ドバイ警察「スーパーカー部隊」の超高級パトカーコレクション

ドバイ警察が所有する高級車のラインナップは、世界有数の自動車コレクターも羨むほどの豪華さだ。2013年から導入が始まったドバイ警察のスーパーカー部隊には、以下のような車種が含まれている。
- ブガッティ・ヴェイロン(新車価格:約2億円以上)
- ランボルギーニ・アヴェンタドール(新車価格:約4,000万円以上)
- フェラーリ FF(新車価格:約3,500万円以上)
- アストンマーティン One-77(新車価格:約1億5,000万円以上、世界限定77台)
- マクラーレン MP4-12C(新車価格:約2,700万円以上)
- ベントレー・コンチネンタル GT(新車価格:約2,800万円以上)
- メルセデスベンツ SLS AMG(新車価格:約3,000万円以上)
- BMW i8(新車価格:約1,900万円以上)
これらの車両はいずれもドバイ警察の白と緑のカラーリングで塗装され、警察のエンブレムと警光灯を装備している。その多くが最高速度300km/hを超え、加速性能も一般的なパトロールカーとは比較にならない性能を持つ。
しかし、これらの超高級車が実際に犯罪者の追跡や日常のパトロールに使われることはほとんどない。主な用途は、ドバイの高級観光エリアでの展示や特別なイベント、パレードでの使用だ。
特にジュメイラビーチやブルジュ・ハリファ(世界一高いビル)周辺、ドバイ・モールなどの観光スポットでは、これらの高級パトカーが観光客の人気の撮影スポットとなっている。警察官は観光客からの写真撮影依頼に快く応じ、子どもたちに車の説明をすることもあるという。
超高級パトカー導入の裏にあるドバイ警察の戦略
なぜドバイ警察はこれほど高価なパトカーを導入しているのか。その理由はいくつかある。
まず第一に、観光客へのアピールだ。ドバイは観光立国として、「世界一豪華」「世界一高級」というイメージを大切にしている。超高級パトカーは、そのブランディング戦略の一環といえる。

第二に、警察と市民の距離を縮める役割もある。ドバイ警察によれば、これらのスーパーカーは「動く広告塔」であり、特に若者たちとのコミュニケーションツールとして機能しているという。観光客や地元市民がパトカーの前で写真を撮ることで、警察に対する親しみやすいイメージを構築している。
第三に、犯罪抑止効果も期待されている。ドバイには世界中から高級車オーナーが集まるが、警察がそれを上回る性能の車を所有していることを示すことで、交通違反や危険運転を思いとどまらせる心理的効果もあるという。
世界の文化や道路事情に合わせたパトカー事情
ドバイほど極端ではないものの、世界各国でも独自のパトカー文化がある。
イタリアでは、自国の誇るランボルギーニ・ウラカンが高速道路警察に配備されており、主に臓器移植などの緊急輸送のために活用されている。ドイツのアウトバーンでは、アウディやBMWの高性能モデルが警察車両として使用されることもある。
一方、実用性を重視する国も多い。
英国では軽量で機動性の高いBMW 3シリーズやプジョー308が主流だ。日本は、トヨタ クラウンやマークXといった国産の高級セダンがパトカーとして使用されている。アメリカではフォード インターセプターやダッジ チャージャーといった力強いセダンが好まれ、高い耐久性と追跡性能を兼ね備えている。
いずれの国も、その国の文化や道路事情、警察活動の性質に合わせて最適なパトカーを選んでいるのだ。ドバイの超高級パトカーは、その極端な例と言えるだろう。
