今も“競技車両”であることに理由がある

40年経ってもなお走る理由とは

2代目ランサーA170系のデビューは1979年。2年後の1981年にはG62B型1.8Lターボエンジン搭載の1800GSR/GTターボが追加された。前期型と呼ばれるこのモデルはインタークーラーレス仕様で、スペックは135ps、20.0kgm(グロス値)だった。

その後、1983年のマイナーチェンジで後期型が登場。空冷式インタークーラーや改良型ECI(電子制御インジェクション)の採用、高ブースト化などでパワーは160ps、トルクは22.0kgmへと向上した。

取材車両は、後期型1800GSRターボをベースに製作されたヒストリックラリー参戦マシン。オーナーは1970年代半ば、18歳で運転免許証を取得するとTE27レビンでラリー参戦を始め、そのキャリアがもう50年になる小田切さんだ。

「まだ全日本ラリーが始まる前で、初参戦はオートテクニック杯でしたね。当時乗っていたTE27は1.6Lのフルチューン仕様。その後、TE71やKP61、AE86を乗り継ぎましたけど、自分の会社を立ち上げるため、ラリー活動は一時休止。それが27歳の時でした」。

会社が軌道に乗るまで数年間のブランクを挟み、再びラリーの世界へと戻った小田切さん。スズキスポーツが手掛けたアルトワークスのコンプリートカーで実戦復帰を果たし、ヴィヴィオを3台乗り継いだ後、ミラージュ4WDで念願の全日本ラリー優勝(4Bクラス)を果たした。2003年第2戦MCA BARUラリーでのことだ。

以降、競技としてのラリーには距離を置き、ラリードライバー仲間と共にサーキットでの耐久レース参戦へと移行。それでも1年に一度、『レジェンド・オブ・ザ・ラリー』(2012~2018年)や『日本アルペンラリー』(2020年~)には、「趣味として参戦しているんですよ」と、どちらのラリーでも優勝経験がある小田切さんは言う。その参戦マシンが取材したA175Aランタボというわけだ。以前はCE9AランエボⅡに乗っていたが、「クラシックラリーにはこっちの方が似合ってる」という理由からA175Aに乗り替えたという経緯がある。

外装は、自身が立ち上げて代表を務める輸入車販売会社、WINIX(ウィニックス)をアピールするカラーリング。白とオレンジの2トーンは当時のグループ4規定に合わせて開発され、1980年代初めのWRCを戦ったランサーEX2000ターボをモチーフとしている。

また、参戦している日本アルペンラリーは絶対的な速さを争う競技ではないことに加え、耐久性を確保することからも、チューニングポイントは最小限に留められる。

ボア径80.6φ×ストローク量88.0mmで排気量1795ccとなるG62B型ターボ。ヘッドは2バルブSOHCが組み合わされる。前期型はインタークーラーレスで圧縮比が高く(8.0:1)、後期型はインタークーラー追加に伴う設定ブースト圧の向上に合わせて圧縮比が落とされる(7.5:1)など仕様が異なる。ちなみにエンジン制御は、この時代からすでにカルマン式を採用。

純正タービンは前後期共に三菱TC05-12A。ただし、型式こそ同じものの、コンプレッサーハウジングは後期型の方が大型化している。最大ブースト圧は前期型0.53キロ、後期型0.66キロの設定。

ECIは各気筒にインジェクターを持つマルチポイント式でなく、キャブのジェットの代わりにインジェクターを打ったようなシングルポイント式を採用。インジェクター自体は750ccが2本使われている。

マフラーはメインパイプ径60.5φのフジツボレガリスRに交換。排気効率の向上が図られる。また、リヤサスは当時ベーシックなFR車の多くに採用されていた4リンクリジッド式。強度的に優れ、対地キャンバー角が変わらずタイヤ接地面積を稼げるため、ラリー向きのサスペンションと言える。

フロントはカートリッジ式のため本体が見えないが、前後とも水色のケースでお馴染みの純正形状ダンパー、KYBニューSRスペシャルをセット。スプリングは純正を組み合わせる。ブレーキはキャリパー、ローター共にノーマル。

フロントバンパー裏側に設けられたブレーキ冷却用の樹脂製エアガイド。40年以上も前にして、ノーマルで装備されていたことに三菱の真面目な設計ぶりががうかがえる。

直線基調のデザインに昭和感を強く覚えるダッシュボード。メインメーターはスピード&タコメーターを中心として、右側に燃料計と水温計、左側に油温計とブースト計がそれぞれ上下に配置される。ステアリングホイールはナルディクラシックに交換。ダッシュボード中央と助手席の前に装着されるのはトリップメーターだ。

「ヒストリックラリーは速さよりも正確さを競うから、ラリーコンピューターまでは必要なし。元々トリップメーターは助手席の前に並べていたんだけど、ドライバーも操作できるように1つはセンターコンソールに移設したわけ」とグレイス代表の荒井さん。

トリム類を外し、アンダーコートも剥がされたトランクルームにはスペアタイヤやジャッキを搭載。リヤパネルに取り付けられるのはMSGアクティブのリヤエンドバー。フロントストラットアッパーやシートレールバーも追加され、ボルトオンパーツでボディ剛性を効果的に向上させる。

「ノーマルでも構わないのですが、ラリーで走るとなるとフルノーマルはさすがに厳しい。速さは求めないと言いながら、場合によっては峠を全開で攻めることもありますからね。なので、押さえるべきところだけはキッチリやっておかないと。当初はノンスリが入ってなかったので、コーナーの立ち上がりでアクセルを踏んでも前に出ていかなくて。こりゃダメだ…ということで、グレイス荒井さんにパーツの手配をお願いして組んでもらったんですよ」。

国産メーカー間でパワー競争が始まったタイミングで三菱の尖兵として市場に投入され、後期型ではスペックアップを果たしたA175A。軽量ハイパワーなFRターボとして人気を集めたのはもちろん、それ以上に初代A73と同じくラリーの世界で活躍した印象が強い。

だとすると、ランタボ本来の姿を求めるなら、行き着くのはラリー仕様。現役時代から40年が過ぎた今もなお戦い続けるその佇まいは、凛としていて力強さに溢れていた。

●取材協力:モータースポーツグレイス 群馬県高崎市下小塙町331 TEL:027-368-2521/ウィニックス 東京都世田谷区尾山台2-26-10 TEL:03-3701-7551

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