エキゾーストの精神をデスクへ

RPM といえば、往年の4気筒モデルから、モンキーといった4MINI系まで広く支持されるバイク用マフラー専門メーカーとして知られている。しかしその名称が示すのは単なる排気系パーツの供給者ではない。1973年創業以来、造形に対する探究心と鍛え抜かれた機械加工技術を積み重ねてきた企業であり、それは最新作「SP-Stand 10」にも色濃く表れている。

「SP-Stand 10」は単なるスマートフォンスタンドではない。それは RPM が長年にわたり追求してきたエキゾーストパイプの造形美を、スマートフォンホルダーという日常のプロダクトへと転化した作品だ。ステンレス鋼で形成された流麗なラインは、排気パイプが描く曲線美を完全に継承している。直線的な量産品とは一線を画す、一本筋の通った造形がデスク上で静かに語りかけてくる。

素材には SUS304 ステンレスを採用し、表面の輝きと質感は時間経過とともに深みを増す。表面処理や溶接部の表現に至るまで、金属としての品格が徹底されている。それは単なる道具という枠を超え、所有する歓びを伴うプロダクトとしての性格を有している。

RPM のマフラー製品で培われたパイプ径や角度、集合部へのアプローチ。これらの設計思想を素材/形状/比率といった要素としてデスク上の静物へと翻案した構造は、単なる引用や模倣ではなく、オリジナルの思想に基づく再構築である。その結果として、エキゾーストパイプのもつ動的イメージが、日常という静的環境へと見事に融合している。

材料と造形に宿る思想

素材感はこの製品の大きな魅力のひとつだ。マフラー同素材である SUS304 ステンレスは耐食性・耐久性に優れ、重厚感と美しさを両立する。磨き上げられた金属は光を受けて稜線を際立たせ、立体的な陰影が生み出す表情は触れずとも存在感を感じさせる。高精度旋盤で削り出された無垢の台座は、その質量と肌触りが手に取る者に確かな信頼感を与える。

台座は単なる支えではない。質量が下部に集中したバランス設計によって、スマートフォンを載せたときの安定性を最大限に引き出す設計となっている。どの方向から力が加わっても転倒しづらい安心感は、日常のさりげない操作の連続において実感されるだろう。ホルダー部分の剛性感と安定性は、単なる飾りではなく機能のための必然だ。

また、台座正面に配された RPM のブランドロゴは過度な自己主張を避けつつ存在感を確立し、製品全体の完成度を高めている。この製品は精密部品というよりも、小さな彫刻作品のような佇まいを持つ。鑑賞にも耐えるプロダクトとして、デスクトップの景色を豊かにする力がある。

視線と操作性を結ぶ設計

機能面でも RPM は妥協しない。スマートフォンを置く角度はデスクワーク時の視線移動を徹底的に研究し、ホルダー角度を最適化している。キーボードや資料と向き合うとき、視線を大きく動かすことなく画面情報を確認できる設計は意外にも重要だ。通知や時刻、着信の確認が視界に自然に入ることで作業の途切れを最小化し、効率を高める効果がある。

ホルダー部分の内側は端末のサイズや重量に対応する剛性を備え、安定して保持する。スマートフォンを置いた瞬間から「ああ、これでいい」と感じられる剛性感は、実際にデスクで使うことで実感される。形状美と機能性の両立は、RPM のプロダクト思想を体現する重要なポイントだ。

日常風景へ溶け込む存在感

「SP-Stand 10」は単なるスマートフォンスタンドではない。それはバイクという趣味、あるいは走ることへの情熱を日常の中心へと持ち込むための装置である。書斎でもオフィスでも、その存在が空間の空気感をわずかに変える力を持つ。静かな緊張感を湛えた造形美は、単なる風景の一部ではなく、視線と感性を誘引するアクセントになる。

バイクを降りた後の時間、ふと視線を落とした先にあるエキゾースト曲線は、これから走る日への高揚を思い出させると同時に、今この瞬間の集中力を静かに高める。それは単なるプロダクトという枠を超え、所有者の生活感や価値観を映し出す鏡のような役割を担う。

価格は 8万円(税別)であり、スマートフォンスタンドとしては高額に感じるかもしれない。しかしその価格は素材、加工、造形思想、そして所有体験を包含したものだと言える。バイクという文化を生活の中へ持ち込むための装飾として、あるいは日常の気分を高めるオブジェとして、この製品は多くの語りを誘発するだろう。

RPM「SP-Stand 10」は、デスク上の静物としての完成度が高いだけでなく、所有すること自体が喜びとなるプロダクトだ。機能性と造形美を同時に満たすその姿は、ライダーだけでなくデザインやモノづくりにこだわるすべての人に訴えかける何かを持っている。

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