航続距離は従来型から約3割増の最大746kmへ!

トヨタは2025年10月9日、電気自動車(BEV)のbZ4Xに一部改良を施し発売した。トヨタはカーボンニュートラル(CN)の実現に向けたマルチパスウェイの考えのもと、世界各地でBEVのラインアップを拡充している。北米ではbZウッドランド(bZ4Xツーリングとして2026年春頃に発売予定)、中国ではbZ7、欧州ではC-HR+、日本では(個人ユーザー向けではないが)e-Paletteを2025年に発売した。

「敵は炭素」を合言葉にハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCEV)、再生可能エネルギーで作った水素(H2)を燃料とし走るクルマ、さらにはCN燃料の開発も続けていくが、CNに向かう手段のひとつがBEVというわけである。他のクルマやエネルギーと同様に、「BEVも本気」だ。

その本気の現れが商品改良版のbZ4Xである。このBEVは2022年に発売したが、国内のみならず、北米でも欧州でも普及が進まず課題を残した。普及が進まなかった原因は大きく3つあるとトヨタは分析している。1つは航続距離と充電時間。より長い航続距離、より短い充電時間を望む声を受け取ったという。2つめ以降の課題は国内に限られるが、まずは普通充電に関する課題。戸建ての自宅にどう普通充電器を設置すればいいのか。そして、3つめは急速充電に関する悩みごとである。クルマ単体だけでなく周辺環境も含め、「もっと使いやすく」することが求められた。

トヨタbZ4Xは2022年5月に日本販売を開始。25年10月に大規模な改良を受けた。
ボディサイズは全長4690mm×全幅1860mm×全高1650mm。RAV4に近い大きさとなる。

1つめの課題はクルマ側で解決した。まずバッテリーの総電力量を前型に対して上級グレードで約1割増やし(Zは74.69kWh、Gは57.72kWh)、eアクスル(モーター、インバーター、減速機を一体にしたユニット)を刷新し、損失を4割削減した。うち半分程度はパワー半導体にSiC(シリコンカーバイド)を採用した効果。残りはギヤの歯面を鏡面仕上げにするなど地道な改良の積み上げで実現したという。

e-Axleは損失を40%削減して効率を改善。シリコンカーバイド(SiC)パワー半導体の採用によるスイッチング高速化が大きく貢献した。ギアの鏡面仕上げなど、地道な改良も積み重ねられている。バッテリーも実質的にユーザーが使用できる「ネット値」の容量が71kWhとなり、従来モデルから約1割増量された(カタログ上のグロス値は74.7kWh)。

結果、カタログ値の一充電距離はFWDで746km、4WDで687kmを実現した。実電費はどうかというと、bZ4Xの開発者は愛知県豊田市から栃木県宇都宮市まで、新東名と東北自動車道の制限速度120km/h区間を2つ含む約500kmの距離を充電なしで走り切ったという。前型は東京あたりで充電が必要だったというから、大きな変化だ。

充電時間に関しては、バッテリープレコンディショニング機能を入れることで解決した。充電前に室内向けと共用のヒーターを使ってあらかじめバッテリーを適温に暖めておくことで、低温時の充電時間短縮が可能になった。例えば、外気温がマイナス10度の環境下でも、最大出力150kWの充電器でSOC(電池容量)10%から80%まで充電するのに約28分で済むという。

低温時にバッテリー温度を適温に整える「バッテリープレコンディショニング」機能を追加。ナビで目的地(急速充電器)を設定すると、到着時刻に合わせてバッテリー温度を調整するほか、手動やタイマーでも設定が可能。

普通充電の課題については、販売店オプションとして6kWの出力に対応するトヨタ純正品を用意して対応している。販売店によって対応は異なるというが、施工業者としてトヨタホームを紹介する仕組みを導入しており、設置からアフターフォローまで販売店でサポートするワンストップサービスを構築した。充電器は19万8000円(ケーブル5m。税込み。以下同)から20万9000円(ケーブル10m)。家全体の電気使用量を監視し、ブレーカーが落ちないよう充電器の出力をリアルタイムで調整するデマンドコントローラーを別売り(1万1000円)で設定している。

トヨタ純正の「6kW普通充電器」を、ディーラーオプションとして新設定。カラーはホワイトとブラックを用意する。

3つめの課題の急速充電に関しては、TEEMO(ティーモ)と呼ぶトヨタの新しい充電サービスでカバーする。2025年度で全国に約500ヵ所の販売網(トヨタの販売店に設置)を形成。e-Mobility Power(eMP)と提携しているため、高速道路のサービスエリアなどに設置されているeMP対応の急速充電器を使うこともできる。月額基本料金は0円。料金は従量制(充電器の出力によって異なる)だ。

現在、bZ4Xを対象としたキャンペーンを実施中で、新型を購入すると、TEEMO充電器での充電は1年間無料(月2回・各回30分が上限)。トヨタ純正6kW充電器を同時に購入すると、TOYOTA Wallet QUICPayに残高10万円分が還元される。

TEEMO会員はトヨタ/レクサスの販売店に設置されている充電器はもちろん、e-MobilityPower連携の充電器も利用することができる。

ちなみに、メーカー希望小売価格はZ(FWD)が550万円、Z(4WD)は600万円、G(FWD)は480万円である。CEV補助金は2025年12月31日まで90万円だが、2026年1月1日の登録以降は130万円になる。もともとbZ4Xは90万円のCEV補助金を反映した後の価格を同等車格のHEV(ハリアーや現行RAV4)と同等とする価格設定だったので、CEV補助金が130万円ということになれば、同等車格のHEVよりもお買い得ということになる。

FWDモデルのモーター出力も向上。4WDモデルの0-100km/h加速はGRヤリス並み!

新しいbZ4Xは航続距離と充電時間に関する使いやすさの面だけでなく、「もっと乗りやすく」「もっとかっこいい」の観点でも手が入っている。乗りやすさに関してはまず、モーターの出力を引き上げた。FWDが搭載するフロントモーターの最高出力は前型の150kWから165kWへと15kWアップ。試乗時に高速道路での本線への流入時や追い越し時にアクセルペダルを深く踏み込んでみたところ、「これは速い!」と実感できるだけの力強さを体感することができた。モーター駆動ならではのレスポンスの良さも好印象だ。

4WDのシステム最大出力は前型の160kWから252kWに大幅に増えている。これにともない0-100km/h加速は6.9秒から5.1秒に短縮。GRヤリスと同等だと記せば、その瞬発力が想像できるだろうか。

トヨタ社内のテストドライバー「TAKUMI」がチューニングに協力し、BEVであっても「やっぱりトヨタのクルマだ」と安心できる乗り味を実現。サスペンションはフロントを固めに、リヤを柔らかめに再チューニングし、乗り心地と操縦安定性の改善を図った。

加速性能が良くなっただけでなく、操安や乗り心地面にも手が入っている。ステアリングギヤボックスのボディ側への締結は一部をフローティング構造からリジッド(直付け)に変更。これにより、操舵した際の応答性を高めている。また、前型は後席の乗り心地に関して改善を求める声があったというが、これについてはサスペンションの設定を変えたり、ボディ骨格の接合に高減衰の接着材を採用したりすることなどで対応。シートの表皮を柔らかい素材に変更(フロントも同様)するなど、着座したときの感触面も含めてさまざまな技術の合わせ技で改善を図っている。

後席の乗り心地も良好。センタートンネルがなく、足元が広々としているのも好印象。
シート表皮の素材変更により、座り心地が改善された。

運転席だけでなく後席でも乗り味を確かめたが、ヒョコヒョコと跳ねるような動きはなく、ザラついた路面や、補修跡が連続するデコボコ路面を上手にいなし、ショックを丸め、フラット感を保つ動きに終始した。剛性感の高さを感じさせる乗り味である。ドライバーの立場でいえば、進路の調整に関しても、車速の制御に関しても、意のままに反応してくれるので気持ちいい。

フロントサスペンション:ストラット式
リヤサスペンション:ダブルウイッシュボーン式

減速側の制御に関しても変化点がある。前型はダイヤル式シフトの近くにある「ONE PEDAL」のスイッチ操作によってアクセルペダルのみでの加減速コントロールができる設定だった。新型はパドルシフトを追加(これにともない、ONE PEDALスイッチは廃止)。最大減速度は0.15Gで変わりはないものの、減速度を4段階で切り換えることが可能になり、コントロール性が高まっている。

「もっとかっこいい」については、内外装に手を入れて対応した。外装の変更はフロントまわりが中心。ハンマーヘッド形状のデイタイムランニングライトが左右でつながって真一文字となり、夜だけでなく昼も個性を主張するようになった。これにともない、従来はライティングユニットに組み込まれていたヘッドライトは別体となり、フロントバンパーコーナー部に独立して配置されている。

フロントまわりはハンマーヘッド顔に刷新。ヘッドライトはLEDデイタイムランニングランプの下部に備わる。

内装では、インストルメントパネルを水平基調の薄くシンプルな形状に変更。センターのディスプレイオーディオは12.3インチから14インチに拡大。スマホを2台並べて同時に充電できる「おくだけ充電」を標準装備とした。また、リヤ席用に設置しているUSBポートは60Wまで高出力化して使い勝手を向上。Zに標準装備のパノラマムーンルーフはセンターリインフォースをなくして、より開放的な空間を提供するようになった。

インストルメントパネルのデザインは水平基調に刷新。ディスプレイオーディオは14インチに拡大された。
センターコンソールのデザインも刷新され、スマホのワイヤレス充電が2基備わる。
パノラマムーンルーフは中央部に柱がなくなり、開放感がアップ。

トヨタはユーザーの声に耳を傾けてbZ4Xにまつわる困りごとを真摯に受け止め、要望に応えるべくしっかり改善。そのうえでBEVの範囲にとどまらずクルマとしての魅力を高めている。さらに、近年発売されるトヨタの新型車や商品改良版がことごとくそうなように、走りがいい。「一部改良」と控え目に表現しているが、フルモデルチェンジ並みの大変化だ。

車種bZ4X Z(FWD)
全長4690mm
全幅1860mm
全高1650mm
ホイールベース2850mm
室内長1935mm
室内幅1500mm
室内高1145mm
乗員人数5名
最小回転半径5.6m
最低地上高180mm
車両重量1880kg
駆動方式FWD
モーター種類/型式交流同期電動機/2XM
モーター定格出力64.0kW
モーター最高出力167kW(227PS)
モーター最大トルク268Nm(27.3kgm)
バッテリー種類リチウムイオン電池
バッテリー総電圧391.0V
バッテリー総電力量74.7kWh
交流電力量消費率(WLTCモード)113Wh/km
一充電走行距離(WLTCモード)746km
サスペンション前:ストラット式 後:ダブルウイッシュボーン式
タイヤサイズ235/60R18
価格550万円