連載

GENROQ BMW Mの軌跡

M6(E63 / 64)

ノーズにはザウバーBMWのV10

4999cc V型10気筒DOHC “S85B50A“ユニット
4999cc V型10気筒DOHC “S85B50A“ユニット

E24型「6シリーズ」の後を継ぎ、1990年にデビューしたE31型「8シリーズ」。早速640PSを発生する6064ccのV型12気筒DOHC“S70/1“ユニットを搭載し、ブリスターフェンダーで武装したM8が試作されたものの、環境問題、経済問題により1991年で計画が中止され、市販化には至らなかった。

その代わりとしてBMW M社では、381PSを発生する5576ccのV12“S70B56”ユニットを搭載し、強化サスペンション、4輪操舵などを備えた実質的な後継モデルとなる850CSiが製造されたが、ボディなどに“M”のバッジが取り付けられることはなかった。

以降、しばらくビッグクーペの系譜は途絶えてしまうのだが、2003年にE63型「6シリーズ」が登場すると、久々にBMW M社謹製のハイパフォーマンスクーペが開発されることとなった。

それが2005年に発表された「M6」である。ベースモデルである6シリーズがE60型「5シリーズ」のクーペ版であったように、M6もE60型「M5」をベースとしており、そのノーズにはザウバーBMW F1プログラムとリンクして新規開発された4999cc V型10気筒DOHC “S85B50A“ユニットが搭載された。

M5を凌ぐ0-100km/h加速

ブロックとシリンダーヘッドともにアルミ製としたS85B50Aユニットの単体重量は240kgで、各シリンダーに4つのバルブとダブルVANOS(可変バルブタイミング・システム)、さらにスロットルバルブを装着。制御システムにはシーメンス製のMS S65ユニットが採用され、M5と同じ最高出力507PS/7750rpm、最大トルク520Nm/6100rpmを発生した。

ギヤボックスは7速SMG-ⅢセミATのみの設定で、スチール製より50%軽量なカーボンファイバー製ルーフパネル、前後バンパーキャリア、アルミ製のボンネットフードとドアなどの採用により車重1710kgと大幅に軽量化されたボディの効果もあいまって、M5を凌ぐ0-100km/h加速4.6秒を記録している。

一方シャシーに関しては専用のセットアップは施されているものの、基本的に6シリーズと同一。しかしながら専用の19インチ軽合金ホイールが装着されるほか、タイヤもランフラットではなくフロント255/40ZR19、リヤ285/35ZR19のコンチネンタル製スポーツコンタクト2を標準装着。それにあわせてブレーキ径も大型化され、フロント374×36mm、リアに370×24mm径のドリルド・ベンチレーテッドディスクが奢られている。なおM5と同様、M6にもアクティブステアリングは未採用となる。

そのような中身の変化にたいしてボディの変更点は、フロントの大型インテーク、サイドスカート、リヤスポイラーの追加など控えめで、派手なオーバーフェンダーやエアロパーツは装着されていない。

クーぺから1年後にカブリオレも

E64型M6カブリオレ
E64型M6カブリオレ

そしてクーぺの登場から1年後に、M6カブリオレ(E64型)を追加。2009年にはローダウンサスペンション、ワイドリムホイール、ピレリPゼロコルサなどを装備したコンペティションパッケージを用意。加えて専用色のフローズン・グレーメタリックにボディを彩ったコンペティション・スペシャルエディションも100台限定で発売されている。

しかしながらM5と同様、虎の子のV10ユニットがロッドベアリング、ダブルVANOS、スロットル・アクチュエーターなどのトラブルに悩まされることとなり、結局2011年までにクーぺが9087台、カブリオレが5065台生産されただけにとどまった。なおその中には、北米仕様にのみ用意された、6速MT仕様のクーぺ(323台)、カブリオレ(378台)も含まれている。

E60型M5

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