低速シミーと高速シミーの2タイプがある
シミー現象とは、走行中にハンドル全体が細かく振動する現象で、バイクだけでなく、4輪車や自転車でも起こる現象だ。
一方で、荒れた路面を走行した際などにも、ハンドルが取られたり路面からの振動が伝わったりすることはある。ただしこの場合は、加速して車速が上がるにつれて振動も大きくなるのが一般的で、特定の速度域で自然に振動が増幅していくシミー現象とは性質が異なる。
シミー現象の場合は、比較的低速の40~50km/hで発生しやすいといわれる。しかも、加速していないのにハンドルの振動がだんだんと大きくなることも多いようだ。また、シミー現象には、100~120km/hの高速走行時に発生するケースもあるとされており、40~50km/hで発生する「低速シミー」に対し、高速時に発生するものは「高速シミー」と呼ばれている。
そして、これらの現象が起こると、ハンドルの振動がだんだんと大きくなり、そのままライディングを続けると、転倒や重大な事故につながる危険性が高くなるのだ。

原因はタイヤやホイールの不具合が多い
発生してしまうと、とても怖いシミー現象。その原因は複数あるといわれているが、主にタイヤやホイールに関連する不具合が多いようだ。以下に、主な原因を挙げてみよう。
【タイヤの空気圧不足】
タイヤの空気圧が低すぎると、タイヤが過度にたわみやすくなり、剛性が不足した状態になる。その結果、接地状態が不安定になり、路面からの入力が振動として増幅され、シミー現象が起こりやすくなる。また、タイヤの空気圧が適正値よりも低い状態で走行し続けると、シミー現象だけでなく、タイヤのパンクやバーストの原因となり、とても危険だ。
日頃からタイヤの空気圧はこまめにチェックするようにしよう。

【タイヤの偏摩耗】
バイクのタイヤは、走行するうちに路面との摩擦で摩耗していくもの。ただし、何らかの要因でその摩耗が偏った減り方(偏摩耗)になると、タイヤの回転に抵抗がかかり、振動が発生。シミー現象の原因のひとつになる。とくに、フロントタイヤが偏摩耗した場合にシミー現象は起こりやすいといわれている。
ちなみに、偏摩耗も含め、タイヤの溝が少ない状態だと、ハイドロプレーニング現象の原因にもなるといわれている。ハイドロプレーニング現象とは、雨天時などに、水膜がタイヤと路面の間にできることで、タイヤが浮いてハンドルやブレーキ操作が制御できなくなる現象だ。くれぐれも、タイヤの溝があるかどうかは走行前に点検し、残り溝の深さが法定限度(バイクの場合の最低基準)である0.8mm以上であるか否か確認しよう。

【ホイールバランスの狂い】
ホイールバランスとは、タイヤとホイールを組み合わせて空気を入れた状態での重量バランスのこと。通常は、ホイールにバランスウェイト(重り)をセットして調整し、均等で安定性の高い回転を実現するように調整されている。
ところが、このホイールバランスが何らかの原因で狂ってしまうと、走行中にハンドルがブレたり、車体が振動しやすくなり、シミー現象の原因にもなる。特に高い速度域での走行時に起こるシミー現象、前述の高速シミーが発生する危険性が高まるといわれている。

【地面との共振】
路面のギャップや凹凸がタイヤに衝撃を与えることで、シミー現象が起こる場合もある。この場合は、路面からの衝撃でタイヤが不規則な回転(振動)を起こし、ステアリングや足まわりなどの持つ固有の振動数と一致(共振)することで、振動がどんどん増幅され、シミー現象につながるといわれている。
【その他】
ほかにも、フロントフォークの歪みなど、足まわりの異常が原因となる場合もある。また、荷物積載用のリアボックスに、積載制限を超える重い荷物を積んだ場合も、重心がリア側に偏り、フロント側が軽くなることで車体のバランスが崩れて起こるケースもあるようだ。

なお、これら原因は、単一でシミー現象を起こす場合もあれば、複数の原因が絡む場合もあるため、一概にはいえない。いずれにしろ、原因の多くはバイクにあるため、常日頃から整備・点検などをきちんと行うことで予防することが大切だ。
シミー現象が起きたときの対処法
シミー現象は、以上のような要因で起こるが、いつ起こるのかは不明だ。もし、走行中に突然起こった場合は、パニックにならず、できるだけ冷静に行動するのが一番。主な対処方法は以下の通りだ。
【走行をやめる】
走行中に突然発生するシミー現象は、ハンドルをコントロールすることが困難になる。そのため、そのまま走り続けることは危険だ。前述の通り、事故や転倒につながるため、できるだけ早急に止まることが重要となる。
【急ブレーキは厳禁】
ただし、この場合、急ブレーキをかけるのは禁物。振動を抑えるためハンドルをしっかり押さえながらゆっくりと減速し、安全を確保できそうな路肩に停止しよう。
【停車する場所にも注意】
とくに、路肩に停車する場合、たとえば、コーナーの途中にある路肩などは、後続車から追突される危険があるので厳禁。できるだけ、見通しのいい直線路の路肩で止まるようにしたい。
また、高速道路の場合は、バイクを路肩に停めたら、バイク後方に三角停止版を表示するなどの処置後、できるだけ早くガードレールの外へ避難することが重要。同じく、後続車から追突される危険を避ける必要があるためだ。

【停車後はバイクを引き上げてもらう】
そして、停車後は、レッカーサービスや行きつけのバイクショップなどに連絡し、バイクを引き上げてもらおう。くれぐれも危険なので、そのまま乗り続けないようにしよう。
原因究明はバイクショップなど専門家に頼む
シミー現象は、前述の通り、タイヤや足まわりなどの異常が原因となる。つまり、バイクの方に問題がある場合が多いため、もし発生したら、そのまま放置してはいけない。必ずバイクショップなど専門業者に依頼し、愛車の部品に損傷や問題がないかを確認してもらおう。そして、その後、修理や整備などを行うことで、問題を解消してから乗るようにしたい。
なお、もしシミー現象がたまにしか起きない場合でも、そのまま走行を続けるのは危険だ。また、シミー現象の原因の特定や修理は素人が行うことは難しいため、できるだけ専門の業者に依頼することをおすすめする。
