どんな天候・路面でも普段と同じように安心して運転できる。それがフォレスターの強み
スバル・フォレスターの総合安全を体感しに、スバル研究実験センター美深試験場に行った。稚内と旭川のほぼ中間に位置する美深町は、北海道に数ある自動車メーカー/サプライヤーの試験場のうち最北端にある。冬の気温はそれほど低くならないのに雪の量が多いのが特徴だそうだ。1995年の開場当初は冬季に試験を行なっていたが、2003年にメイン周回路が完成したのを機に、夏季も試験を行なうようになって現在に至る。

スバルは「2030年死亡交通事故ゼロ」を目指し、「0次安全」「走行安全」「予防安全」「衝突安全」「つながる安全」の各領域に分類して総合安全に取り組んでいる。0次安全の要となるのは、直接視界だ。「開発のなかで譲れない要件として取り組んでいるいっぽうで、楽しさや遊び心が感じられるような魅力的なデザインとの両立をいかに実現するかが重要」と、フォレスターの開発責任者を務める只木克郎氏は話す。
車両安全開発部の技術者は、スバルの安全思想について次のように説明した。
「スバルは前身が航空機メーカーです。航空機はそもそも事故を起こしにくい設計が求められている。その設計思想を受け継ぎ、スバルでは正確な認知、判断、操作ができるクルマを作ってきました。0次安全のなかでも直接視界はスバルがこだわってきた性能です。どこにこだわってきたかというと、見たい物が見える。運転しやすいと感じられる。開放感を感じる。そういった視界を作ってきました」
業務棟1階の作業場には交差点の右左折を模擬したシーンが再現されていた。フォレスターの右斜め前方には子供を模擬した高さ1mのポールが置いてある。フォレスターは交差点の右折時、右折先の横断歩道を渡っている歩行者(子供)がしっかり認知できる視界が確保されている。Aピラー後方の三角窓からの視界の抜けがポイントだ。


左折時も三角窓がポイントとなる。フロントガラスは小規模な交差点でも信号が見やすいよう、上方の視界を広くとっている。また、運転席に着座した状態でボンネットフードがしっかり見えるように設計している。フードを広く見せることで、車両感覚をつかみやすくしているそうだ。こうした設計とすることで、左側に住宅の塀が迫るようなシチュエーションでも障害物との間隔がつかみやすくなるという。
後方視界も意識して設計している。リヤドアの後ろにある三角窓は下側を広くとることで、車線変更などの際に振り返った際に後側方の車両を確認しやすくしている。フロントの三角窓のエリアもそうだが、車両安全開発側とデザイン側がお互いの要求を擦り合わせながら形に落とし込んでいくという。「スバルとしての0次安全、直接視界は会社全体として守っていなかければならないという意識はデザイナーも持っています」

リヤガラスの下端は極力下方に下げるようにし、バックで駐車スペースから出る際に歩行者などを視認しやすいように設計。また、上方もできるだけ高い位置に見切りを設定するようにしているという。そのほうがルームミラー越しに遠くまで視認できるからだ。デザイナーには「上側はこれくらいまで上げて」と指示を出し、守ってもらったそう。これらの話を聞くと、フォレスターの前後左右のガラスエリアがとっても気になるし、ちっともデザインを犠牲にしていないこともわかる。

夜間や降雨雪時の視認性も確保。ドライバー異常時対応システムも心強い
夜間の視界確保のポイントは4つある。1つめはアレイ式アダプティブドライビングビーム(ADB)の採用だ。LEDの素子を片側12個配置し、対向車や先行車をカメラで検知するとハイビームの照射範囲をコントロール。対向車や先行車を眩惑しないようにしながら、常に明るい夜間視界を確保する。
2つめはLEDコーナリングランプ。ウインカーと連動し、左折する際は左折方向を照らして進行方向の歩行者や自転車を早く発見できるようにとの意図で採用した。
3つめはステアリングレスポンシブルヘッドランプ(SRH)だ。カーブの曲率に合わせて(ステアリングの舵角に応じて)ヘッドランプの光軸を変化させ、カーブの先を照らす技術。これにより、カーブの先で止まっている故障車や障害物の早期発見につながる。
4つめはヘッドランプウォッシャー。走行時に付着する雪や汚れをヘッドランプウォッシャーによって払拭し、ヘッドランプの光の広がり、明るさを維持し、悪天候時でも明るさをしっかり確保し、きちんとした視界を提供する。以上が、スバルの0次安全に対するこだわりを示す具体例である。

長さ1km以上の直線路を持つ総合路では、ドライバー異常時対応システムの新機能について、走行中に助手席から機能を見学した。フォレスターで新たに追加になったのはパルスブレーキだ。長時間ハンドル操作がされないなど異常が生じたと車両が判断した場合、自動で減速・停止と周囲への警告、ドアロックの解除を行なう。また、コネクティッドサービス契約者はコールセンターへ自動接続され、迅速なサポートが受けられる仕組みだ。
全車速追従機能付きクルーズコントロールで走行していると仮定し、その際、ドライバーに異常が発生したと仮定する。すると、「ハンドル操作してください」のアナウンスの後に警報音が鳴る。パルスブレーキが作動するのはこの直後で、車両側が一瞬だけ強めにブレーキをかける。すると、瞬間的にだが前のめりになるような動きが起きる。カックンブレーキの強いやつみたいな感じだ。

それでも反応しないと警報音が大きくなると同時に、ホーンが鳴って周囲に異常を知らせながら減速し、停車。ヘルプネットに接続してオペレーターを呼び出す。「はい、ヘルプネットです。○○様、何かありましたか。応答してください」の声がけが3回繰り返された後、「応答がありませんので、救急車の出動を要請します」とオペレーターが伝えた。

試験であることをオペレーターに伝えてデモは終了。聞けば、ドライバー異常時対応システムが作動し、ヘルプネットにつながるケースは月10数件程度あるそう。幸いにも救急車の要請に至ったケースはこれまでになく、そのほとんどが居眠りだったそう。すぐ隣で救急車がサイレンを鳴らしているような大きな音と、パルスブレーキによるショックでも目を覚まさないなんて、一体どんな深い眠りなんだと思う。早めの休憩が肝要だし、ドライバー異常時対応システムが大きな被害を未然に防いでいるのを感じた。
積雪路で急な下り勾配に出くわしてもX-MODEが運転をサポート
ハンドリング路では「走行安全」のうち動的性能を確認した。本来は砂利道なのだが、直前まで雪が降っていたため薄く雪が降り積もった状態だった。スタッドレスタイヤに履き替えてはいないが、フォレスターなら問題ない。なぜなら、サイドウォールに「M+S」マークのあるオールシーズンタイヤを標準で装着しているからである。

非降雪地帯で年に一度か二度程度経験する薄い積雪程度なら、オールシーズンタイヤで何ら問題ない。細心の注意はもちろん必要だけれども、発進でスリップするとか、カーブで曲がらずに外にふくらんでしまうとか、不安に感じるようなシーンは一切なかった。途中、急な下り勾配ではX-MODEのヒルディセントコントロールを試した。一定の車速を車両側で保ってくれ、滑りやすい路面でブレーキを踏んで車速をコントロールする不安から解放される。
公道試乗では美深試験場から旭川空港までの約120kmを、1.8Lターボ車とS:HEV(ストロングハイブリッド)車を乗り換えて走った(スタッドレスタイヤを装着)。路面はほぼウエット。空港近くでは視界を遮るような雪(しかも暗い)に見舞われたが、フォレスターがどんな天候・路面でも普段と同じように安心して運転できるのを確認するには、うってつけの状況だった。0次安全が重要、直接視界が重要と、言うだけのことはある。

| グレード | フォレスター Premium S:HEV EX | ||
| 全長 | 4655mm | ||
| 全幅 | 1830mm | ||
| 全高 | 1730mm | ||
| 室内長 | 1950mm | ||
| 室内幅 | 1540mm | ||
| 室内高 | 1270mm | ||
| 乗員人数(名) | 5 | ||
| ホイールベース | 2670mm | ||
| 最小回転半径 | 5.4m | ||
| 最低地上高 | 220mm | ||
| 車両重量 | 1750kg | ||
| パワーユニット | 2.5L水平対向4気筒DOHC | ||
| エンジン最高出力 | 118kW(160PS)/5600rpm | ||
| エンジン最大トルク | 208Nm(21.3kgm)/4000-4400rpm | ||
| 燃料(タンク容量) | レギュラーガソリン(63L) | ||
| モーター型式・種類 | MC2・交流同期電動機 | ||
| モーター最高出力 | 88kW(119.6PS) | ||
| モーター最大トルク | 270Nm(27.5kgm) | ||
| バッテリー種類 | リチウムイオン電池 | ||
| バッテリー容量 | 4.3Ah | ||
| 燃費(WLTCモード) | 21.1km/L | ||
| サスペンション | 前:ストラット 後:ダブルウイッシュボーン | ||
| ブレーキ | 前:ベンチレーテッドディスク 後:ベンチレーテッドディスク | ||
| タイヤサイズ | 235/50R19 | ||
| 価格 | 459万8000円 | ||































































































































































































