初めての5気筒エンジンは、1976年にAudi 100(C2)に搭載された。当時の5気筒エンジンは初期段階にあったEA 827 直列4気筒エンジンコンセプトをベースに開発された。このEA 827直列4気筒エンジンは、1970年代にAudi 80やAudi 100を含む、フォルクスワーゲングループ全体で使用されていたモデルだ。このエンジンから派生した5気筒エンジンは、2,144ccの排気量を持ち、100 kW(136 PS)を発生し、最新の燃料噴射システムにより効率とパワーが向上され、Audi 100 5Eは1977年3月にデリバリーが開始された。

1980年、オリジナルAudi quattroの5気筒ガソリンエンジンは、ターボチャージャー、インタークーラー、そしてフルタイム4輪駆動を備え、強力なパッケージングに仕上げられた。販売開始時、その出力は147kW(200 PS)。アウディがこのモデルで1982年世界ラリー選手権のマニュファクチャラーズタイトルを獲得し、翌年には新たに開発された4バルブの225 kW(306 PS)を発揮する5気筒の軽合金エンジンにより、当時公道走行用にドイツ企業が提供した中で最もパワフルなモデルとなった。このモデルは、新しいグループBラリーカーのベースとなり、この4バルブエンジンは、初期段階から331kW(450 PS)を発揮した。

アウディは1989年のフランクフルト国際モーターショーで、自動車の歴史におけるもう一つのマイルストーンとなるAudi 100 TDIが発表された。完全電子制御エンジンマネージメントシステムを備えた直噴5気筒ターボディーゼルは、排気量2.5リッターから88 kW(120 PS)を発生。アウディは5気筒ガソリンエンジンのラインアップをさらに洗練させ、1994年には、232 kW(315 PS)を発揮するAudi Avant RS2が市場に投入された。スポーツカーと同等のパワーを備えたAvantとして、それは新しい自動車クラスの先駆けとなるモデルとなった。

最初の5気筒ターボチャージャー付きガソリンエンジンのデビューから30年後となる2009年、Audi TT RSで待望の復活を遂げました。クワトロ社(quattro GmbH)によって開発された、2.5リッターの排気量のターボチャージングとガソリン直噴を備えた横置きエンジンは、250 kW(340 PS)を発生し、卓越したパフォーマンスを発揮した。さらにアウディが2012年に導入したAudi TT RS plusは、265 kW(360 PS)を達成。2013年には、Audi RS Q3が初のコンパクトSUVとして、新たなマーケットセグメントを切り開いた。パワーユニットとして採用されたのは、Audi TT RSおよびRS 3と同様の2.5リッターの5気筒エンジンだった。2016年に登場した新しいバージョンのエンジンでは、軽量化対策、内部摩擦の低減、そして出力向上により、エンジニアたちは同じ2,480 ccの排気量のまま、出力を17%向上させることに成功し、294 kW(400 PS)と最大トルク480 Nmを発揮した。

2021年以降、Audi RS 3には改良バージョンの2.5 TFSIが搭載され、これまで以上にパワフルな出力が実現されてる。このエンジンによってこのコンパクトスポーツカーは0–100 km/hを3.8秒で加速する。最高速度はパッケージ次第で290 km/hに達する。これらの性能値を実現する決定的な要因はトルクであり、2,250 rpmから5,600 rpmの間で500 Nmを発揮する。これは先代モデルより20Nmの増加となる。これにより、Audi RS 3は中間回転域からさらに鋭い加速を可能にしている。最高出力294 kW(400 PS)は、従来より早い5,600 rpmから発生し、7,000 rpmまでの広い領域にわたって持続。新しいエンジンコントロールユニットは、すべてのドライブコンポーネントのネットワーク化をより高速に行い、ドライビングダイナミクスを新たなレベルへ引き上げる。