夫婦で愛でるフルチューンのエボ
理想を求めて完成した第三形態!
モータースポーツ全盛期といえる1990年代、FIA公認レースに参戦するためのホモロゲーションモデルが次々と登場した。その代表格が、三菱がWRC参戦用に生み出したランサーエボリューションシリーズだ。1992年に誕生した初代から、インプレッサと並んで一時代を築き、多くの熱狂的ファンを生み出していった。

そんなランエボの中でも、第二世代に位置するエボVをこよなく愛するのがオーナーの横沢さんだ。
「子どもが小さい間は、部活の送迎などもあったのでワンボックスに乗っていました。子どもたちが手を離れたタイミングで、本当に欲しかったクルマに乗ろうと考え、ランエボの中でも最も好きだったエボVを探して手に入れました」。
横沢さんが約10年前に手に入れたエボVは、当初はブーストアップ程度の軽いチューンで街乗りを楽しむだけだった。しかし、パワーに慣れてくると、さらなる走りの強さを求めるようになる。そこでチューニングを依頼したのが岩手県の“ステイ整備センター”だ。ステイとは、購入時に販売店では修理できなかった不調を解決してもらったことをきっかけに付き合いが始まったという。横沢さんはその技術力に惚れ込み、以後、愛車の主治医として任せるようになった。

次のステップを相談したところ、エボⅨのピストンを流用したエンジン強化が提案された。しばらくはこの仕様で走りつつ、さらにパワーへの欲求が高まると、HKSのGTIIタービンによるさらなるパワーアップへと進化させた。しかし、この仕様は加速感こそ強烈だったものの、奥さんにとっては乗りにくくなってしまったため、再び仕様変更が行われることになる。

こうして完成した第三形態が、2.3L+ボルグワーグナー製EFR7064タービンの組み合わせで、制御系をLINK G4+に刷新した現在の姿だ。
「排気量を上げたことでタービンに頼らずとも低速トルクから力強さが生まれ、妻も乗りやすくなって大満足です。同時にタービンサイズも大きくしたので、気合を入れれば上までパワーが伸びます。GT-Rに負けないクルマを目指していたので、今の仕様はまさに理想ですね」と横沢さん。


タービンキットはGCG製の4G63用を使用しているが、本来はエアコンレス仕様向けのため、エアコン付きでも取り付けられるように改良済み。特にウエストゲート周りのレイアウトは大幅に変更され、実質的にワンオフに近い取り付けとなっている。

ステイがワンオフしたマフラーは定番の砲弾型。輪切りのパイプを美しく溶接でつなぎあわせる、いわゆる“エビ管”によって曲げが構築されている。

足元はアドバンレーシングTCⅢをセット。スポーツカーらしい5本スポークは、オーソドックスなデザインながらもスタイリングをまとめる最良のアイテムなのだ。エンジンパワーを引き上げたことで、安全性を担保するためブレーキも強化。D2のフロント6ポット&リヤ4ポットという組み合わせだ。


奥さんも安全に乗れるよう、ロールケージでキャビンスペースはしっかりと保護。追加メーターなども見やすさを優先して配置。コラム上にはA/F計を設置、その隣にはグレッディのプロフェックe-01を並べ、ブースト圧など必要情報をモニタリング。


フロントバンパーはGPスポーツ製に変更。前置きのインタークーラーはHPI製をチョイスし、フロントのダクトの有効面積をうまく活用している。フロントのワイドフェンダーもGPスポーツ製だ。

ボンネットダクトの純正ネット部が製廃になっていたため、補修を兼ねてボンネットをカーボン製に変更している。

ルーフ上のボーテックジェネレーターは、カーボンボンネットの素材感に合わせてカーボン製をセット。純正ウイングの塗り分けも統一感を高めている。

ステップアップを重ねるうちに、横沢さん以上に奥さんの由美子さんがこのエボⅤを気に入り、通勤や買い物など日常的に乗るようになったという。チューニングカー趣味に否定的になられるよりも、夫婦で一緒に楽しめる環境が整ったことは、長く乗り続けたい横沢さんにとって大きな喜びだ。パワーと乗りやすさを両立したこのエボⅤは、夫婦二人の意見を反映して作り上げた、まさに究極の一台なのである。
●取材協力:ステイ自動車整備センター 岩手県八幡平市大更2-2663 TEL:0195-76-4044
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