YZR-M1がV4化へ MotoGP方針転換の理由

ヤマハは長年、直列4気筒エンジンをMotoGPの主力として採用してきた。直列4気筒は俊敏性とスムーズなパワーデリバリーを特徴とし、バレンティーノ・ロッシ、ホルヘ・ロレンソ、ファビオ・クアルタラロらの活躍を支えてきた。
直列4気筒による参戦は429戦、優勝125回、表彰台352回、ライダータイトル8回、チームタイトル7回、コンストラクターズタイトル5回という実績を残している。

しかしMotoGPの技術要求は年々変化し、加速性能、ブレーキング時の車体挙動、最新タイヤや空力への適応など、より高いパフォーマンスが求められている。ヤマハは自社の思想を保ちながらも、この要件に対応するため2026年からV4レイアウトの採用を決定した。

2025年の開発とV4導入の狙い

ヤマハは2025年シーズンを通じてV4の集中的な開発を進めてきた。テストとワイルドカード参戦により、V4の加速性能、車体挙動、パッケージ全体としての優位性を確認したという。
新レイアウトは車体設計やエアロダイナミクスの最適化にも寄与し、2027年のレギュレーション変更に対して有利に働くとされる。

2025年最終戦バレンシアGPをもって直列4気筒の実戦投入は終了。11月18日のバレンシアテストではヤマハのMotoGPライダー全員がV4搭載マシンを走行し、新時代の始まりを迎える。

開発責任者コメント

鷲見崇宏(ヤマハ発動機MS統括部MS開発部長)

鷲見氏は直列4気筒が数十年にわたりヤマハの技術思想の中心にあったことを強調した。精密さとコントロール性で多くの勝利を築いた歴史を評価しつつ、MotoGPが進化を続ける以上、技術面での適応が不可欠だと述べている。
V4は挑戦とレーシングDNAを体現する次章の象徴であり、目的はライダーに最高のマシンを提供し、世界のファンへ感動を届けることであると語った。

マッシモ・バルトリーニ(Yamaha Factory Racing MotoGPテクニカル・ディレクター)

バルトリーニ氏はV4採用が容易な決断ではなかったと説明した。加速からコーナリング挙動まで全要素を分析した結果、V4がアドバンテージを生むと判断したという。
2025年シーズンのワイルドカード参戦により、その有効性を確認。V4はまだ開発初期段階にあり、今後さらなる進化を経て2026年に最大性能の発揮を目指す。レイアウト転換は戦略上も重要であり、2027年の規則変更に対し設計面で優位になると述べている。

新時代のYZR-M1が目指す方向

今回のV4化はヤマハにとって構造的な技術革新であり、加速、ハンドリング、空力統合といったMotoGPの主要要素に直結する。
直列4気筒で築いた歴史を終え、新しいパワートレインと共にトップ争いへの復帰を目指すシーズンが2026年から始まる。