新世代アドベンチャーの幕開け

KTMは2026年モデルとして、「1390 SUPER ADVENTURE S」「S EVO」「R」の3機種を欧州で発表した。11月から欧州ディーラーで順次販売が開始されるこの新シリーズは、圧倒的なパフォーマンス、先進電子制御、そしてツーリング性能を兼ね備えたフラッグシップとして誕生した。

心臓部には、排気量を従来の1301ccから1350ccへ拡大した新世代LC8 Vツインを搭載。最高出力173 PS/9500 rpm、最大トルク145 Nm/8000 rpmを発揮する。この新エンジンには、可変バルブタイミング機構「CAMSHIFT™」が採用され、2種類の吸気カムプロファイルが回転域に応じて作動。高回転では鋭いパワーを、低回転では滑らかなトルクを発揮し、都市走行から長距離ツーリングまで自在にこなす。

また、メンテナンス性の改善も進み、バルブクリアランス点検は従来の3万kmから6万kmに延長された。信頼性と耐久性に加え、整備性も格段に高まった点が注目に値する。

剛性を磨き上げたフレームと新設計の快適装備

車体構成も刷新され、フレーム剛性が見直されることで高速安定性と操縦性を両立。ペダル位置は従来より8mm低く、10mmワイドとなり、長時間ライディング時の快適性が向上した。

さらに外装デザインも一新され、流麗なカウルラインと新型LEDヘッドライト、改良されたウインドスクリーン、容量を増した収納スペースなど、細部まで徹底的に磨かれている。新しい8インチ縦型TFTタッチディスプレイ「V80」は、25万6000色表示・反射防止・耐指紋コーティングを採用し、厚手グローブ装着時でも確実な操作を可能とする。

最新のライディングモードやナビゲーション機能を統合し、ハンドルスイッチでも直感的に制御できるようになった。KTMが培ってきた電子制御技術がさらに洗練され、アドベンチャーマシンとしての完成度を高めている。

三つの個性 ― S、S EVO、R

1390 SUPER ADVENTURE S EVOはシリーズの頂点に立つ旗艦モデルで、KTM初となる自動変速機構「AMT(Automated Manual Transmission)」を採用。手動変速と自動変速を自在に切り替えられ、右手一本でLC8の力強い鼓動を操ることができる。

サスペンションはWP製セミアクティブシステムの最新型「SAT」を搭載し、前方レーダーセンサーによる第5世代Bosch製アダプティブクルーズコントロール(ACC)も標準装備。ブレーキアシスト、衝突警告、距離警告、そしてStop & Go機能まで備えた、ツーリング性能の頂点を極める一台だ。

1390 SUPER ADVENTURE Sは、クラッチとトランスミッションを従来のマニュアル方式で維持しつつも、最新のWP SAT サスペンションとPWMセンサーによる精密な減衰制御を採用。ストリートユースを重視した設計ながら、オフロードでも高い安定性を発揮する。レーダーACCはオプション設定で、街乗りとツーリングのバランスを重視するライダーに最適な選択肢となる。

一方の1390 SUPER ADVENTURE Rは、本格派オフローダーとしての血統を誇るモデル。短いスクリーンや強化クラッシュバーを装備し、WP XPLOR 48 mmフォークとPDS式リアショックを組み合わせることで、過酷な地形にも対応する。専用のホワイト×オレンジ×ブルーのカラースキームが冒険心をかき立てる。

プレミアム装備を備えた新型旗艦

KTM 1390 SUPER ADVENTUREシリーズは、技術革新と走行性能の融合を象徴する存在だ。すべてのモデルに最新の電子制御パッケージを備え、快適装備も抜かりない。SおよびRは2025年11月から、S EVOは同年12月より欧州販売が開始される。

これら3モデルは、KTMの「READY TO RACE」哲学を頂点で体現するアドベンチャーの決定版といえる。あらゆる地形と距離を征服するための“王の帰還”――それが1390 SUPER ADVENTUREである。

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