





メーター読み約250キロからのフルブレーキングでの安心感。リヤタイヤが浮きそうなほどハードにかけているのに、車体はピタリと安定している。ウィングレットは時速250キロで約15キロほどのダウンフォースが得られ、また、リアタイヤ付近に取り付けられたエアロパーツはブレーキング時の浮き上がりやスネーキング等を抑制するという。
その恩恵なのかはハッキリとはわからないものの、高速域からのブレーキングへの移行がスムーズだし、マシンはしっかりと安定している。
徐々にブレーキをリリースしながら狙ったラインにマシンをのせていく。ミシュラン製スリックタイヤに履き替えられたRC Rは路面にピタッと張り付くような接地感をみせる。モトGPライダーを真似ていつもよりもちょっと身体を大きくイン側に落としてみても不安感はなく、そのままスロットルを開けていってもリヤタイヤがどこかにいってしまうような感触はない。さらにペースをあげていくと、立ち上がりではウネウネとスライドを始めるほどパワーも絞り出している。トラクションコントロールはほぼ最弱に設定しているが不安はなく、その制御の仕方もすこぶる滑らかで安心してサーキットを攻めていくことが出来る。
初めて走るチャレンジングなセビリアサーキットに対しての不安感はまだまだ残っているものの、マシンに対する信頼感は走り始めから非常に高い。
KTMの発表会はいつだって刺激的だ。
今回は朝から30分のセッションを7本と走らせる気満々だ。セッションが進むにつれてコースにも慣れ、そのぶんブレーキングもハードになり、コーナーリングスピードも上がっていく。1人につき1台をあてがわれたマシンをメカニックと相談しながらセッションの合間にセッティングを変更していく。前後のWP製サスペンションは幅広い調整機構を備えているし、スロットルに対するエンジンのレスポンス具合やトラコン、ウィリーコントロール等、細かいリクエストに応えてくれる。まさにレディトゥレース!

初日からこの調子であれば、普通に納得するだけであったと思われる。MotoGPマシン譲りのレーシーなスタイリングから、サーキット走行に関しては高いパフォーマンスを持っているだろうと想像出来るであろう。しかし、実は前日は公道走行を一日行い、その汎用性をたっぷり味わってからのこの走りであるから、なんだか狐につままれたかのような不思議な感覚に陥ったのである。

初日の公道での走行を振り返ってみる。
990DUKEをベースとしたエンジンは、マッピングを変更して出力が向上。130馬力を絞り出している。いや、絞り出すといった表現には語弊
があり、ツインエンジンならではともいえるトルクを伴いながら、パワフルにマシンを前に進めていく。例えば並列4気筒のミドルクラスのマシンと比較すれば明らかにトルクフルで、開けていった際のヒステリックな吹け上がり感もないから馴染みやすい。また、リッタークラスのマシンのように、明らかに手に余るといったパワー特性でもない。
ミッションの設定がストリートでの走行をしっかり考慮したものとなっているのも走りやすさにつながっている。1速や2速がロング過ぎることがないため、ストップ&コ゚ーの多いシチュエーションでももたつくこともストレスを感じることもなかった。また、オートシフターのレスポンスの良さもサーキットのみならず恩恵をうけるフィーリングであった。
スリックタイヤを装着して、相当ハイペースで走らせた際にも車体の安定性は損なわれず、非常に高いバランスを持っていると感じさせた。いっぽうで、一般道で走らせた際にもフレンドリーな印象を崩さなかったのである。
ワインディングでの走行はもちろん、市街地における走りもカバーする守備範囲の広いキャラクターがRCRには備わっていたのだ。
また、デザイン性高い8.8インチのTFTディスプレイはタッチパネル機構も搭載し、欧州ではナビ機能も内蔵。日本では言語等の問題によりナビ
機能は使えないとのことだが、そういった機能を盛り込んでいることからも、スポーツ走行だけを考えて作られたものではないということがわかる。
来年2月にはサーキット専用となるTRACKバージョンも発売されるという。こちらも幅広い層に向けてのマシンとなるようで、趣味で走らせるようなライダーをも排除しないキャラクターにされるという。テスト日には元MotoGPライダーで現在はKTMのテストライダーを務めているジョナス・フォルガー選手が同マシンのテストを行っていたが、セビリアサーキットのコースレコードを更新したとのことだったので、その潜在能力の高さも疑いの余地はない。
限定販売ではなく、どこのディーラーでも買えるようなマシンとし(国内は未定)補修パーツ等も手頃な価格にするとのことである。
ちょっと前まで、そんなことをしている場合ではなかったであろうKTMであるが、レディトゥレースのDNAはブレることなく息づいていた。
マシンからはもちろん、携わる人々からもひしひしと感じることが出来たのは収穫で、急遽スペインに向かった価値があったと感じられたのであった。
ディテール解説









