スズキ車オンリー!手作り感あふれるバイクミーティング

2025年10月5日(日)、静岡県にある「バイカーズパラダイス南箱根」を会場に、今回で6回目を数える『SUZUKIZUKI MEETING2025』が開催された。これは2023年に『Bandit琵琶湖Meeting』の主催者でもある24ok@(西岡)さんのほか、紅茶さん、RDノロノロさんの3人を中心にボランティアスタッフによって運営されるスズキ車オンリーの手作り感あふれるファンミーティングだ。

『SUZUKIZUKI MEETING2025』の会場となった「バイカーズパラダイス南箱根」には260台が集まった。そのほとんどがスズキ車である。

スズキ車のイベントというとGSXシリーズやカタナ、隼、Vストロームなどの車種限定のものが盛んだ。だが、そのような単一車種のイベントが開催できるほど成功した製品がある一方、残念ながら商業的な成功には至らずマイナーな存在に終わった車種も少なくなく存在する。

エヴァンゲリオンカラーのVストローム650。

スズキといえば、斬新なアイデアによるユニークな商品企画、他社に先駆けて最先端技術を導入する進取果敢な気風、故・鈴木修会長が発したとされる「ウチは安っぽいんじゃない、安いんだ!」の言葉の通り、見た目の質感や装備を若干犠牲にしてまでリーズナブルな価格設定にこだわるユーザーフレンドリーなメーカーとしても知られている。

ハーフカウルを備えたバンディット1200Sとネイキッドのバンディット1200。

言い方を変えれば、スズキはプロダクト・アウト的な製品作りと製品内容に対してリーズナブルな価格が魅力の「エッジの立ったメーカー」とも言えるわけで、多くのヒット作を生み出してきた反面、開発コンセプトが時代を先取りしすぎてユーザーの理解を得られなかったり、市場を読み違えてしまうことが往々にあった(あるいは読む気が毛頭なかったのか……)。

ロー&ロングの個性的なスタイルで話題となったジェンマ250。ビッグスクーターブームの終焉近くに登場したため商業的にはそこまで成功しなかったが、デザインの評価は高く、現在でも熱烈なファンの多い車種。

もちろん、そうした製品は静かにフェードアウトして行くのだが、そのような商業的な失敗作でもファンの心にしっかりと爪痕を残し、その存在を記憶に焼き付けてくれるところが、スズキ車のスズキ車たる所以なのだろう。

斯く言う筆者も4大国産バイクメーカーの中で、スズキが一番好きだ。これまで乗り継いだバイクの中でもっとも多いのがスズキ車だったし、現在もGN125Hと先日納車されたばかりのVストローム250SXを所有している。

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筆者のVストローム250SX購入記。

260台が集結! ただ集まってまったりと休日を過ごす……それが楽しい

スズキ車を愛してやまない主催者の24ok@さんたちは、幅広いユーザーから支持を受けているヒットモデルだけでなく、不遇な生涯を辿ったマイナーモデルまで、すべてのスズキ車オーナーたちが1カ所に集まって楽しめるミーティングを企画し、『SUZUKIZUKI MEETING』として実現。2023年4月に第1回を開催した。

レーシングマシンのようにカナードを装着したGSX-250R。
スクリーンカウルとカナードを装着したことで純正色ながらノーマルとは一線を画したスタイルとなった。
テールカウルにもスタビライザーが備わる。モンスターエナジーのステッカーがワンポイントとなっていた。

当初150台のエントリーで始まったこのミーティングは、前回は300台を超えるまで成長した。今回はミーティング当日の朝、天気はどんよりとした曇り空で、雨が心配されたことから(結局、終日雨は降らなかったが)、エントリー車は少し減って260台ほどとなった。もちろん、そのほとんどがスズキ製のバイクである。

このミーティングの特色はゲストを招いてのステージイベント、コンクール・デレガンスのような催し物やアワードが開催されないことだ。ただ、スズキを愛するライダーが集まって、各々の愛車を眺めながら、まったりと交流を楽しむ。11時の開場から14時の終了までいつ来てもいいし、いつ帰っても構わない。同じ車種に乗る人同士で親交を深めても良いし、他車種のオーナーと交流しても良い。また、珍しいバイクや好きなバイクを見物すべく会場を散策するのも自由だ。誰かに楽しみ方を与えてくれるのではなく、参加者が自分たちで自己流の楽しみ方で休日を過ごす。それこそがこのミーティングの醍醐味なのだろう。

「サベージ」が5台もエントリーするのはこのミーティングだけ!?

ミーティング当日、筆者は愛車のVストローム250SXで会場を訪れると、開場時間からさほど時をおかずしての入場にもかかわらず、早くも多数のバイクが集まっていた。

台数的に多いのは、GSX-S/Rや8R、隼、Vストロームシリーズなどの現行車種、カタナやバンディット、ガンマなどの人気モデルだ。そのどれもにオーナーのこだわりと個性が反映されており、同じ車種でも1台として同じ仕様はない。ほぼノーマルのVストローム250SXに乗る筆者にとっては、先輩オーナーから実際に話を聞き、カスタマイズされた同型車を実際に目にした経験は、今後の愛車との付き合い方を考える上でおおいに参考となった。

しかし、SUZUKIZUKI MEETINGの魅力はそうした現行モデルや人気モデルばかりではない。数少ないオールジャンル参加可能なスズキ車ミーティングということで滅多にお目に掛かることがない希少で珍しい車種との出会いも楽しみのひとつとなっている。

そんなレアなバイクの中でも、とくに筆者の目を引いたのがサベージだ。このバイクは1986年に発表されたクルーザーである。ユニークなのはその心臓部で、「クルーザーの魅力は鼓動感にある。ならばVツインである必要はなく、大排気量の単気筒こそが理想的なパワーユニットだ!」とのことで、650/400ccのバーチカル単気筒エンジンを搭載した。

この日、希少なサベージがミーティングに参加していた。アメリカ市場では現行モデルだが、日本では2年ほどで販売を終了したレアなシングルクルーザー。なお、あとから遅れて1台が参加したので、この日集まったサベージ は合計で6台となった。

こんな奇抜なコンセプトとあって、一般ユーザーには理解するのが難しかったようで、日本国内では3年ほどで生産を終了したが、アメリカでは初心者や女性、高齢者から「扱いやすいクルーザー」として一定の支持を集めており、現在でもブルバードS40の名前で販売が継続されている。

しかも、そのような滅多にお目にかかれないサベージが、なんと5台もエントリーしているのだ。令和の日本でこれだけの台数が一堂に介する機会はそうそうないだろう。

サベージの心臓部は650ccまたは400ccのバーチカル単気筒エンジンだ。400cc版のエンジンは、のちにテンプターに流用されたが、こちらも販売は苦戦し、現在は希少車となる。

このバイクは単気筒ということもあってコンパクトにまとまっており、やや寸詰まりなスタイルに見えてしまうものの、前の世代(1970年代後半~1980年代前半)のいわゆる「ジャメリカン(ジャパニーズ・アメリカン=日本メーカー製アメリカンバイク)」とは一線を隠しており、けっしてカッコ悪いバイクではない。足つき性も良好なようで、クルーザーとしてはコンパクトな車体ということもあって、体格的な問題で大型バイクを諦めている人は候補に挙げても良いと思う(程度の良い中古車が見つかればの話だが……)。

こちらも現在では滅多に見ることがないGSX550L。輸出市場を重視してGSX550Eをベースにしたいわゆる”ジャメリカン”だ。六角断面のパイプフレームを採用し、ベース車よりも軽量な車体に高回転型エンジンを採用したことで、見た目に比べてスポーティなマシンだ。

オーナーに話を訊くと、アメリカでは現行モデルということで古いモデルであってもほぼすべてのパーツが現在でも入手できるそうだ。このバイクを運転した経験はないのだが、個人的に好きなバイクなので独断と偏見で文字数を割いて紹介させてもらった。

レア車ザクザク!まるで動く「スズキ歴史館」

会場には他にも珍しいスズキ車が多数集まっていた。その一例を挙げると、その名の通り冗談で出したつもりがライバルメーカーが大人気なく本気の高性能マシンを出してしまった結果、命脈を断たれてしまった原付クラスのフルカウルレプリカのギャグ。
ヴィンセント・ブラックプリンスやヴェロセット・ヴォーグなどの往年の英国車を手本としたと思しきレトロなフルカバードバイクのSW-1。

レトロスタイルが魅力のフルカバードバイクのSW-1。日産製パイクカーを手掛けたウォータースタジオとのコラボで生まれた製品で、シーソー式ペダルや豊富な収納、ベルトドライブなど街乗りの快適性に重きを置いて開発された。

250ccクラスで唯一のメットイン機能を備えたフルカウルツアラーのアクロス。
「東京の若者のライフスタイル」をイメージし、ハンス・ムートが手掛けた怪作のGSX400Xインパルス。

「東京タワー」の異名を持つGSX400Xインパルス。「東京の若者のライフスタイル」に東京タワーや鳥居をモチーフにハンス・ムートが手がけたネイキッドバイク。奇抜なデザイン故に色物扱いされることがあるが、最高出力や最大トルクもGSX-Rと同じ59psと3.8kg-mを叩き出す。
GSX-R250から派生したアクロスは、一般的な燃料タンクの位置を収納スペースとして、メットインを実現したスポーツツアラー。その後、ホンダがNS-1やNCシリーズで採用して商業的に成功するが、先駆者であるアクロスは市場の理解はそこまで得られとなかった。

1980年代の耐久レースマシンのレプリカをなぜか2002年に登場させ、スズキ伝統の油冷ユニット、高めのハンドル、何よりデカイトップカウルで武装し、「男のバイク」のキャッチフレーズで販売したGS1200SSなどなど、スズキらしい個性が炸裂したマシンがずらりと並ぶ。

GS1200SS。ヘッドライトの間のエンブレムに注目。

おもしろいのは万人受けしなくても、これらのバイクには熱狂的なファンがついていることだ。生産数の少なさからこれらのバイクの現存台数も極めて少ないはずなのだが、どのマシンもピカピカに磨き上げられ、整備の行き届いたそれらのバイクを見ると、希少車となった愛車を末長く大切に維持していきたいという気持ちがヒシヒシと伝わってくる。

2002年式GSX-R1000をベースにヨシムラの技術が惜しみなく注がれた究極のロードゴーイングスポーツ「トルネードS-1」。生産台数は50台で、新車価格は378万円で限定販売された。

そして、自己主張の強さは時を経てもまったく変わっておらず、「俗物どもにはオレの価値など理解できん。理解できるのは選ばれた勇者だけだ!」と、まるでバイクが語りかけてくるような雰囲気さえある。今となっては部品の入手も難しく、維持するのにも苦労が絶えないのだろうが、ぜひともオーナーのみなさんにはぜひとも現在のコンディションを維持していただき、またスズキ好きの来場者の目を楽しませてほしい。

誕生から40年以上が経過した現在でもRG250ガンマは根強い人気を持つ。今回のミーティングには珍しいHB(ハーベー)カラーのエントリーもあった。

なお、次回の『SUZUKIZUKI MEETING』は2026年春の開催予定。参加希望の人は公式X(旧Twitter )で主催者の24ok@さんをフォローしよう。ミーティングの日程が近くなるとTwiPlaでイベント告知と参加方法が紹介されるはずだ。
なお、このミーティング自体は参加無料となるが、会場のバイカーズパラダイスの「ゲートコスト」が500円/1名必要となる(22歳以下は無料)。

まだまだいるぞ!レアな参加車両

最後の国産2ストロークトレイルバイクのTS185ER。輸出仕様車で数年前まで新車で購入することができた。
モトチャンプ 2020年7月号

創刊40周年の思い出を辿るHistory of Monkey

https://www.as-books.jp/books/info.php?no=MCP20200605
『月刊モトチャンプ』2020年7月号では巻頭特集でTS185ERをピックアップ。
1971~1977年にかけて生産された「ウォーターバッファロー」の愛称を持つGT750。水冷2ストローク3気筒のエンジンを搭載する。様々なスズキ車が集まる『SUZUKIZUKI MEETING2025』だったが、1970年台の旧車のエントリーは珍しい。
1990年代末頃に流行した国産ビッグVツインスポーツのスズキの回答がTL1000S。
SV650。スズキのVツインスポーツは意外と息が長く、前述のTL1000Sから始まり、1998年にリリースされたSVシリーズはモデルチェンジを重ね、現行モデルもラインナップされる。
スーパーモレは珍しい2ストロークビジネススクーター。
ジェベル250(手前)とバンバン200。
バンディット250生産終了後に空いた250ccクラスのラインナップを埋めるべく販売されたカワサキ・バリオス2のOEM車・GSX250FX。逆にカワサキはスズキ・スカイウェイブ250をエプシロン250としてラインナップし、自社に無いスクーターを補完した。

『SUZUKIZUKI MEETING2025秋』フォトギャラリー

今回ピックアップした『SUZUKIZUKI MEETING2025秋』参加車両と会場の様子を一気に見る。