連載

GENROQ ランボルギーニヒストリー

SIAN FKP 37

FKPはピエヒ会長のイニシャルから

2019年のIAA(フランクフルト・ショー)で正式に発表された「シアンFKP 37」は、限定車ではあるもののランボルギーニにとって初のオンロード走行が可能なハイブリッド車となったモデルだ。

当初ランボルギーニは、その車名をシンプルに「シアン」としていたが、IAAを近々に控える中で、さらに正確にはそれに先立ちオンラインでそれが発表された9月3日の直前、8月25日にフォルクスワーゲングループのフェルディナンド・カール・ピエヒ会長が亡くなったことを受けて、氏のイニシャルであるFKPと、出生年である1937年を意味する37の数字からなる「FKP37」を加えた、シアンFKP 37が改めてオフィシャルなネーミングとされた経緯がある。

アヴェンタドールとほぼ共通のセンターモノコックを採用

シアンFKP 37のエクステリアデザインは、それまでの「アヴェンタドール」や「テルツォ ミッレニオ」と同様に、いかにも現代のランボルギーニ車らしい、シャープなラインで構成された戦闘的なものだが、これはランボルギーニ・チェントロ・スティーレ(デザイン・センター)のチーフスタイリスト、ミティア・ボルケルトとそのチームによる作である。

ちなみにシアンという車名は、イタリアのボロネーゼ地方の方言で稲妻の放つ閃光を意味するものだというが、そのエクステリアのフィニッシュはまさに稲妻、そして高電圧の電気を想像させる姿に仕上がっている。

アヴェンタドールとほぼ共通のセンターモノコックをコアに設計されたシアンFKP 37がミッドに搭載するエンジンは、6.5リッターV型12気筒DOHC自然吸気で、これはアヴェンタドールSVJのそれをベースに、吸排気システムやECUなどに改良を加えたもの。最高出力は785PSと発表されており、これに34PSを発揮するエレクトリックモーターを、7速ISR(シングルクラッチ式セミAT)の中に搭載。トータルの最高出力は818PSを発揮した。

マサチューセッツ工科大学と共同研究

イタリアのボロネーゼ地方の方言で稲妻の放つ閃光を意味する「シアン」。まさに電動車にふさわしい名前である。

シアンFKP 37のメカニズムでもうひとつ大きな見どころといえるのは、やはりギアボックスに内蔵されるバッテリーで、これはアメリカのマサチューセッツ工科大学との共同研究による実験車、テルツォ ミッレニオで初採用された電気二重層コンデンサー、すなわちスーパーキャパシタである。重量面でのメリットはもちろんのこと、蓄電能力や電気の放電、再充電能力など、一般のリチウムイオンバッテリーをはるかに超える性能を誇るスーパーキャパシタは、将来ランボルギーニのPHEV、あるいはBEVの性能を大きく左右する可能性も高い。ちなみにここまで紹介したシアンFKP 37の0-100km/h加速性能は2.8秒。最高速はリミッター制御で355km/hに制限される。

翌2020年、ランボルギーニはシアンのオープン・バージョン、「シアン・ロードスター」を発表。メカニズムはシアンFKP 37に共通だが、生産台数はFKP 37が63台であったのに対して、ロードスターは19台とかなり限られた数となっていた。一連のシアンシリーズは、もちろん現在では貴重なコレクターズアイテムとして、オークションなどでごく稀にその姿を見ることがある。

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