バイクに乗るときは車検証の携行は必須

車検の必要な250cc超のバイクでは、運転する際に車検証を携帯することが法律で義務づけられている。これは、道路運送車両法第66条に以下のような規定があるからだ。

「自動車は、自動車検査証を備え付け、かつ、国土交通省令で定めるところにより検査標章を表示しなければ、運行の用に供してはならない」

そして、もしこの規定に違反し、不携帯で検挙されると50万円以下の罰金刑に科せられる場合がある。

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車検証は、運転する際に携帯することが法律で義務づけられている

なお、車検のない125cc超〜250cc以下の軽二輪には、車検証の代わりといえる「軽自動車届出済証」がある。これについても、道路運送車両法施行規則の第63条の3により、バイクに積載するか携帯することが義務づけられている。

また、排気量125cc以下の原付バイク(原動機付自転車)の場合は「標識交付証明書」という書類がある。居住する市区町村からナンバープレートを交付される際に、一緒に発行される車検証のようなものだが、こちらは税務上の書類なので、法律で携帯することは義務づけされていない。

ちなみに、バイクやクルマを運転する場合に、車検証と一緒に携帯する義務がある書類には自賠責保険の証明書(以下、自賠責証明書)もある。こちらは、排気量に関係なく自動車損害賠償保障法第8条で規定により、排気量に関係なく携帯義務がある。もし不携帯で検挙された場合は30万円以下の罰金刑に処せられる場合もあるという。

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自賠責証明書も運転中に携帯していないと違反

車検証のコピーを携帯するのはNG?

このように、携帯の義務のある車検証や自賠責保険証書だが、これらは車両の名義変更なども可能なほど効力の強い書類。盗難などを考えると「バイクに入れておくのは不安」と考える人も多いだろう。

そのため、前述の通り、原本は自宅などに保管し、コピーを携帯する人もいるようだが、法律では、本来、これら書類は原本を所持することを想定して規定しているようで、コピーの場合は「違反扱い」になるという解釈が一般的だ。

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車検証は原本でなく、コピーを携帯するのは違反という解釈が一般的

ただし、現実問題としては、それほど厳密でもなさそうだ。たとえば、交通違反で捕まった場合などに、警察官に車検証や自賠責証明書の提示を求められるが、こうした場合、コピーを提示しても大丈夫なケースもあるようだ。おそらく、近年は、バイクの盗難も多いことで、その防衛策としてのコピー所持を警察官もある程度の理解を示しているのだろう。だが、本来は違反なので原本携帯が安心であることは間違いない。

ちなみに、もし、原本を携行せずに捕まった場合、交通違反のように違反点数や反則金は課せられず、前述の通り、車検証では50万円以下の罰金刑、自賠責証明書の場合は30万円以下の罰金刑に処せられる場合がある。

なお、自賠責証明書に関しては、2023年6月1日から一定の条件を満たせば、撮影した画像データをスマートフォン内などに保持し見せることができれば、原本の携帯と同様にみなされるようになった。

これは、主に電動キックボードへの書類積載が困難なための対策のようで、車両に「210mm×148mm以上の密閉できる収納がない場合に限られる」といった条件がある。バイクの場合は、小さくても書類入れが設けられている車種も多く、条件に合致しない場合も考えられる。あくまで、電動キックボードや電動自転車向けと考えた方がいいかもしれない。

自賠責証明書の画像データをスマートフォンに入れて携帯することも、一定の条件を満たせば可能。だが、主に電動キックボードが対象のようだ

ICタグ付き車検証は携帯の方法に注意

最近の車検証は、バイクでもICタグ付きになっている。そのため、バイクの運転中に車検証の原本を携帯する場合には、携帯方法にも注意が必要だ。

ICタグ付き車検証は、ナンバーや車体番号、基本的な車体の寸法や重量など、車両そのものの情報のみを記載し、それ以外の情報は、車検証の裏面に貼られたICタグに内蔵されたICチップの中に電子化されて入っている。紙部分の記載内容が簡略化されていることで、従来のA4サイズからA6サイズ相当とコンパクト化を実現。バイクの運転中に携帯する際も、以前よりシート下などに収納しやすくなったといえる。

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ICタグ付き車検証は、従来のA4サイズからA6サイズ相当とコンパクトになった

ただ、それでも、スポーツバイクなど、収納スペースが小さいモデルの場合は、車検証を折り曲げないと入らないことも多い。実際に、筆者の愛車CBR650Rも、リヤシート下の収納スペースに入れようとすると、A6相当サイズで小さくなった電子車検証でも折り曲げないと入らない。

そして、その際に電子車検証のICタグが貼ってある部分を折り曲げてしまうと、破損してしまう恐れがある。もし、ICタグが破損すると、詳細情報を読み込めなくなるため、再交付をしなければならなくなるので注意が必要だ。

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筆者の愛車CBR650Rも、リヤシート下の収納スペースに入れようとすると、A6相当サイズで小さくなった電子車検証でも折り曲げないと入らない

また、ICタグやICチップは高温に弱い。例えば、夏場にツーリングへ行き、出先で車両から長時間離れる時などに、シート下の収納スペースへ入れっぱなしにするのはやや不安だ。

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夏場のツーリングで、出先で車両から長時間離れる時などに、シート下の収納スペースへICタグ付き電子車検証を入れっぱなしにするのもやや不安

さらに、シート下収納スペース内へ入れていて、大雨などでシート下まで浸水することがあることも不安材料。ちろん、ファスナー付きのビニール製バックなど、防水性がある入れ物に入れておけば問題ないかもしれない。だが、きちんとファスナーが閉まっていないとか、長年同じバッグを使っているとそれ自体が劣化し、内部に水が入りやすくなるケースも考えられる。

ICチップ自体は水濡れには強いとされているが、心配性の筆者は、電子車検証をシート下収納スペースに入れず、バイクに乗る際は、バッグやナップサックなどに入れることにしている。この点は、個人の判断だが、保管や携帯する方法には十分気をつける方がいいことは間違いない。

ともあれ、車検証などは原本の携帯が必須だが、前述の通り、愛車にとって重要な書類だけに、破損や紛失などには注意も必要。携帯する際には、かなり細心の注意を払った方がいいだろう。