される。

 

倒立フォークはイニシャルの調整のみ可能だ。
ライド・バイ・ワイヤ スロットルを採用。6 軸慣性IMUが路面に対するオートバイの姿勢を検出。コーナリング ABS およびコーナリングトラクションコントロールを制御する。

 

 

V7 SPORT主要諸元

エンジン:空冷4ストローク90°V 2気筒 OHV 2バルブ

総排気量:853 cc

ボア × ストローク:84 mm × 77 mm

最高出力:67.3 HP (49.5 kW ) / 6,900 rpm

最大トルク:79 Nm / 4,400 rpm

燃料供給方式:電子制御燃料噴射システム

始動方式:セルフ式

トランスミッション:6速リターン

クラッチ:乾式単板

フレーム:高張力鋼管ダブルクレードル

フロント サスペンション:Φ41 mm倒立フォーク スプリングプリロード調整式

リア サスペンション:ダイキャストアルミ製スイングアーム 油圧式ツインショックアブソーバー, スプリングプリロード調整式

フロントブレーキ:Φ320mm フローティングダブルディスク, Brembo4ピストンモノブロックラジアルマウントキャリパー コーナリングABS

リアブレーキ260 mm径ステンレスディスク フローティング2ピストンキャリパー コーナリングABS

フロントタイヤ:100 / 90-18″ 軽量アルミキャストホイール

リアタイヤ:150 / 70-17″ 軽量アルミキャストホイール

全長 / 全幅:2,165 mm / 1,100 mm

シート高:780 mm

ホイールベース:1,450 mm

燃料タンク容量:21 L

乾燥重量:200 Kg

車両重量:220 Kg ※走行可能状態 (燃料は90%搭載時)

主要装備:DRL付きフルLEDヘッドライト, LEDウィンカー, コーナリングABS, トラクションコントロール,クルーズコントロール, 3ライディングモード, 燃料ゲージ