全身に漲る無限スピリッツ!「MUGEN RC20GT」の全容

歴史に残る究極の1台とするために機能性と品質に一切の妥協を許さない

ホンダワークスの“無限”が、東京オートサロン2019で発表したシビックタイプRベースのチューンドモデル「MUGEN RC20GT Package Pre Production」。車名に添えられたプレ・プロダクションモデルというサブネームからも分かるように、市販化前提で進められた超大型プロジェクトである。

角度調整式のウイングエレメントを持つオリジナルのリヤウイングは独特な形状だが、これは無限のレーシングテクノロジーが導き出した空力優先のデザインに他ならない。
ボンネットのフロントガラス寄りに配置されたダクトは一見するとエンジンルームの熱を抜くためのものに見えるが、実は逆で、ここからフレッシュエアをエンジンルーム内に引き込んでいる。

開発は無限のレースチームを率いてきた安井氏を始め、本物のレースエンジニア達が担当。最新のCFDを駆使した流体解析により理想的なダウンフォースが得られるようデザインされ、素材は全て軽量なドライカーボンが与えられていた。

エンジンは排気量をそのままにフルバランス取りやクリアランス調整を実施。さらにドライカーボン製のエアクリーナーボックスやフルチタンマフラーにより吸・排気効率をアップすることでレスポンスを向上させると同時に軽量化を果たしている。
サスペンションはZF社製の2ウェイアジャストダンパーをセットし、ブレーキは前後にブレンボ製6ポット鍛造モノブロックキャリパーを投入。それに伴いローターサイズを380Φに拡大するなどコーナリングやブレーキング性能の向上が図られている。

その他、フルバランス取されたパワーユニットやZF製の特注2WAYダンパー、専用のインテリアパーツ等々…、チューニングの内容を聞けば聞くほど“究極のFK8”を作り出そうという無限の熱意がヒシヒシと感じられるものだった。

しかし! 2020年7月4日に、無限から「MUGEN RC20GTパッケージ」の市販化を中止するというプレスリリースが突如として発表された。原因はコストだ。スーパーGT車両と同じ設備・製法を用いて製造する方向で開発を進めていたところ、当初の予定を遥かに超えるコストと量産性の低さが判明。現実的なパッケージとしての販売は不可能と判断したのである。

無限は昔から「やりすぎ」なところがあり、同社から市販されているチューニングパーツにはどれも開発陣の恐ろしいまでの拘りと執念が込められている。取材すると、本当に話が終わらないほどなのだ。RC20GTの市販化断念は、そうした無限の“やりすぎ”が悪い方向に出てしまった結果だったのだろう。

とはいえ、この“全力投球感”こそが無限の真骨頂であり、多くのエンドユーザーから愛され続ける理由の一つであることは言うまでもない。いつかまた、RC20GTのような夢のあるコンプリートチューンドを…と期待せずにはいられない。

●取材協力:M-TEC

「もう完全に戦隊マシンでしょ!」無限が放ったS2000の禁断コンセプトが異次元すぎる・・・

その雰囲気はさながらフォーミュラマシンか、それとも前時代のオールドレーシングカーか。現代のスポーツカーをベースにこのスタイルを作り上げた例は恐らく存在しないだろう。いつも『やりすぎ』な無限が手がけた、S2000ベースの魔改造コンセプトカーである。(OPTION誌2000年4月号)

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