「e-4ORCE」がもたらす上質な走り!快適性アップもそのひとつ

2025年9月のマイナーチェンジで、NISMOやAUTECHといった2つのスポーティバージョンを揃えたエクストレイル。さらに”タフギア”感を強めた新グレード「ROCK CREEK」を新設定するなど幅広いバリエーションを展開しているが、やはり基本となるのは標準系。その最上級グレードである「G e-4ORCE」から乗ってみることにした。




あらためてエクストレイルのメカニズム的な特徴を整理しよう。基本は「e-POWER」と呼ばれるシリーズ式ハイブリッドシステム。技術の日産を象徴するテクノロジーとしておなじみだ。発電を担うエンジンは、世界初の可変圧縮比エンジンである「VCターボ」。駆動方式はFFと4WDを設定するが、注目したいのは4WDで、こちらは前後モーターを緻密に制御する「e-4ORCE」が採用されている。

前後独立モーターを活かした駆動力制御と聞くと、日産GT-Rの伝統的メカニズムである「アテーサE-TS」のようなハンドリングと安定性を両立したシステムを想像するかもしれないが、ことエクストレイルのe-4ORCEについては、それだけがベネフィットではない。駆動力のバランスによってピッチング(車体前後方向の揺れ)を抑える制御が組み込まれている。

それを実感できるのが、高速道路を使ったツーリングだ。
G e-4ORCEは非常にマイルドなサスペンション設定となっているが、制御によってピッチングをコントロールしていることもあり、車体がグラグラとする感覚はない。もちろん、物理的にはサスペンションはストロークするが、駆動力コントロールによって、そのうごきを滑らかにしている印象だ。
今回の試乗では、東京から成田方面や箱根へ向かう機会があった。
高速道路の一部に120km/h区間があるので、その速度まで高めてみたが、いい意味で速度感が希薄で、80km/h走行時と変わらない感覚だった。それはe-4ORCEによる駆動力制御のおかげだろうし、エンジンノイズがキャビンに入ってこない遮音性など、優れた静粛性も効いているのだろう。さらにe-4ORCEは直進安定性にも寄与する制御となっているため、安心感は抜群だ。
かすかにタイヤノイズだけが耳に入ってくるキャビンは、まるでEVに乗っているようだ。
筆者はかねてより「日産e-POWERはもっともEVに近いハイブリッドシステム」という持論を唱えているのだが、高速道路を走っているときのエクストレイルは、まさしくEVテイストの乗り味(静粛性)を感じさせてくれた。そこにe-4ORCEのピッチング制御による乗り心地の良さが加わるのだから、快適性において非常に高いレベルであるのは、ある意味で必然なのである。
そのおかげもあって、一日で300kmを走行しても疲労感は皆無。しかも12.3インチ大画面のセンターディスプレイには「17.6km/L」という実燃費が表示されていた。これはカタログ値である18.1km/L(WLTCモード)に対して達成率97%というレベル。期待通りの経済性も合わせ持っていることが、あわせて確認できた。

市街地から林道まで、どこでも引き立つ上質なスタイリング

前述したように、2025年9月のマイナーチェンジにより、エクストレイルはタフギア感を高めたスタイリングに進化している。わかりやすいポイントは、フロントグリルやホイールアーチガーニッシュなどをグロスブラックで仕立てたこと。メッキを廃し、サテンシルバーのアクセントとすることで上質さも感じさせる顔立ちとなっているのも新しいエクストレイルの特徴だ。
SUV的なキャラクターを強めつつ、深みのある黒が都市の景観ともマッチするスタイリングといえる。

今回、日産のお膝元である横浜みなとみらいエリアで市街地を味わったほか、箱根方面に足を延ばし、林道的なシチュエーションも味わってみたが、どちらの景色の中でもエクストレイルは違和感なく、ナチュラルに溶け込んでいる。






悪路で役立つインビジブルフードビュー

林道を訪れたときには、路面の岩や枝を避けて走らなければいけないシチュエーションもあった。そこで役立ったのが、マイナーチェンジで新設定された「インビジブルフードビュー」機能だ。
これはフロントカメラの画像をメモリーしておき、あたかもエンジンフードを透過して見えるような表示をする機能。悪路では非常に役立ち、安心感につながった。また、駐車場のようなシーンでも役立つことは確認できた。
そのほか車両全体を上から見たりする表示、目では見えないほどワイドな画像で左右を確認できる表示など運転支援が充実しているのも日々のカーライフでは役立つことだろう。




なにより試乗したG e-4ORCEグレードには、高性能な駐車支援機能「プロパイロットパーキング」が標準装備されている。ボタンひとつで起動するプロパイロットパーキングを活用すれば、駐車場でまごつくこともなくなるだろうし、なによりストレス軽減になる。
カメラ機能や駐車支援機能について、食わず嫌いならぬ「使わず嫌い」となっているユーザーがいるかもしれないが、エクストレイルのこうした機能については積極的に活用してほしいと思うし、使うことで愛車への信頼感が醸成されること請け合いだ。


Google搭載ナビと進化したコネクテッド機能、毎日の運転をより快適に

新型エクストレイルのマイナーチェンジで商品力を大きく引き上げている装備のひとつが、日産車で国内初採用となるGoogle搭載の「NissanConnect インフォテインメントシステム」である。
中核となるナビゲーションにはGoogleマップが採用され、スマートフォンと同様に地図の拡大やスクロールを直感的に行える操作性を実現した。ルート案内の分かりやすさや検索精度の高さは言うまでもなく、目的地周辺の状況を視覚的に把握しやすい点も大きなメリットだ。

加えて、音声操作に対応したGoogleアシスタントを搭載することで、ステアリングの音声コントロールボタンを押せば、目的地検索はもちろん、シートヒーターやエアコンなどをオン/オフ、オーディオを切り替えたりといった各種機能の操作を音声で行うことが可能となっている。運転中でも視線や手を大きく動かすことなく操作できるため、安全性と利便性の両立という点でも評価できるポイントである。さらにGoogle Playストアがインストールされており、音楽やエンターテインメント、生活をサポートするアプリなどを車内に追加できる点も、従来の車載システムにはない魅力といえる。




また、このナビシステムは車両側の情報と連動することで、トンネルや地下駐車場など電波の届かない環境でもナビゲーションを継続できる。スマートフォン単体ではカバーしきれない場面でも安定してルート案内が使える点は、車載インフォテインメントならではの強みだ。ワイヤレスApple CarPlayやワイヤレスAndroid Autoにも対応し、NissanConnectサービスや車内Wi-Fiも利用可能となっている。こうした多彩な接続性と拡張性により、エクストレイルは移動中の時間そのものを快適で価値あるものへと変える存在へ進化したといえる。

高級感と機能性を併せもつ、まさしく上質を実感できるキャビン

こうして、様々なシチュエーションでエクストレイルを味わっていると、試乗したG e-4ORCEグレードにオプション装着された「ナッパレザー」が、上質な乗り味を視覚的にサポートしていることにも気づかされる。
チェストブラウンのシートやインパネ加飾に、ミドルクラスSUVとしては高級すぎるくらいの印象を受けるかもしれないが、ここまでお伝えしてきたようにe-4ORCEとe-POWERの生み出す走りは、期待以上に上級テイストであり、むしろ上質なインテリアが自然に馴染む。



加えて試乗車にはオプションのBOSEプレミアムサウンドシステム(9スピーカー)が備わっていた。オーディオの評価については好みに左右される部分もあるだろうが、ひと言で表現すると「キレと重みのある音」というのが筆者の印象。ボリュームを上げずともボーカルから低音まで存分に味わえる。
こうしたサウンドの傾向は、e-4ORCEの生み出す乗り味にも通じる部分があるように思える。一部の隙もなくエクストレイルらしい、タフギア感と上質さを表現しているのだ。
エクストレイルの完成度の高さは、アーバンSUVとして評価するだけでは足りないと思う。
”サルーン”といった言葉から想像できる静粛性、安定感、上質さを高次元でバランスしているのが、最新のエクストレイルなのだ。

ドライバーの期待に応える上質な走り、ワインディングで輝くNISMOも味わった

最後に、神奈川県西部にあるクルマ好きの聖地、箱根でエクストレイルのハンドリングを味わってみよう。
ここではスポーティバージョンであるNISMO Advanced Package e-4ORCEと合流。2台の違いを確認することもテーマのひとつだ。

G e-4ORCEはオプションの19インチタイヤを履いているが、路面がうねっているような場所でも大径タイヤにありがちなバタつきを感じないのがチャームポイント。サスペンションはしっかりとストロークして、路面に追従する感覚はSUVらしいもので、エクストレイルという名前から想像する通りのハンドリングに仕上がっていると感じた。



一方、エアロパーツをまとい、20インチのミシュラン・パイロットスポーツEVタイヤを履く、エクストレイルNISMOでは、同じエクストレイルとは思えないほど、まったく異なる印象を受けた。
「水を得た魚」ならぬ「峠を走るNISMO」と表現すれば伝わるだろうか。
NISMO専用サスペンションの印象として、一般道ではコツコツした感触もあるというのが正直な感想だが、ワインディングが舞台となると、しなやかな動きへ変身する。
電動リクライニング機能を備えたNISMO専⽤チューニングRECARO製スポーツシート(NMC扱いオプション)、赤いセンターマークのついたステアリング、NISMOロゴ入りフロアマットなどレーシーな雰囲気のコックピットに座り、さらにドライブモードで”SPORT”を選べば、NISMO専用チューニングのe-4ORCE制御と相まって、アクセルワークで姿勢をコントロールできる様は軽快で、素直に楽しい。







試乗した個体は、パノラミックガラスルーフを備えていたこともあって、車検証の重量欄は1910kgとけっして軽くはないのだが、NISMO専用にセッティングされたパワートレイン制御によりメリハリのある加速が味わえる。そうして加減速によって荷重移動させていると、街中では硬さを感じたサスペンションがちょうどよい具合になってくるのは、本当に面白い。

標準系グレードで感じたサルーン感とは違う方向性のハンドリングであると実感できた。
同じエクストレイルの中で、これほど異なる味付けができるというのは、20インチタイヤを使いこなすシャシーのポテンシャルがあってのことだろう。しかし、エクストレイルの走りは、e-4ORCEのポテンシャルが支えているというのが筆者の印象だ。駆動力によるピッチング制御は、快適性と運動性のそれぞれにおいて有効といえる。
もちろん、エクストレイルにはFF駆動も用意される。しかし、購入予算に余裕があり、日産の技術力を堪能したいのであれば、是非とも電脳4WDの魅力に溢れたe-4ORCEのエクストレイルを選んでほしい。それが、3日間で500kmほどエクストレイルで走った偽らざる感想だ。







エクストレイル 主要スペック

エクストレイルG e-4ORCE
全長×全幅×全高:4690mm×1840mm×1720mm
ホイールベース:2705mm
最低地上高:185mm
車重:1880kg
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
発電用エンジン型式:KR15DDT
エンジン最高出力:106kW
エンジン最大トルク:250Nm
フロントモーター最高出力:150kW
フロントモーター最大トルク:330Nm
リヤモーター最高出力:100kW
リヤモーター最大トルク:195Nm
燃料消費率(WLTCモード):18.1km/L
最小回転半径:5.4m
タイヤサイズ:235/55R19
メーカー希望小売価格:4,946,700円


エクストレイルNISMO 主要スペック

エクストレイルNISMO Advanced Package e-4ORCE
全長×全幅×全高:4690mm×1840mm×1720mm
ホイールベース:2705mm
最低地上高:185mm
車重:1890kg
駆動方式:4WD
乗車定員:5名
発電用エンジン型式:KR15DDT
エンジン最高出力:106kW
エンジン最大トルク:250Nm
フロントモーター最高出力:150kW
フロントモーター最大トルク:330Nm
リヤモーター最高出力:100kW
リヤモーター最大トルク:195Nm
最小回転半径:5.4m
タイヤサイズ:225/40R20
メーカー希望小売価格:5,962,000円


フォトギャラリー












































