Stark Varg・MX……1,958,000円
Stark Varg・EX……2,365,000円

日本で発売されている電動二輪車の多くは利便性をうたった小型モデルが多く、電動のパフォーマンスを体感できるものはあまりなかった。そんな中で上陸したStark Vargはエンジン車を超えるパフォーマンスを発揮するモデルである。

スペインの電動二輪車専門メーカー

今回紹介するStark Vargは、スペインのStark Future社が製造する電動モトクロッサーである。Stark Futureはスペインの電動オフロードバイクメーカー。CO2とプラスチック汚染を削減することにより、持続可能なモーターサイクル産業をリードすることを目標に掲げている。

製造しているのは電動のStark Varg MX(競技専用)とStark Varg EX(公道走行モデル)の2機種のみ。話題になったのは電動で80馬力というパワーを発揮する点である。
このマシンがデビューしたときから着目していたのが横浜にあるアルタイヤモーターの大崎氏だった。日本国内では最初の代理店となってリリースを開始。今回紹介するモデルはStark Varg MX。アルタイヤによってホイールを前後17インチとしたスーパーモタード仕様だ。

スーパーモタード仕様にする場合、ブレーキやサスペンションをオンロード走行に合わせて変更することが多いのだが、このマシンではオフロードの走行が多いこともあって足回りには手を入れていない。

オンロードサーキットを走行するのでタイヤはモタードスリック。オーナーはオフロードとロードコースでホイールを付け替えて楽しんでいるのだと言う。

車体を細かく見ていくとサスペンションや車体など非常にシッカリとした作りになっていて質感は高い。

マップは5つまで登録しておくことができ、出力特性や回生ブレーキの利きなどを自由に設定することができる。

クラッチ操作の必要がないのでリアブレーキは左のレバーで操作する。オプションで右のフットペダルにすることも可能だ。

電動ならではの装備としてはリバースモードとウォーキングモードがある。ハードなオフロード走行ではリバースモードは大活躍。滑りやすい路面でウォーキングモードにすれば、タイヤのグリップを失うことなく走ることもできる。車両をトランスポーターに搭載するときもウォーキングモードを使うと簡単に積み込むことができる。

驚愕のパフォーマンス

電源スイッチを入れてスロットルを開けると微かなモーター音とともにマシンが動き出した。最初は慣熟のために20馬力の設定でコースを走り出したのだが、この時点で十分に速い。250クラスのロードスポーツをストレートでバスできるくらいのパワーがある。

そろそろマシンに慣れてきたのでパワーを40馬力の設定に上げてみようと全開加速中にボタンを押したのだが、これが大間違い。モードの変更はスロットルオフの状態で行わなければいけないことを忘れていたのである。ターボ車やピーキーな2ストマシンなどいろいろなバイクに乗ってきたことはあるが、一瞬にしてパワーが倍になるというのはそんなものとはまったく別次元で上体がのけぞって腕が伸び切ってしまった。これが20馬力から40馬力だったからなんとかなったが、さらにパワーを上げたモードだったら一瞬にしてバク転してことだろう。
この車体で40馬力は非常に楽しく走れるようになった。これで十分満足できるレベルなのだが、Stark Varg MXはまだ半分しか実力を出していない。

そして次はいよいよマックスの80馬力。今度はスロットルをオフにした状態でボタンを押しスロットルを開けると後輪で938Nmという驚愕のトルクが炸裂。これまで体感したことがないようなパワーフィーリングでマシンが加速した。最終コーナーから1コーナーまでの直線ではフロントタイヤが浮きっぱなし。カートコースくらいのスピードレンジでは、どんな場所でもスロットルを大きく開けたらすぐにフロントが離陸してしまう。「それじゃあパワーは使い切れないだろう」と思われるかもしれないが、それがエンジン車と違うところ。

全域がパワーバンドなので、どんなときでもスロットルを開けただけ自由自在にパワーを引き出すことができるようになるのが80馬力モードで走っていて最も感動したところ。しかもミッションがなくてシームレスに加速するからコーナーの立ち上がり加速がべらぼうに速い。80馬力モードでタイトなコースを走るのは痛快そのものだ。
減速時もエンジン車と違い、回転数でエンブレの利き方が変化するようなこともない。自分の乗り方に合った回生ブレーキの利きにセットすることができれば進入もイージーになる。

今回の走行では回生ブレーキを強めに利かせていたのでコーナーではリアに減速方向のトラクションがかかり、若干オーバースピード気味で進入してもスロットルをオフにしておけば自然な感じで減速から旋回につなげていくことができた。さすがにこのパワーだとスロットルを開けるタイミングでは慎重な操作が必要だが、オーナーはシチュエーションによってリアブレーキを使いながらスロットルを開けるなど工夫しているということだった。

ハンドリングに癖はなく乗りやすい。試乗した富士スピードウエイカートコースでは、モタードスリックを入っているにもかかわらず車体の剛性不足などは感じなかった。ハイスピードなコースで荷重が強くかかった場合は未知数だが筑波サーキットコース1000を走行しても問題は特になかったということなので、車体自体のポテンシャルも高そうである。

サスペンションセッティングがオフロードのままだったこともあり、姿勢変化が大きく、少しハードにコーナーへ進入しようとするとリアタイヤの荷重が減少してスネーキングが発生してしまった。これはオンロード向けのセットアップをすることで対応できるだろうし、左手のブレーキ操作と回生ブレーキの利き方に慣れたら進入でのスライドにつなげていけるのかもしれない。

Stark Varg MXは半日試乗したのだが、エンジン車を超えるパワーと電動の走行フィーリングには感動のしっぱなし。ここ最近試乗したバイクの中でも飛び抜けて面白いバイクだった。

維持とメンテナンスのアドバンテージ

バッテリーの寿命に関しては450ccモトクロッサーの10倍を目指して開発されている。バッテリーは1000回の充放電で約80%まで低下するが、メーカーによればバッテリー使用の目安は500時間程度だという。バッテリー単体は40万円程度。エンジン車を500時間走らせたらガソリン代だけでも20万円から30万円くらいにはなるし(排気量や走り方、コースによって大きく変動するが)、競技車両では50時間から100時間程度でピストンなどの交換が推奨されているモデルもある。オイルやフィルター、プラグなども定期的に交換することを考えたらStark Vargのメンテナンスコストが低くなることは間違いないだろう。しかもメンテナンスする部分が少ないので、時間がないライダーたちにとても喜ばれているのだと大崎氏は言う。

手軽に乗れて維持整備の手間がかからず、乗ったらエンジン車とは違う楽しさがあるStark Varg。こんな電動バイクが増えてきたら、二輪の世界もずいぶん変わってきそうな感じを受けたのである。

ALTAIR MOTOR
住所   〒226-0026 神奈川県横浜市緑区長津田町5433-1
電話   045-465-8071
営業時間 11:00~17:00
定休日  日曜・月曜・祝祭日・イベント開催日
WEB    ALTAIR MOTOR

富士スピードウエイカートコース
住所   〒410-1307 静岡県駿東郡小山町中日向694
富士スピードウェイ内 カートコース
電話   0550-78-2255
営業時間 10:00~17:00
定休日  日曜・月曜・祝祭日・イベント開催日
WEB    富士スピードウエイカートコース

 

ポジション&足つき(身長178cm 体重76kg)

ポジションは極一般的なオフロードモデル。ただ、エンジンサイドのラジエターかないので→ポジションは極一般的なオフロードモデル。ただ、エンジンサイドのラジエターがないので

競技用のオフロードモデルなのでサスペンションは長いが、前後ホイールが17インチ化されているのでモタード仕様であれば足つき性はそれほど悪くない。両足をつくとカカトが若干浮く程度。

ディテール解説

キャリパーはブレンボの2ピストン。モタード仕様にする場合はホイールと大径ディスクローターを装着。キャリパーをサポートでオフセットさせている。
バッテリーは6kwh。トレールライディングでは6時間程度の走行が可能でモトクロスのレースもフルに走ることができる。
モーターの後ろから出ている2本の黒いホースは冷却水ホース。リアフェンダー下にラジエターがセットされている。
オフロード走行を考えたシートは体重移動がやりやすい。
スーパーモタード用の17インチワイドリムにモタードスリックを装着。
水冷のモーターは360Vでカーボン製のハウジングに収められている。モーター単体の重量は9kgしかない。
リアキャリパーは1ピストン。ローターはφ220mm。
リアショックはKYB。プリロード、ハイ/ローのコンプレッションダンピング、ダンピングアジャスターを調整することができる。ストロークは310mm。
赤いボタンがメイン電源。隣のシルバーのボタンでモードの切り替えを行う

 

 

メーターはスマートホンを使用する。表示はシンプルだ。
スマートホンを使用して細かな設定が可能。出力は10馬力から80馬力まで。回生ブレーキの利き方も0から100%まで独立して設定することができる。
STARK者のアプリを使用することでセットアップやマシンの管理が可能だ。
凝った作りのトップブリッジ。作り込みに関しては一切の妥協が廃されている。
フロントのマスターシリンダーはブレンボ。オフロード用のマスターとキャリパーを使用しているが、カートコースで楽しむレベルであればまったく問題ない。
バッテリーチャージャーの差込口はモーターの後ろにある。満充電までの時間は2時間以下。
メンテナンススタンドを兼ねたバッテリーチャージャー。3.3kwで16Aの出力。

Specification

Power:80 HP
Weight :118 kg
Torque:978 nm
Battery:7.2 kWh
Charging time:  2 Hours
Warranty: 2 Years