固定式バッテリー搭載モデル「Honda UC3」登場

ホンダが、新たな電動二輪パーソナルコミューターとして「Honda UC3(ユーシースリー)」をタイおよびベトナム市場で2026年春から発売開始すると発表した。UC3は従来の交換式バッテリーではなく、ホンダとして初めて固定式のリチウムイオンリン酸(LFP)バッテリーを動力源に採用した電動スクーターで、排気量110cc相当の性能を持つモデルとして位置づけられている。

リチウムイオンリン酸バッテリーは耐久性と安全性に優れるとされ、都市での通勤・通学といった日常利用に適した性能を備えている。こうした電動スクーターの新たな方向性は、ホンダがこれまで展開してきた交換式「Honda Mobile Power Pack e:」とは異なる技術アプローチであり、新たな電動二輪事業の可能性を示している。

革新的な走行性能と日常利便性

UC3の心臓部にはホンダが独自開発したホイールサイドモーターが搭載され、最高出力は6.0kWに達する。このパワートレインにより、同モデルはWMTCモード1において一充電あたりの航続距離122kmを達成しており、都市部での移動に十分な性能を発揮する。また、走行時は3種類のモード(STANDARD、SPORT、ECON)からニーズに応じて選択できるほか、駐車や狭い空間での取り回しを支援するリバース機能も装備されている。

デザイン面ではフロントからリアまで流れるようなフォルムを採用し、水平基調のシグネチャーライトやブラック基調の車体にゴールドのアクセントを配した専用カラーリングを採用しているのも特徴だ。こうした外観はホンダ初の電動モーターサイクル「WN7」で使われた意匠を継承している。

充電インフラ整備と電動化戦略

UC3は「二輪CHAdeMO」方式という国際標準規格に準拠した充電方式を採用しており、1200Wおよび450Wの2種類の充電器に対応する。1200Wでは0〜100%充電に約4時間、20〜80%充電に約2時間を要し、450Wではそれぞれ約9時間、約5時間かかるとされる。

UC3の発売に合わせ、ホンダはタイおよびベトナムの主要都市で固定式バッテリー搭載車用の充電ステーション整備を進めており、バンコクやハノイ、ホーチミン、ダナンといった都市のHonda二輪販売店を中心に導入を進める計画だ。また同時に「Honda e:Swap BATTERY STATION」など交換式バッテリー向けインフラの整備も並行して進め、利用環境の多様化を図っている。

生産体制と将来の電動化展望

UC3の生産は2025年12月にタイホンダカンパニーにおいて開始され、タイとベトナム市場向けに供給されている。ベトナムでは2026年中に現地生産への移行も予定されており、急速に進む東南アジア二輪市場の電動化に適した体制が整えられつつある。またホンダは2050年までのカーボンニュートラル実現を目標に掲げ、内燃機関モデルの技術進化と並行して電動モデルのラインアップ拡充を戦略の中心に据えている。

毎年複数の電動モデルを投入する計画であり、UC3はその基盤となるモデルのひとつとして期待される。将来的にはバッテリーのリパーパスやリサイクルといった循環型バリューチェーンの構築にも取り組み、持続可能な社会への貢献を進めていく方針だ。