4輪免許があれば大型バイクも運転できた

ご存じの通り、令和の今、バイクに乗るには、排気量などにより、主に以下7区分のいずれかの運転免許が必要となっている。

・大型二輪免許(400cc超)
・AT限定大型二輪免許(400cc超のAT車)
・普通二輪免許(400cc以下)
・AT限定普通二輪免許(400cc以下のAT車)
・小型限定普通二輪免許(125cc以下)
・AT小型限定普通二輪免許(125cc以下のAT車)
・原付免許(50cc以下及び125cc以下の新基準原付)

これらのなかで、原付免許を除く6区分のバイク免許は、クルマを運転するための普通免許などとは別に取得が必要なのも当然ご存じだろう。ところが、こうした決まりは、今からちょうど60年前となる1965年の法改正によるもの。それ以前は、クルマの免許を取得すれば、排気量に関係なくどのようなバイクにも乗ることができたのだ。

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1965年より前は、クルマの免許を取得すれば、排気量に関係なくどのようなバイクにも乗ることができた

つまり、現在の原付免許のように、大型バイクも含めた全排気量のバイク免許は、4輪免許の「おまけ」として付いてきた時代があったのだ。たまに、80歳前後のシニアドライバーで、「オレはナナハンだって運転できる」などと自慢する人もいるが、その背景にはこうしたことがあったのだ。

ちなみに、免許区分が今のような形となり、大型二輪免許が教習所で取得できるようになったのは1995年から。それ以前、筆者がバイクに乗り始めた1980年代頃には、400cc以上の大型バイクに乗るためには、中型限定二輪免許などの下位免許を取得後、別に限定解除審査を受ける必要があった。いわゆる「限定解除」と呼ばれた自動二輪免許だ。しかも、その試験は警察の運転免許試験場でしか受けられなかったし、超難関だった。なかには、10回以上受験しても合格しなかった人もいたほどだ。そのため、排気量無制限のバイク免許が、4輪免許のおまけで付いてきた世代の人たちは、当時、我々世代から相当うらやましがられた存在だったのだ。

80年代半ばまで原付はノーヘルでもOKだった

今では、バイクに乗る際にヘルメットを着用することは当然のことになっている。安全のために必須であることはもちろん、法律でも義務付けられていて、もしノーヘル(ヘルメット未着用)で走行すると「乗車用ヘルメット着用義務違反」となる。

【乗車用ヘルメット着用義務違反の罰則】
反則点数:1点
反則金:なし

ところが、昭和には、ライダーがバイクに乗る際に、ヘルメット着用を義務付けられていない時代もあった。最初に法律で規定されたのは1965年だが、そのときは対象は高速道路のみで、罰則なしの努力義務。その後、1970年代に段階を踏んで徐々に規制が強化され、罰則なども設けられていった。主な流れは以下の通りだ。

【ヘルメット着用義務化の流れ】
・1965年:高速道路でのヘルメット義務化(罰則なし)
・1972年:最高速度規制が40kmを超える道路でのヘルメット義務化(罰則なし)
・1975年:政令指定道路区間で、51cc以上のバイクのヘルメット義務化(罰則あり)
・1978年:すべての道路で51cc以上のバイクのヘルメット義務化(罰則あり)
・1986年:すべてのバイク(原付含む)・すべての道路でヘルメット義務化(罰則あり)

このように、すべてのバイク、すべての道路でヘルメット着用が義務化されたのが1986年。とくに、1965年生まれの筆者の場合、記憶にあるのが、1980年代初頭の高校生時代です。当時は、バイクブームだったこともあり、筆者を含めた多くの高校生が、16歳になると原付免許を取得し50ccバイクに乗った。そして、その時代は当然のようにノーヘルで走行したものだ。

今考えると、転倒や事故などで重大な怪我や命を落とすこともあったかもしれず、怖くなけれど、当時は違反じゃなかったし、原付を運転するのにヘルメットを被る習慣もあまりなかった。

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筆者が高校生だった1980年代初頭頃は原付バイクはヘルメット未着用でも違反ではなかった

現在では、ヘルメットの装着はもちろん、プロテクターなどの装着も推奨されているほか、2輪用エアバッグなども登場。ライダーの安全に関する意識や装備も進化しているが、それは昭和の時代にバイク事故を抑止しようと、法律はもちろん、ライダーたちの意識の改革も行われたからだといえるだろう。

ウインカーがなくてもOKな時代もあった

昭和の時代には、1960年代後半頃まで、ウインカー(方向指示器)が標準装備されていないバイクも存在した。これは、当時、ウインカーは右折や左折といった方向指示を行う基本的手段として認識されておらず、手信号で合図するのが一般的だったためだ。

手信号とは、たとえば、左折時は右腕を外側に出して肘を垂直に上へ曲げる、または左腕を外側にまっすぐ伸ばすといった合図だ。また、右折は、右腕を車の右側外に出して水平にまっすぐ伸ばすか、左腕を外側に出し肘を垂直に上へ曲げるといった感じになる。

今でも、教習所などでは、ウインカーが故障した場合などに使うように習うと思うが、ウインカーの装備が不要だった時代のライダーたちは、それらの合図を普通のこととして行っていたようだ。

そのため、昭和初期に作られた古い車種などには、ウインカーが標準装備されていないモデルもあったのだ。ところが、1960年代後半頃から、道路交通の安全基準も厳しくなっていったこともあり、バイクにウインカーが搭載されるようになったのだ。

1969年以前に生産された車種であれば、今でもウインカーがなくても車検に通る場合があるようだが、基本的には、1970年前後を境にウインカーが標準装備として広く採用されていったようだ。

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昭和の時代は、ウインカー(方向指示器)が標準装備されていないバイクも存在した

ともあれ、バイクにまつわるルールなどは、昭和の時代から進化し、今につながっているといえる。それらは、より安全で快適なバイクライフを送るために必須だった変化といえるだろう。今回紹介したヘルメット着用やウインカー標準装備などは、現在では当たり前となったものばかりだが、それらを守ることの重要性を再認識し、より安全運転を行うよう気をつけたいものだ。