後席スライドドアで人気定着 少人数で街乗り重視の味付け

現在の軽乗用車はすっかりスライドドア付きスーパーハイトワゴンが主流で、昨年の販売台数ランキングでもN-BOX、スペーシア、タント、ルークスの4機種が、上位6位までにひしめく。ただ、その狭間で気を吐く(2024年は4位と5位)のが、SUVのハスラーとワゴンRだ。

エクステリア

2024年12月の一部変更に伴い、フロントバンパーとグリルを丸みのあるデザインに変更。ボディ色も写真のトープグレージュメタリックなどの新色が追加され、かわいらしくて親しみやすい雰囲気が増した。最小回転半径は4.4m。

ワゴンRと言えば、1990年代から2010年代前半に、四世代/15年間にわたって軽ベストセラーに君臨したスイングドア形式のハイトワゴンである。ただ、現在はその伝統スタイルのワゴンRのほかに、リヤがスライドドアとなるワゴンRスマイルがある。ワゴンRが今なお販売上位を維持できるのは、後者のスマイルが台数を稼いでいるからだ。

乗降性

そんなスマイルはワゴンRを名乗りつつも、スライドドア付きボディ構造はスペーシアに近い。一方、1695㎜という全高はスペーシアより90㎜低い。このようにスーパーハイトワゴンほど背は高くないがスライドドアをもつ「スライドハイトワゴン」とも言うべきジャンルを開拓したのは、16年発売のダイハツ・ムーヴキャンバスで、スマイルは後発のキャンバス対抗商品である。

インストルメントパネル

ハイブリッド車の内色は新たにリフレクショングレー(写真)とモスブルーを採用。ドアアームレストをインパネ同色として上質感を高めた。メーターはシンプルな単眼タイプ。

車名どおりの笑顔風デザインが目を惹くスマイルだが、スパッとチョップトップしたようなスモールウインドウのプロポーションこそ最大の特徴だろう。これはスマイルのパッケージレイアウトがスペーシアと同等の前席ヒップポイントのまま、全高だけを90㎜カットしているからだ。スーパーハイトワゴンの見上げるように高い天井は、停車時の車内移動や開放感には効果的だが、空力や重心高では無駄でもある。そうしたスーパーハイトの弱点を解消したのも、スマイルを含むスライドハイトワゴンのメリットである。

居住性

一方で、後席は良くも悪くもオーソドックスで、素のワゴンRに酷似したスライド付きダブルフォールディング可倒となる。ヒップポイントは低めで、広さに不足はないが、見晴らし最高とまでは言えない。後席に家族を乗せて遠出したいなら、やはりスーパーハイトワゴンの方が便利で快適。スマイルはあくまで1〜2名での日常的な街乗りをメインに想定したクルマと考えるべきだ。スマイルはラインナップもコンセプトを反映して、エンジンは自然吸気のみ。最も安価な「G」は純エンジンで、それより上級の「ハイブリッドS」と「ハイブリッドX」は、その名のとおりのマイルドハイブリッドとなる。シャシーも結構明確な街乗り特化型の味付けで、低速ではすこぶる快適な反面、高速ではあまりスピードを出す気にならない。

うれしい装備

ハイブリッド車にはパワースライドドア予約ロック機能を装備。ドアが閉まると同時に施錠も完了するため、ドアが閉まるのを待つ必要がない。
月間販売台数       6217台 ワゴンR/ワゴンRカスタムZ/ワゴンRスティングレーを含む(24年7月~12月平均値)
現行型発表    21年8月(一部仕様変更 24年12月)
WLTCモード燃費  25.1 ㎞/ℓ※「ハイブリッド」系のFF車

ラゲッジルーム

ただ、昨年末の一部仕様変更で、自慢の笑顔フェイスがより柔和になったほか、最新の「デュアルセンサーブレーキサポートⅡ」や電動パーキングブレーキが標準装備となり、マイルドハイブリッド車には全車速対応ACCや車線維持支援機能も付くから、今後は高速ロングドライブも、スマイルの得意科目と評するべきかもしれない。マイルドハイブリッドのFF車で25.1㎞/ℓというWLTCモード燃費もクラストップで、ますます遠出したくなる。それならなおのこと、ハンドリングはもう少し高速走行にも配慮した味わいになってくれると、もっとうれしい。

※本稿は、モーターファン別冊 ニューモデル速報 統括シリーズ Vol.166「2025年 最新軽自動車のすべて」の再構成です。

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