連載

あのコンセプトカー、どうなった?

日本車の“ビンテージイヤー”1989年に現れた異端

TOYOTA 4500GT Experimental(PHOTO:TOYOTA)

1989年といえば、日本車の“ビンテージイヤー”として名高い。ユーノス・ロードスター(NA型)、スカイラインGT-R(R32型)、初代セルシオ、初代レガシィがデビューした年だ。1989年12月29日には、日経平均株価が史上最高値(当時)となる3万8915円87銭を記録している。

その年のフランクフルト・モーターショーで公開されたのが、トヨタ4500GT(TOYOTA 4500GT Experimental)だった。

ほかの何者にも似ていない独特のスタイリングは、欧州の評価基準から大きく外れており、当時はほとんど評価されなかった。しかし現代の目で眺めると、その挑戦的な造形は、むしろ新鮮で魅力的に映る。

全長×全幅×全高:4365mm×1830mm×1210mm ホイールベース:2490mm ホイールはクーリングシェイプマグネホイール

「トヨタ2000GT以来」を掲げた開発コンセプト

トヨタ2000GT(1967)

開発目標には、次のように記されている。
「トヨタ2000GT以来の本格派スポーツカーを、現在のより高度なテクノロジーを用いて開発したい」

そのために掲げられた5項目は、以下のとおりだ。

① クルマの基本性能を限りなく追求し、最高速度300km/h領域を実現できること。
② ドライバーの意思に忠実かつ敏速に応答し、ダイレクトな手応えを感じさせるクルマであること。すなわち、運転することが心から楽しめるクルマであること。
③ レーシングカーのロードゴーイングバージョンではなく、都市部での使用性も十分に考慮されていること。
④ 採用されるすべての技術が、総合的な走行性能に寄与する、あるいはエンスージアストの遊び心とバランスするものであること。
⑤ そのクルマを所有し、乗る人物像が明確にイメージできること。その人物は、熱き心を持ち、情報感度が高く、遊び心にあふれたエンスージアストであること。

当時のトヨタ、そして日本のサプライヤー各社の技術の結晶が、4500GTだった。

日本の技術力を結集した4500GTプロジェクト

技術協力企業は、
愛三工業/アイシン精機/旭硝子/アスモ/アラコ/小糸製作所/小島プレス工業/GKNジャパン/東海理化電機製作所/豊田合成/トヨペットサービスセンター/日本軽金属/日本電装/富士通テン
と、錚々たる顔ぶれが名を連ねる。

「次世代高性能スポーツカー」として完成したのが、後輪駆動の2+2シーター、TOYOTA 4500GT Experimentalである。Experimental=実験車という位置づけながら、90年代以降に市販車で花開く新技術が数多く盛り込まれていた。

TOYOTA 4500GT Experimental 主要諸元
全長×全幅×全高:4365mm×1830mm×1210mm
ホイールベース:2490mm
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン式
車両重量:1450kg
エンジン形式:4.5L V型8気筒 DOHC 40バルブ
最高出力:300ps/6600rpm
最大トルク:390Nm/4800rpm
トランスミッション:6速MT

V8×トランスアクスルが示した次世代スポーツの文法

ボディ後半に特徴がある4500GT。コーダトロンカスタイルが鮮烈。ただし、当時欧州では酷評された。

スポイラーなどの空力付加物を用いず、CD値0.28を実現したのが、コーダトロンカスタイルだ。当時の資料では「クォーダトロンカフォルム(砲弾型)」と記載されている。イタリア語のスペルは「coda tronca」で、「切り詰められた尾」という意味を持つ。

特徴的なボンネットフードはCFRPハニカム構造。オーディオにはスーパーライブサウンドシステムを採用し、ホイールはクーリングシェイプを施したマグネシウム合金製となっている。

エンジンは「LASRE α Experimental V8 FOURCAM 40」。1気筒あたり吸気3、排気2の5バルブ×8気筒で40バルブを構成し、ダイレクト駆動のDOHC方式を採用する。ベースとなったのは、初代セルシオに搭載された1UZ-FE型、Vバンク角90度の4.0L・V8 DOHC 32バルブエンジンだ。

前後重量配分の最適化を狙い、トランスミッションをリヤに配置するトランスアクスル方式を採用。V8エンジンをフロントに搭載し、トランスアクスル方式の後輪駆動とするスポーツカーの文法は、最近発表されたGR GTと共通する点もある。

4500GTはリヤアクティブステアも採用している。サスペンションは前後ダブルウィッシュボーン式で、ピエゾ式のTEMS(Toyota Electric Modulated Suspension)を搭載。電子制御によって減衰力を可変とする先進的な足まわりだ。

市販車へと受け継がれた4500GTのDNA

初代レクサスSC
TOYOTA 4500GT Experimental(PHOTO:TOYOTA)

ハイテクを満載し、挑戦的なスタイリングで包まれた4500GTは、その後、初代レクサスSC(日本名・三代目ソアラ)へと結実する。そして新興ブランドであったレクサスが北米市場で成功するための、大きな礎となった。

初代レクサスSC(三代目ソアラ)全長×全幅×全高:4860mm×1790mm×1350mm ホイールベース:2690mm

初代レクサスSC(三代目ソアラ)主要諸元
全長×全幅×全高:4860mm×1790mm×1350mm
ホイールベース:2690mm
サスペンション:前後ダブルウィッシュボーン式
車両重量:1590kg
エンジン形式:4.0L V型8気筒 DOHC 32バルブ
排気量:3968cc
最高出力:260ps/5400rpm
最大トルク:353Nm/4600rpm

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