ひと回り大きく見えるスタイルに普通車からのダウンサイザーも納得

4代目へと進化した日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」を試乗した。

2025年秋、日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ、4代目へと進化した。

振り返れば、初代ルークスはスズキからのOEMであり、2代目ルークスも三菱eKスペースをベースとした兄弟車だった。そうした印象は、いまも軽自動車ユーザーに残っているようで、日産ルークスが新しくなったといっても「どうせ他社のクルマに日産のエンブレムをつけただけなんでしょ」と認識している人も少なくないようだ。

しかしそれは誤った認識だ。

たしかに日産と三菱の軽自動車は、三菱の水島工場で作られているが、それは専門用語でいうと生産委託といえるものであって、商品企画は日産が独自に行っているし、エンジンなど主要部品の設計も日産が主体となっているという。そして、先代モデルである3代目ルークスからそうした体制で開発されている。

ただし、先代モデルと新型ルークスでは、開発のアプローチがまったく変わったように思う。

先代モデルでは、とくにカスタム系グレードのハイウェイスターがミニセレナを思わせるスタイリングだったのに対して、新型ルークスにはオリジナリティがある。

デザイナーによれば「Roomy+Maxの組み合わせから生まれた名前への思いをスタイリングで表現した」というが、とくにAピラーを前方に移動してルーフを伸ばしたことが大きさ感には効いている。まさしく軽スーパーハイトワゴンの王道を狙ったデザインと感じる。

とくに、そうした意思を強く感じるのは標準系のスタイリングだと個人的に思う。

左右に回り込んだヘッドランプや、ワイド感を強調する意匠のテールレンズといって燈火類のデザインも効いているのだろうが、サイドから見ると中央部分が盛り上がったユニークなキャラクターラインをはじめ、全体に張りを感じる面となっているのが、大きく見える理由だろう。

サイドから見ると中央部分が盛り上がったユニークなキャラクターラインなどデザイン的な特徴も多い。

日産の軽自動車を求める層には、長年の日産ファンだけれど、取り回しの面から小さなクルマが欲しいという人も少なくないという。たとえば「セレナに乗っていたけれど子離れしたので軽自動車にしようと思う」という人や、「ずっとブルーバードに乗っていたけれど、今度は小さいクルマに変えたい」という人が、ルークスに乗り換える典型的なケースだ。そのようなダウンサイザーにとって、実際には扱いやすい軽自動車サイズでありながら、少し大きく見えるというのはポイントが高いだろう。

ミニセレナから脱却、軽スーパーハイトワゴンの王道を目指してデザインしたからこそ、このスタイリングが実現した…というのは筆者の勝手な印象ではあるが、正式発表以降で2万2000台も受注しているというから、マーケットも新型ルークスを高く評価していることは間違いない。

NAエンジンのエコモードが史上最高に乗りやすい

筆者は、新型ルークスのプロトタイプがメディア向けに公開されたときに取材している。

そのときには、日産のテストコース「グランドライブ」にてターボエンジンのハイウェイスターに試乗することができた。

軽自動車の常識を覆すような静粛性、スーパーハイトワゴンと思えない高速走行での安定性は確認してたので、今回の公道試乗を前にしてもっとも気になっていたのは、NAエンジンを搭載する標準系グレードの走りっぷりだ。

まさに「名は体を表す」だ! 新型ルークスはハイウェイで光り輝く走りを実現! 試乗でわかった高速走行の安定感 | Motor-Fan[モーターファン] 自動車関連記事を中心に配信するメディアプラットフォーム

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先に結論を記せば、リッターカーのような余裕を感じさせる制御が好印象というものだった。

軽自動車の自然吸気(NA)エンジンでCVTとの組み合わせとなると、速度が一定で走っているときにはエンジン回転が低く静かだが、少しでもアクセルを踏み込むと変速比をロー側に振り、エンジンが唸りを上げるという傾向が強い。

ルークスのNAエンジンは最高出力38kW(52PS)、最大トルク60Nm(6.1kg-m)という標準的なスペックだからライバルに比べて余裕があるわけではない。

しかし、アクセルを踏み足したときにすぐさまエンジン回転を上げることで加速するのではなく、急激に変速比を下げず、スロットルバルブを開けて出力を高めようという制御がなされているのが新型ルークスの特徴だと感じた。

たとえるなら、5速MTの軽自動車で3速に入れて走ってるとき、シフトダウンせずに3速のままアクセルを開けていってじわじわと加速するような挙動を見せるのだ。もちろん、アクセルを床まで踏み込めば変速比を下げて急加速をするが、ちょっと速度を上げたいときの制御が、マイルドで余裕を感じさせるものになっている。

こうした制御は数字で加速度を見れば、ダルなのかもしれない。しかし、エンジン回転と速度がリンクしてじわじわと加速する様は、少し排気量の大きなエンジンを思わせる。結果として、パワートレインの余裕を感じさせる演出・制御になっている。こうした特性も、登録車から軽自動車へ乗り換えるダウンサイザーには好印象ではないだろうか。

ルークスのNAエンジンは最高出力38kW(52PS)、最大トルク60Nm(6.1kg-m)という標準的なスペック。

さらに特筆すべきは、エコモードの制御も”大人びて”いて乗りやすいこと。

新型ルークスのドライブモードは、エコ/スタンダード/スポーツの3つから選べるようになっている。たいてい軽自動車ではエコモードを選ぶと、アクセルを踏んでも加速を抑制する制御となっていて、アクセルペダルを全開・全閉で走るようなドライバーでない限り、乗りづらいと感じることが多い。

しかし、新型ルークスのエコモードでは前述したような高いギア比のままエンジンのチカラで加速するといった味付けが感じられる。一定の速度まではしっかり加速、そこからエコドライブに導くような絶妙な制御となっているのだ。個人的には「史上最高に乗りやすいエコモードを持つ軽スーパーハイトワゴン」ではないかと思う。

新型ルークスのドライブモードは、エコ/スタンダード/スポーツの3つから選べるようになっている。

また、パワートレインでいえば先代はマイルドハイブリッドだったが、新型ルークスはコンベンショナルなエンジン仕様となっている。気になるのは経済性だが、NAエンジン・FFのモード燃費は21.0km/Lで、なんとマイルドハイブリッドの先代モデルよりわずかに燃費性能が向上している。

スタイリングの紹介で、ルーフを伸ばしたと書いたが、それは重量増につながる要素で、燃費にはネガティブだ。しかし、マイルドハイブリッドシステムを取り除いたことは、ボディの重量増とトレードオフになった。フロントサスペンションのナックルをアルミ製にするなどの軽量化も新たに施されている。

さらにエンジンのシリンダー内壁を滑らかにしたり、EGRの取り回しを見直したりといった地道な積み重ねが省燃費につながったということだ。だからといって、エンジン出力が絞られたような感触がまったくないのは、ここまでで紹介した通りであり、省燃費と運転しやすさを両立したパワートレインになっている。

2列目がレベルアップ、特筆すべき使いやすさ!

ルークスのフルモデルチェンジでは、2列目シートの乗り心地と使い勝手の改善も見逃せない。

それはスライドドアの開口幅650mm、後席のスライド量320mmというクラストップのスペックだけではない。

前席に続いて、後席にも日産独自の「ゼログラビティシート」を採用するなど長時間でも快適に座っていられるシートに進化している。

加えて、左右独立でスライドできる後席の操作は肩口におかれたレバーでも行えるので、荷室側から後席の位置を調整しやすいようになっている。

また助手席の肩口にあるレバーによって、ワンタッチで背もたれを前に倒すことができる。最前位置にセットした後席にチャイルドシートを装備するといったシチュエーションにおいて、このワンアクションでチャイルドシートに座る子どものケアができるというのは非常に便利。

さまざまなユーザーを想定して、パッケージやシートアレンジが考え抜かれたことは、こうした機能ひとつとっても実感できるところであり、新型ルークスの完成度を示している。

あらためてまとめると、新型ルークスは軽スーパーハイトワゴンの理想像を示すスタイリング、リッターカーのような余裕感のあるパワートレイン、そして使いやすいパッケージを併せ持つ。それでいて、標準系のNAエンジン搭載グレードの価格帯は、167万2000円~173万9100円とリーズナブルなのだ。

日産が王道を目指した新型ルークスのヒットは間違いない。

唯一、気になるのは先進運転支援システム「プロパイロット」非装着車ではパーキングブレーキが足踏み式となってしまうこと。街乗りでこそ電動パーキングブレーキ(EPB)のオートホールドを求めるというユーザー心理を考えると、全車にEPBを標準装備するような商品改良が望まれるところだ。

後席のスライド量320mmというクラストップ。
助手席の肩口にあるレバーによって、ワンタッチで背もたれを前に倒すことができる。